【司法書士監修】後見制度支援信託を使って親の後見人に家族がなるための4ステップ

「親が認知症になり、相続手続きのために後見人が必要だけど、見知らぬ専門家ではなく自分が後見人になりたい」という相談をよくお受けします。
認知症の親の財産が多いと、家族は後見人に選ばれにくいのが実情です。しかし、「後見制度支援信託」という仕組みを使えば、最終的に家族だけが後見人になれる可能性は高いです。
このページでは、創業20年以上、地域随一の相続専門の司法書士事務所であるこん・さいとう司法書士事務所が、後見人にかかるコストを抑えるための方法として「後見制度支援信託の仕組みを使った家族後見のやり方」について分かりやすく説明します。
このページが、後見人の手続きや相続でお困りの方のお役に立てれば、とても嬉しいです。
なぜ財産が多いと「家族」は後見人に選ばれないのか?
後見人を誰にするかの最終決定権限を持つのは、家庭裁判所です。
家庭裁判所は、認知症の方が有する財産が多ければ多いほど、家族・親族を後見人に選ばない傾向があります。
裁判所が家族を後見人に選ばない理由
- 家族を後見人にすることにより敵対する家族との間で財産トラブルが生じる恐れがあるため
- 家族による財産の使い込みを防止する必要があるため
などが主な理由です。
家族が後見人に選ばれない場合は、専門職(司法書士や弁護士)を後見人に選ぶのが通常の扱いです。
「財産が多い」とはいくら以上なのか|基準の明示
東京家庭裁判所においては、現金・有価証券などの流動資産が500万円以上あると「財産が多い」と判断され、家族は後見人に選ばれにくくなっています。
不動産はこの中に含まれませんが、もし流動資産が500万円以下であったとしても、認知症の方がオーナーとして不動産を賃貸していたりすると、家族は後見人に選ばれにくくなるかもしれません。
つまり「500万円はあくまで一つの目安であり、個々の事情によって個別に判断される」ということです。
また、東京以外の地域ではまた別の金額の基準がありますので、一概には言えません。
家族が後見人になるための救世主「後見制度支援信託」とは
現在、家族が後見人に選任されるための手法としてスタンダードなやり方です。どんな仕組みなのでしょうか。
「後見制度支援信託」の仕組みの簡単な説明
後見制度支援信託とは、認知症の方の口座に日常的に必要なお金(100~200万程度)だけ残しておいて、残りはすべて信託銀行に預けてしまう方法です。
信託と聞くと「投資商品か何かのことか」と思ってしまいます。
しかし、そうではなく、単に現預金を信託銀行等に預けるというだけのことです。しかし、いったん預けると裁判所の許可がない限り勝手に引き出すことはできなくなります。
最大のメリットとは?
財産を信託する手続きは複雑なので、専門職にやってもらうことになります。その後、専門職は辞任します。
「信託手続き完了後、専門職が後見人を辞任すれば(辞任するという前提で裁判所は選任します)、最終的に家族だけが後見人になれる(=将来の専門職報酬をカットできる)」のが最大のメリットです。
後見制度支援信託のメリット・デメリット|比較表
| メリット |
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| デメリット |
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後見制度支援信託は、信託銀行に預けるまでの手続きが複雑で手間なので、専門職後見人が行います。
信託した後は、専門職後見人は「辞任の許可」を裁判所に申請し、認められたら、結果として後見人は家族だけになるという方法です。
後見制度支援信託で家族が後見人になるまでの4ステップ
それでは具体的な手順や流れを説明します。
1.「専門職と家族」を「後見人候補者」として後見人の申立てを行う
まずは家庭裁判所へ、後見人の申し立て手続きを行うために書類を提出します。
その際に、申立書には「後見人候補者」として家族と専門職を併記します。
専門職については、すでに了解を得ている専門職の名前等を書きます。
後見制度支援信託を希望する場合には、申立書にその旨を記載する必要があり、通常は後見人になってほしい専門職に申立書の作成を依頼することになります。
2.専門職が信託手続きをする
希望通りに家族と専門職が後見人に選ばれた後は、専門職が信託銀行等へ預け入れの手続きを行います。
3.専門職が辞任する
信託手続きが完了後、専門職は家庭裁判所に「辞任の許可」を申し立てます。
4.家族が管理を引き継ぎます
専門職が辞任すると、家族単独の後見人となります。以後は家族が信託口座を含めて、すべての財産管理を引き継いでいきます。
解決事例|認知症の母の後見人に長女がなった実際のケース
当事務所が毎週土曜日に行っている無料相談での話でした。
相談内容は、父が亡くなったので遺産分割をしたいという至ってシンプルなものです。
家族構成は高齢の母と、長女のみです。いわゆる一人っ子なので、経験上、遺産分割で揉めることもないため安心して相続手続きを進められる事例だと思っていました。
ところが、もう少しよく話を伺っていくと、高齢の母は認知症で現在特別養護老人ホームに入居中とのこと。
認知症であるという医師からの正確な診断を受けたわけではないと言いますが、日常の様子を聞き取ったところから察するに、認知症の疑いは高いです。
そうなりますと、認知症の母に成年後見人を付けるという話になり、成年後見人と長女で遺産分割協議を行うという流れになります。
長女は自らが成年後見人となることを希望していました。
母のもともとの財産は多くないのですが、遺産分割の結果相続することになる財産が高額のため、おそらく親族が成年後見人と認められる可能性は少ないと伝え、再度詳細な資料を持参してもらうことを約束してその日の相談を終えました。
