成年後見

近年、成年後見手続きに関する相談件数が増えています。「相続人の中に認知症の方がいた場合どうすればいいのか」「家族が成年後見人となるにはどうすればよいのか」など具体的なご質問も多くいただきます。

成年後見に関する相談件数が増加したのは、成年後見制度が社会的に広く認知されてきた結果だと思います。しかし、その一方で成年後見手続き、後見制度自体に関する誤解も多く見られます。

このページでは、これから成年後見制度の利用を検討されている方、そして現在すでに成年後見制度を利用されている方に向けて、成年後見制度を正しく理解してもらうために、この制度の重要なポイントを解説します。

成年後見制度とは|制度の利用は義務か?

成年後見制度とは、認知症の高齢者や障害者など、判断能力の十分でない方を支援するための制度です。成年後見制度は民法に規定があり、従来「禁治産(準禁治産)」と呼ばれていたものを平成12年4月1日に改正して現在に至ります。

判断能力の十分でない方は、自分自身で財産管理等を行うことが難しいため、裁判所から選任された成年後見人等が本人に代わって財産管理等を行います。成年後見人等が財産管理等を行うにあたっては、自由好き勝手にやっていいというものではなく、本人の意思を尊重して、本人の心身の状態や生活に配慮しなければなりません(民法第858条)。

成年後見人は裁判所の監督下に置かれるため、預かっている本人の財産を勝手に処分することはできません。もちろん本人のための日用品の購入や公共料金・家賃の支払いなどは成年後見人の判断で行いますが、例えば本人名義の不動産を処分する等、重要な財産を処分するときは、事例によって事前に裁判所の許可が必要な時もあります。

成年後見制度は誰でも必ず利用しなければならないものなのか?

例えば、本人が医者に認知症と診断されたからと言って、直ちに成年後見制度の利用が法律上義務付けられる訳ではありません。ですから、本人の財産管理身上監護を行うに際して、現時点で特段の不都合が生じていなければ、わざわざ成年後見制度を利用する必要はないと考えます。

財産管理とは
  • 本人名義の預貯金口座の入出金、口座の管理
  • 各種費用・料金の支払い
  • 本人が賃貸人となる不動産の管理(賃料の請求や受領・更新契約など)
  • 不動産の売却や賃貸
  • 遺産分割の協議
  • 保険契約の締結や保険金の受領 など
身上監護とは
  • 病院の入院や通院に関する契約
  • 施設の入所や対処に関する契約
  • 介護サービスの締結や変更・解約に関する契約
  • 在宅や施設での生活の配慮 など

しかし、表に掲げたような財産管理や身上監護を行うにあたって、銀行や施設等から「成年後見人を立てないと手続きは行えない」「成年後見人を立ててください」と言われれば、成年後見制度の利用を検討せざるを得ません。

このあたりの線引きが非常に曖昧なのが現実です。たとえば、Aという老人ホームでは入所契約に際して「家族が本人に代わって署名捺印すればいいです」と言われても、Bという老人ホームでは「本人が認知症であれば成年後見制度を利用して成年後見人を選任して下さい」と言われたりします。

このような扱いは病院なども同様です(これらに比較して金融機関は厳格です)。法律上は、本人の判断能力が不十分であれば、たとえ家族であっても本人の預貯金を引き出したり、本人に代わって入所契約を締結することはできないわけですから、先に掲げたA老人ホームの取扱いは便宜的で温情ある取り扱いにすぎないわけで、厳密には成年後見制度を利用すべきケースに該当します。

したがって、医師の診断があるほどに本人の判断能力が不十分であり、なおかつ取引の相手方が「成年後見人を立ててください」となれば、成年後見制度を利用しなければ所定の目的(預金の入出金や各種契約等)は達成できません。

【ミニコラム|家族であれば当然に代理できるか?】
判断能力が十分でない方をその家族が当然に代理できるのでしょうか。「家族なのだから代理できるのは当然だろう」と思われている方が非常に多いのですが、それは明らかな間違いです。法律上「代理」とは、ある事務を別の人に「お願いする人(本人)」と、それを「承諾する人(代理人)」の意思の合致が必要です。「お願いする人(本人)」が認知症等により意思表示ができない状態であれば、そもそもお願いはされていないわけですから、「代理」が成立することもありません。それにもかかわらず本人からお願いされたと偽って代理人のようにふるまうと、法律上は「無権代理人(権限もないのに本人に代わって代理行為をした人)」となり、無権代理人の行った法律行為は原則的に無効という扱いになります。

成年後見人等が勝手に付けられることはあるのか?

