預金株式の相続

高層ビルと札

故人に預金口座・貯金口座があれば、これらの相続手続きが必要となります。同様に、故人に証券口座があれば、口座に保管されている株式や投資信託などの相続手続きが必要です。さらに、故人が非上場会社の株式を保有していた場合も相続手続きが必要です。

このページでは、預金口座・貯金口座、証券口座や非上場会社の株式の相続手続きについて考察します。不動産の相続手続きと比べて難しいのか、簡単なのか、自分でもできる手続きなのか。相続手続きに必要な書類の解説。また、令和1年7月より始まった預金の「仮払い請求(民法第909条の2)」についても言及します。

相続が開始すると口座はどうなるか?

銀行が、口座名義人が死亡した事実を知った場合、誰が預金を相続するか決まるまで(遺産分割協議が終了するまで)、預金の引き出しに応じない状態のことを、「口座が凍結する」と言います。

もちろん、故人の死亡と同時に口座が当然に凍結するという事はなく、相続人等が銀行に相続の開始を連絡して(相続に必要な書類を取り寄せたりするなどして)その時にはじめて凍結されるという流れです。

真偽の程は分かりませんが、地方では新聞の「お悔み欄(故人の死亡や葬儀情報を知らせる広告)」を金融機関がチェックしていて、相続人等から連絡がある前に口座を凍結するという話を聞いたことがあります。何十年も前なら分かりますが、現在もこのような取り扱いがあるとすればコンプライアンス的に問題があるため、現在では相続人等からの連絡を待って口座を凍結するのが普通でしょう。

いずれにしても、相続人全員の同意や遺産分割協議が終わらないと、預金の相続手続きはできません。自己の法定相続分のみの払い戻しを請求することもできません。これは、平成28年の最高裁判所の判例に基づく扱いであり、「個々の相続人による遺産分割前の預貯金債権の行使(払戻し請求)を禁止」しています。

預貯金一般の性格等を踏まえつつ、各種預貯金債権の内容及び性質をみると、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。裁判所|裁判例情報|最大決平成28年12月19日

投資信託についても同様の判決があります(最判平成26年2月25日)。ですから、相続人全員の同意、遺産分割協議がなければ相続手続きは行えません。

結局、口座が凍結した場合、理由を問わず口座の引き出しは認められないという意味です。ただし、一部の金融機関では葬儀費用の支払い等、個別の事情によって払戻しに応じる対応もあるようです。しかし、上に掲げた平成28年の最高裁の判例が出された以降は、そのような便宜的な取り扱いは少なくなっていると聞きます(銀行実務では「便宜払い」と呼ばれているようです。現在でもゆうちょ銀行では葬儀費用の便宜払いがあります)。

仮払い制度の創設

仮払い制度とは、相続人全員の同意や、遺産分割協議書がなくても一定の限度額までであれば、預金の口座が凍結中に仮払いとして預貯金を引き出せるようになる制度です。

「預貯金債権」についてのみ仮払いができるとされている為、投資信託や株式、その他の有価証券に関する権利は、仮払いの対象外です。従前どおり、遺産分割をしないと金融機関に対する相続手続きは行えません。

仮払いの方法は、大きく分けて2つあります。1つ目は、家庭裁判所の判断により仮払いを請求する方法(根拠法令は家事事件手続法)。2つ目は、家庭裁判所の判断を経ずに仮払いを請求する方法です(根拠法令は民法)。ほとんどの場合で、後者の方法を使うことになると思われます。これにより、相続人の1人から法令が定める限度額まで預貯金の引き出しが可能です。

預貯金の仮払い請求の制度については、別のページで詳しく解説しています。請求方法や限度額など、興味がある方は以下のリンクよりお読みください。

相続法の改正|凍結した口座から預金を引き出す法(仮払い制度)2020年度版

相続法の改正|凍結した口座から預金を引き出す法(仮払い制度)2020年度版

預貯金・投資信託・株式の相続手続き|全体の流れ

預貯金口座や投資信託、株式の相続手続きの全体の流れは大体は共通しています。ただし、実際に手続きをする金融機関等ごとに必要な書類や手順が異なることはありますのでご注意ください。