「母の後見人はどうしても自分がやりたい」希望は通るのか?
別の日、遺産に関する資料、母の財産の資料を持参して長女が再び来所しました。
最初の相談では、大まかのアドバイスに止まりましたが、持参した資料を精査するとやはり親族が後見人となるのは難しそうな気がします。流動資産が1000万円以上です。
長女は「専門家が後見人になった場合、報酬の支払いが必要と聞きます。母の家系は長生きで、これまでも大病は有りませんし、今も意思能力の問題はあるもののそれ以外は元気です。仮に100歳まで長生きするとこのお金だけでは報酬を支払い続けることは出来ません」と言います。
どうすればよいのでしょうか?
家族が後見人となるための選択肢とは
今回のケースでは、認知症になって特養に入所した母の財産管理・身上監護はすべて長女が行っていました。
通帳を確認したところ、細かに鉛筆書きで使途が記されていました。長女によるものです。
かなり几帳面で丁寧な性格がうかがわれます。さらに私とほぼ同年代で、若く、明朗な様子です。それならばということで、次の選択肢を提示しました(そもそも高齢者は後見人に選ばれにくい)。
1、家族を後見人とし、後見監督人(専門職)を付ける
どうしても長女自身が後見人になりたいという意思は固いので、まずこの方法を提案しました。
面接期日(家庭裁判所へ後見人の選任申立ての書類を提出した後に裁判所から呼び出される日)の場で、「どうしても自分が後見人になりたいので専門職の後見監督人を付けてください」と申述する方法。
これで上手くいくという保証は全くありませんが、裁判所側も申立人の申述を無視はできないと思われますので、方法の一つとして提案しました。
長女のみを後見人にするという申立ては、経験上まず認められない判断したので、「専門職後見監督人付きで」を条件に申し立てるというやり方です。
専門職後見監督人に支払う報酬額は、専門職後見人に支払う報酬額よりも低額であることが一般的なので、長女にはこの点は妥協してもらうしかありません。
2、家族を後見人とし、それを裁判所が認めない時は司法書士今を後見人にする
2番目の方法として、予備的な選任申立ての方法(「もし●がダメなら▲にして」)を提案しました。
もちろん専門職後見人に対する報酬費用がかかってしまいますが、裁判所に勝手に選ばれた人よりは良いということで、とりあえずの手段として納得したようでした(当職を信頼していただけたのでしょうか?)。
3、家族と司法書士今の2名を成年後見人とし、後見制度支援信託の方法をとる
3番目の方法がこのページの上の方でも説明した「後見制度支援信託」を使った方法です。
結局、どの方法で申し立てをしたか?
結局、申立ては「2」の方法としました。
長女は自分だけが後見人になりたいという意思がいまだに強かったので、第1次的には「長女を後見人にしてください(できれば監督人なし)」として、第2次的には「それがダメなら司法書士今を後見人としてください」というやり方です。
ただし『おそらく「3」の方法を裁判所からは勧められるだろう』と事前に本人に説明しました。
「家庭裁判所の反応」と依頼の結果
家庭裁判所での調査官の反応は「長女のみを後見人に選任することは出来ない、もちろん裁判官が最終的に判断しますが」ということを遠回しに本人に説明していました。
長女は、「どうしても自分がやる」の一点張りです。
すると調査官は当職へ体の向きを変えて、「今先生が長女と後見人になって信託利用ということでどうですか」と打診してきました。
長女には事前に、「おそらく成年後見制度支援信託制度の利用を前提に、当職と長女が2名選ばれますよ」と説明していたので、「あぁやっぱりな」という感じでした。
その場での回答は保留ということにして、後日あらためて長女に成年後見制度支援信託について説明し了解を取りました。裁判所に対しても、成年後見制度支援信託の利用を約束する旨、当職から電話をしました。
しばらくすると、家庭裁判所との事前打ち合わせの通り、当職と長女2名を成年後見人とする選任審判書が郵送されました。
さらに、「指示書」として成年後見制度支援信託の利用を検討し、その結果を報告してくださいとする旨の文書も同封されています。
この報告は、当然のことながら当職に求められているものなので、実際に信託銀行に財産を預け入れるまでの一連の手続きは、長女ではなく私の仕事となります。
その後信託手続きも完了し、遺産分割などの相続手続きも終わったので、家庭裁判所へ後見人辞任の許可申請をし、認められ、無事終了となりました。

依頼者からの声
長女の年齢は若く、財産管理も丁寧でしたので、財産が少なければ長女のみが成年後見人に選任されていたと思われます。
しかし、当職が辞任することによって、結果的には今後長女のみが成年後見人となるわけですから、目的達成のお手伝いはできたと自負します。
無料相談を受け付けています
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。
このページでは、「【司法書士監修】後見制度支援信託を使って親の後見人に家族がなるための4ステップ」についてお話ししました。同じようなお悩みをお持ちですか?
後見制度支援信託信託の後見手続きと、相続手続きをこれから始めるにはどうすればよいのか、費用はいくら位かかるのか、様々な疑問があることと思います。
毎週土曜日に無料相談を受け付けていますので、この機会にお気軽にお問い合わせください。
お電話(代表042-324-0868)か、予約フォームより受け付けています。

東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
公益財団法人東京都中小企業振興公社「専門家派遣事業支援専門家」登録