成年後見制度はそもそも制度の利用が任意的なものですから、本人側が何の申請(実際には家庭裁判所に対して後見等開始の申立ての手続きが必要です)もしていないのに、勝手に成年後見人等を付けられることはありません。

しかし、例外的にはあります。「勝手に」という言い方は誤解を招くかもしれませんが、事情によっては本人側が何の申請をしていなくても成年後見人等が付けられることはあります。

例えば、本人が認知症等により在宅で生活することが困難で、病院・施設へ入所手続きを取る必要があり、成年後見制度の利用が必須であるところ、本人の親族がその申し立て手続きに非協力的である場合。

このような場合は、まず民生委員や介護事業所、社会福祉協議会等の関係者が、市町村長に対して、本人の健康状態・生活状況・福祉増進のために成年後見等開始の申し立てを行ってほしい旨の申し出を行います。

次に市町村長が関係者からの申し出を受けて調査をし、その結果本人の福祉の増進等のために成年後見制度の利用が必要と判断した場合は、市町村長が申立人となり家庭裁判所へ成年後見等開始の申し立てを行います。このようなケースでは弁護士や司法書士等の資格者が成年後見人に選任されます。

市町村長が申立人となる成年後見制度の利用件数ですが、全体の10%超程度にもなるという統計がありますので、利用実績は意外に多いことがわかります。

成年後見制度の利用を検討している方へ

それでは次にこれから成年後見制度の利用を検討されている方へ向けて、ぜひ知っておきたいポイントを簡潔に解説します。すでに知っている項目については読み飛ばしてください。

成年後見制度の利用をするにはどうすれば…

成年後見制度を利用するという事は、簡単に言えば「本人に成年後見人を付ける」ということです。詳細は後述しますが、成年後見人を選ぶのは家庭裁判所です。ですから、この制度を利用するには家庭裁判所への申立て手続きが必須となります。正式には「後見等開始の審判の申立」と言います。

後見等開始の審判の申立はどの裁判所にすればいいのか|管轄

「後見等開始の審判の申立」は、判断能力が不十分な本人の住所地を管轄する家庭裁判所に書面で申し立てることになります。例えば、本人の住所が東京都内にある場合は、申立先の裁判所は以下の通りです

本人の住所申立をすべき裁判所
東京都23区内及び東京都内の諸島東京家庭裁判所本庁(霞が関)
上記以外の東京都の市町村東京家庭裁判所立川支部

東京以外の都道府県の場合は、「◯◯県・成年後見・裁判所・管轄」などのキーワードで検索すれば、申し立てをすべき裁判所を事前に調べることができます。

申立手続きの流れ

後見等開始の審判の申立手続きの簡単な流れは、以下の通りの3段階になります。

  1. 管轄の裁判所へ書類を提出(申立)
  2. 裁判所からの呼び出し(面談)
  3. 裁判所による審判(選任)

流れは以上のように単純です。順に解説します。

1.管轄の裁判所へ書類を提出(申立)

まずは管轄の裁判所へ申立て書類を提出します。何を提出すべきかは後述します。直接裁判所へ持参することもできますし、郵送によることもできます。

なお、東京家庭裁判所本庁と東京家庭裁判所立川支部では、申立書を提出する前に事前に「2.裁判所からの呼び出し(面談)」の日を予約しなければなりません。予約は電話で行います。電話で決定された面談日を申立書類に記入したうえで面談日前までに書類を提出するという流れになります。東京以外の裁判所で予約が必要か否かは扱いが異なりますので、事前に管轄の家庭裁判所へお問い合わせください。

2.裁判所からの呼び出し(面談)

申立人、本人(病院や施設に入所していて同行できない正当な理由がある場合は欠席でも大丈夫です)、成年後見人等候補者が呼び出されて、家庭裁判所の調査官等と面談をします。法廷ではなく、裁判所内の会議室のような場所で行われることが多いです。

申立てに至った経緯を質問されたり、成年後見制度の利用に際しての注意事項などが簡単に説明されたりします。内容にもよりますが、面談時間は30分程度が多いです。

3.裁判所による審判(選任)

後見開始の審判書が裁判所から申立人、本人、成年後見人宛に送付されます。審判書には誰を成年後見人に選任したか、申立ての費用を誰が負担するか等が記載されています。この審判自体に対しては不服(即時抗告)が言えます。しかし、誰を後見人に選任したかという点については不服は言えませんのでご注意ください。想定外の方が後見人となってしまっても不服は言えません。不服は審判書が送達されてから2週間以内に限られます。

成年後見人を選ぶのにどのくらい日数がかかるか?