まず、以下の手続きの流れは、相続人等が各金融機関に対して行う手続きの流れです。すでに説明したように、「預金の仮払い請求」のケースを除いて、相続人の全員の同意、遺産分割協議がないと金融機関等は相続手続きには応じません。

したがって、以下の手続きに入る前提として、少なくとも「戸籍謄本等の必要書類の取り寄せ」が終わっていることが必要です。もちろん、多少の順番の前後は問題になりませんが、「戸籍謄本等の必要書類の取り寄せ」と「遺産分割協議書の作成」(つまり預金等を相続する人が確定している状態)が済んでいないと、払い出しまで完了することはありません。

なお、遺産がはっきりしない場合は、とりあえず「戸籍謄本等」だけ取得しておいて、以下に掲げる「残高証明書」を取得してから「遺産分割協議書」を作成した方が良いでしょう。

1.金融機関等に相続開始の連絡

相続人中の一人からで構わないので、通帳等に記載されている金融機関の支店に故人の相続が開始した旨を連絡します。直接窓口に出向いても構いませんし、電話で連絡しても構いません。この時点でその金融機関等の口座は凍結されます。

投資信託や株式はその販売会社(証券会社等)に連絡をします。証券会社等からの郵便物(取引残高報告書)に連絡先が書いてあります。非上場会社の株式や株券が見つかった場合は、その会社の総務部などに連絡して手続きの方法を確認すると良いでしょう。

2.金融機関等に手続き書類を請求|残高証明書

金融機関等で相続手続きを行うためには、戸籍謄本等や遺産分割協議書なども必要ですが、各金融機関所定の「相続手続き書類用紙(相続関係届出書のような名称が多い)」に必要事項を記入して提出しなければなりません。ですから、まずは「相続手続き書類用紙」を取り寄せます。ほとんどの場合、これらの手続き用紙と一緒に、相続手続きで必要な書類(戸籍謄本等)についての説明書・リストを渡されます。

このあたりの取り扱いは金融機関で全く違うので注意が必要です。まず戸籍謄本等を金融機関に提出しないと「相続手続き書類用紙」は渡さないというところもありますし、特別な手続きもなしに電話一本で郵便で送ってくれるところもあります。

また、相続税の申告が必要な場合は、「相続開始時(故人の死亡した日)の残高証明書」も請求すると良いでしょう。株式や投資信託も同様の書類が必要です。通帳やキャッシュカードがない場合(なくても相続手続きはできます)や、その支店に定期預金など他の金融商品の預けがあるか不明な場合は残高証明書はできるだけ取得しておいた方が良いでしょう。

残高証明書等は相続人の一人から請求することができますが、故人との相続関係を証明する戸籍謄本等は提出する必要があります。残高証明書等は郵送で請求することも可能ですが、窓口で請求する場合、即日発行されるとは限りません。そのため、手順に不慣れな場合、何度も金融機関等を往復することになります。

3.金融機関等へ書類を提出

各金融機関所定の「相続手続き書類用紙」への記入と、手続きに必要な書類(戸籍謄本等や遺産分割協議書など)を金融機関へ提出します。

提出の仕方も金融機関で全く違います。必ず窓口に持参しなければならないところもありますし、金融機関の「相続センター」のような一括して取り扱う窓口宛に郵送で提出することができるところもあります。

窓口に持参した場合は、長時間待たされることが多いです。その間、金融機関は戸籍謄本等のコピーを取って、その場で持参した原本を返却してくれます(金融機関によっては一部返却されない書類もあります)。郵送で提出する場合は、すぐに戸籍謄本等の原本だけでも返却してほしい旨をあらかじめ伝えておけば、手続き完了前に戸籍謄本等の原本の返却を受けることができる場合もあります。

いずれの場合も、提出しただけでは「仮受付」されたに過ぎない状態なので、不足している書類や、提出した書類の記載内容に不備があればその都度訂正する必要があります。自分で手続きを行う場合は、このような煩わしさは多少覚悟しておいた方が良いでしょう。