次に、成年後見等開始の申立をしてから裁判所による審判(選任)がされるまで、どのくらいの期間がかかるかについてです。申立て書類に不備がなく、裁判所が混雑していなければ、当事務所では最短で10日で選任されたという事例もあります。

しかし、10日程度で成年後見人等が選任されるというのは非常に珍しく、一般的には短くても1か月程度はかかるものだと考えておいた方が良いでしょう。通常は選任されるまでに1~2か月かかります

後見等開始の申立書類は自分でも作れるか

まず前提として、後見等開始の申立は誰もができるわけではなく、法律上「申立権」を有する者に限って認められます。申立権を有する者は、民法第7条に以下のように規定されています。

(後見開始の審判) 第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。電子政府の総合窓口|e-Gov

この条文によると、申立ができるのは、本人(認知症等判断能力が劣る方)、4親等内の親族等です。検察官が申立を行うことは事例としてまずありません。また、本人は認知症等のため自ら申し立て手続きを行うのは困難であるため、実際は親族による申立がほとんどです。

次に、親族が後見等開始の申立書類の作成・提出を自分できるのかという問題です。作成・提出が求められる書類は一般的に以下の書類です(裁判所によって異なりますので必ず管轄裁判所へお問い合わせください)。

【後見等開始の審判の申立に必要な書類】
・後見・保佐・補助開始等申立書
・代理行為目録【保佐,補助用】
・同意行為目録【補助用】
・申立事情説明書
・親族関係図
・財産目録
・相続財産目録
・収支予定表
・後見人等候補者事情説明書
・親族の意見書について
・本人情報シート(成年後見制度用)
・診断書(成年後見制度用)
・診断書付票
・本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・本人の住民票又は戸籍の附票
・後見人候補者の住民票又は戸籍の附票
・本人の登記されていないことの証明書
・本人の財産に関する資料等
(1)不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書など
(2)預金や有価証券の残高がわかる書類など

後見等開始の申立手続きを自分でする方もいらっしゃいます。家庭裁判所へ行くと、成年後見制度のパンフレットおよび作成が必要な書類一式が入った封筒を無料で受け取ることができます。またこれらは家庭裁判所のホームページでダウンロードすることもできます。参考までに東京家庭裁判所の公式ホームページをリンクに貼っておきますので参考にしてください。

■申立てをお考えの方へ(成年後見・保佐・補助)|東京家庭裁判所後見センター

まずは一度上記の東京家庭裁判所後見センターのページで、作成に必要な書類の見本を見ていただいて、自分でも作ることができるかどうかを確かめてみてください。数値としての確かなデータではありませんが、体感として、当事務所に相談に来られた方に上記の書類を見て頂いた後、それでも自分でやってみるという方は10名中2名くらいの割合です。

もし申立書類に不備があれば、成年後見人等の選任手続きに必要以上に時間がかかりますので、手続きに不慣れな方は専門家に依頼すべきでしょう。

後見等開始の申立にかかる費用は

裁判所へ申立書類を提出するときに、収入印紙や切手代を含めて約7,000~8,000円程度かかります。なお申立書類を家庭裁判所に提出した後、裁判所が本人の精神鑑定が必要と判断した場合は、裁判所から10万円程度の追加負担金の支払いを命じられることもあります(精神鑑定費用に使用されます)。

これらの裁判所へ納付する費用は、原則的に申立人が負担しますが、裁判所が認めれば本人(判断能力が劣る方)が負担することもあります。もしこれらの裁判所へ納付する費用が用意できない場合は、助成金を交付している自治体もあります。本人が生活保護受給者であることなど助成金を受給するための要件は自治体により異なりますので、事前に役所へお問い合わせください。参考までにいくつかの自治体のウェブサイトのリンクを貼っておきます。

■費用の助成(成年後見制度利用支援事業)|社会福祉法人千葉市社会福祉協議会

■成年後見制度利用支援事業(申立費用・後見人等報酬助成)について|川崎市

■区の助成について(申立費用・後見報酬費用)|足立区

なお、司法書士へ申立書類の作成・提出の代行を依頼することもできます。この場合司法書士に対する報酬として別途9万円~程度がかかります。こちらの金額は申立人が負担することになります。

誰が成年後見になるのか?