4.手続き完了の連絡

金融機関等へ書類を提出して不備がなければ、1~2週間で手続きが完了します(金融機関等によって完了までの日数は大きく異なります)。手続きが完了すると、明細や通帳などの書類が金融機関から郵送されます。これをもって相続手続きは終了です。

預貯金の相続手続き|注意すべき点

すでに説明したように、預貯金口座については、仮払いの請求ができます。ですから場合によっては正式な相続手続きは別途行うこととして、当面必要な金額(葬儀代や生活費等)だけ、仮払い請求することも検討事項に入れるべきかもしれません。

株式の相続手続き|注意すべき点

故人が保有していた株式を証券会社に売却してもらい、その換価代金を相続できれば便利ですが、そのような取り扱いはありません。株式の相続手続きは、相続人名義の証券口座へ振替(移管)を行うやり方になります。ですから、相続人に証券口座がない場合は、新たに相続人名義の口座を開設する必要があります。相続手続きを行い、株式が相続人名義の証券口座へ移管された後は、その株式を売却できるようになります。

故人の株式を複数の相続人が共同で相続することもできますが(たとえば相続人Aが100株、相続人Bが100株)、その場合、相続人全員が相続人名義の証券口座を有している必要があります。

なお、故人が上場していない会社(非上場会社)の株式を保有していた場合も相続手続きが必要です。上場会社の株式のように新たに口座を開設する必要はないので、書類の提出だけで済みます。また、会社によっては相続に際して株式を買い取ってくれるケースもあります。まずは会社の総務部などに連絡をして、相続手続きを確認してください。

投資信託の相続手続き|注意すべき点

投資信託の相続手続きも、上に掲げた株式の相続手続きと同じ流れになります。投資信託を販売会社に換価してもらい、その換価代金を相続することは原則としてできませんので、相続人名義の口座へ振替(移管)をすることになります。相続人が口座を保有していない場合は、あらたに開設しなければなりません。

ただし、株式の相続手続きと比べると少し緩やかに扱われていて、投資信託については故人の死亡を理由とする解約払戻に応じてもらえることも多く、わざわざ相続人名義の口座を開設しないで済む場合もあります。この点は金融機関等により全く異なる取扱ですから、事前に確認が必要です。

なお、ほとんどの投資信託は、金融機関や証券会社から購入したものだと思います。相続手続きも投資信託の販売会社である金融機関や証券会社に対して行います。どこに連絡をしたらわからない場合は、故人宛に定期的に届く「取引残高報告書」などを確認してください。故人が保有している投資信託の銘柄等が記載されています。

投資信託を相続人名義の口座へ移管した後は、その投資信託を自由に処分することができます。しかし、投資信託の種類・内容によっては処分が制限されたり、すぐに処分することにより大幅な元本割れが生じることもあるので、投資信託の商品知識が無い方は十分に注意が必要です。取扱金融機関等によく確認するようにしましょう。

投資信託の種類には大きく2つあります。単位型のものと、追加型のものです。単位型投資信託は償還期限が決まっていて、原則として償還日前の換金・処分はできません(相続手続き自体は行えます)。例外的に販売会社が買い取ることもあるようですが、その場合買取価額は時価となり、満期まで保管する場合と比較して資産価値が減少することもあります。また買取は行っていない販売会社もあります。

これに対して追加型投資信託は満期がない為、いつでも換金・処分ができます。現在は追加型投資信託が主流となっています。どちらの種類か分からない場合は、「取引残高報告書」「目論見書」などを確認してください。参考までに2つの投資信託の主な特徴を表にまとめました。

分類別名処分・換金商品一例
単位型ユニット型・スポット型
  • 満期(償還期限)あり
  • 償還日前の換金不可
  • ゴールドマンサックス社債国際分散投資戦略ファンド
  • 高金利先進国債券ファンド
追加型オープン型
  • 満期なし
  • いつでも換金可
  • インデックスファンド225
  • グローバルソブリンオープン
  • MMF
  • MRF

預貯金・投資信託・株式の相続手続きは面倒か

銀行や証券会社も相続に関しては、慎重で厳格です。法務局(登記所)でする登記と何ら違いはありません。預貯金・投資信託・株式の相続手続きが、登記の手続に比べて緩やかという事はありません。

預貯金・投資信託・株式の相続手続きが面倒な理由とは?|必要書類

それでは、預貯金・投資信託・株式の相続手続きが面倒な理由について考察します。理由は多く分けて3つあります。

1.集める書類が多いこと|預金・投資信託・株式の相続の必要書類とは

まず、集める書類が多いことが理由の一つです。不動産の登記手続きとほぼ同じ内容の書類の提出を要求されます。提出すべき書類は金融機関によって多少の違いはありますが、概ね以下の通りです。

【預貯金・投資信託・株式の相続手続きの必要書類】
1.被相続人の死亡から出生に遡る戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本等
2.相続人全員の戸籍謄本
3.上記「1」「2」に代わる「法定相続情報一覧図の写し」がある場合はその原本
4.相続人全員の印鑑証明書
5.遺産分割協議書がある場合はその原本
6.自筆証書遺言書がある場合は検認済みの遺言書原本
7.公正証書遺言書がある場合は正本または謄本
8.裁判所の遺産分割審判等による場合は調停調書謄本または審判書謄本および確定証明書
9.金融機関・証券会社所定の「相続関係届出書」等の書類

この他、通帳やキャッシュカード、証券類が必要となりますが、もし紛失して見当たらなかった場合は、「相続関係届出書」などにその旨を記載すれば相続手続きは可能です。

なお、すでに説明しましたように、一度窓口にこれらの書類を提出しますが、あくまでも「仮受付」のようなものですから、後日銀行等で書類を精査した後に不足書類があれば補完するように連絡が来ます(当事務所のような専門家が行う場合は後から補完の連絡を受けるようなことはありません)。

今までに相続手続きの経験がない方は、一度で過不足なく書類を揃えることは難しいかもしれません。そのようなケースでは、必要な書類の手配だけでも専門家に依頼することが確実に相続手続きを終わらせる方法の一つです。

2.金融機関・証券会社ごとに手続・手順が異なること

預貯金や投資信託・株式の相続において、一番面倒で不便なことは、手順が金融機関・証券会社ごとに異なる点です。統一的な取扱いはありません。これにより、保有口座・金融機関が多いほど煩わしさを感じます。上にも掲げたように金融機関へ提出する書面の内容も各金融機関等ごとに特徴があります。

3.窓口は土日・夜間は営業していないこと

書類の取り寄せから提出まで、すべてを郵送で行える金融機関はごくわずかです。ほとんどの場合、預金や投資信託・株式の相続手続きを行うためには、最低でも1回は金融機関の窓口へ出向く必要があります。

書類に不備があれば再提出や書き直しを要求されることもあります。しかも、金融機関の窓口は土日・夜間は営業していません。日中、忙しい方であれば、自分で相続手続きを最後まで行うのは非常に困難でしょう。

解決案の提示|面倒な相続手続きから解放されるには

上記の通り、預貯金・投資信託・株式の相続手続きは決して簡単には済まないケースもあります。特に相続が順次生じている場合(数次相続・代襲相続と呼ばれるもの)や、遺言書がある場合などは、法律的な知識が必要となることが多いです。

訂正するために何度も窓口へ出向いたりするのであれば、初めから必要書類の収集から提出まで相続手続きの専門家に任せてしまうことが、安心で確実と考えることもできます。

いずれにしても、自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「預金・株式・投資信託の相続手続きで注意すべき点」と題して、預金・株式・投資信託の相続手続きについて解説しました。

不動産の相続手続きも同じことが言えますが、預金・株式・投資信託の相続手続きも、簡単にできる場合がある一方で、手間のかかる場合もあります。この見分けについては、専門家でないと判断できません。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

相続の手続きの流れや、費用はいくら位かかるのか、戸籍謄本などの書類の取り寄せにかかる費用や、どの位の期間で完了するのか等、他にも様々な疑問があることと思います。

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