後見人に選任されるために特別な資格は必要ありません。破産者や未成年者、本人と訴訟をした者などは成年後見人になれないという欠格事由の定めはありますが(民法第847条)、これに該当しない限り理論上は誰でも後見人になることができます。

(後見人の欠格事由) 第八百四十七条 次に掲げる者は、後見人となることができない。 一 未成年者 二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 三 破産者 四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族 五 行方の知れない者電子政府の総合窓口|e-Gov

最終的に誰を後見人にすべきかは家庭裁判所の裁量・判断で決定されるものですが、申立人の希望を伝えることはできます。その方法として具体的には、裁判所へ提出する申立書類の中に「後見人等候補者」として後見人になってほしい人を記載します(候補者の同意が必要です)。もちろん申立人自身(親族・家族)を記載することもできます。

しかし、「後見人等候補者」が実際に後見人に選任される保証はありません。誰を後見人に選任するかは、本人の状態や、生活及び財産状況、後見人等候補者の職業・経歴・年齢・本人との利害関係、その他一切の事情を総合的に考慮して、家庭裁判所が判断します。一度選任されてしまうと、これに対して不服を申し立てることはできません。

また、申立書類に「後見人等候補者」を記入しないで提出した場合は、申立人からの希望はないものとして、家庭裁判所の裁量で司法書士や弁護士等を後見人に選任します。

いずれにしても家族、司法書士、弁護士、社会福祉士が成年後見人になるのが一般的な扱いです。家庭裁判所の最新の統計によると、家庭裁判所が成年後見人として一番多く指名しているのは司法書士です。

その理由として、司法書士には「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」という司法書士を構成員とする正式な団体があり(弁護士等他の士業にはこのような団体はありません)、家庭裁判所と連携する形で、後見業務を行う司法書士をしっかりと監督していることが挙げられると思います。

家族が後見人になることはできるのか?|後見監督人とは

申立人(親族・家族)が成年後見人に選任されることもあります。ただし、次のような事情がある場合は注意が必要です。

  1. 本人の財産が多い場合
  2. 財産管理が一般人では難しい場合(賃貸人として貸している不動産がある場合等)
  3. 申立人(親族・家族)が高齢の場合
  4. 親族・家族間で対立関係がある場合

上記のような事情が1つでもあると申立人(親族・家族)は後見人として選任されにくいのが現状です。これ以外でも裁判所が家族はふさわしくないと判断するのに相当な理由があれば、家族は後見人として選任されません。

もし後見人として家族が選任されたとしても、後見人を監視する役目としての「後見監督人」が別途付けられることもあります。当然「後見監督人」は司法書士や弁護士などの資格者が選ばれます。後見監督人を親族・家族から選ぶことはないでしょう。いずれにしてもこのような事(後見監督人を付けるか否か)も含めて、事情を総合的に判断して家庭裁判所が決定することになっています。

後見監督人は親族などの請求によって家庭裁判所が選任することもありますが、通常は家庭裁判所が職権で選任する方が多いです。後見人は「後見等開始の申立て」を行ったうえではじめて選任されるのに対して、後見監督人はそのような申立てをしていなくても、家庭裁判所が後見監督人が必要だと判断すれば勝手につけられることになります。

もちろんのことですが、後見監督人は後見人を監督する役目ですから、後見人がいないのに後見監督人だけ選任されるようなことはありません。

(後見監督人の選任) 第八百四十九条 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる。電子政府の総合窓口|e-Gov

なお、申立人(親族・家族)が成年後見人になることを希望する方は、こちらのページも是非参考にして下さい。

■【司法書士監修】成年後見人に家族がなるたった6つの条件

【司法書士監修】成年後見人に家族がなるたった6つの条件

■【司法書士監修】成年後見人は親族からと最高裁が方針変更か?|追記最新データ

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■【解決事例】相続と認知症|後見制度支援信託を使って家族が後見人に

【解決事例】相続と認知症|後見制度支援信託を使って家族が後見人に

後見に似た保佐や補助という制度があると聞きました

後見等開始の審判の申し立てをする際には、必ず医者の診断書を添付します。医師は必ずしも主治医である必要はありませんが、申し立て後に行われることがある「精神鑑定」のことを考慮すると、主治医の方が好ましいかもしれません。なぜなら主治医であれば精神鑑定も引き受けてくれる可能性が高く、鑑定料も面識のない医師に比較して、安くしていただける場合が多いからです。

ところで、その医師の診断書には本人の能力がどの程度あるかが書かれています。

1、頻繁な物忘れであれば→補助制度
2、軽度の認知症であれば→保佐制度
3、重度の認知症であれば→後見制度

これは一例です。診断書には、補助・保佐・後見制度の3つのうち、どの制度を利用するのにふさわしい能力の状態なのか、医師がチェックをする欄が設けられています。まずは、この医師の診断に沿った申し立てをすることになります。

後見制度の場合は本人に成年後見人が付されますが、保佐制度の場合は保佐人、補助制度の場合は補助人がそれぞれ付されます。この3つの制度で細かな違いは多々ありますが、本人を支援する制度という意味では、保佐も補助も後見制度と共通した手続きです。

成年後見制度を利用したくない場合

成年後見人を立てるには、本人(判断能力が劣る方)の住所地の家庭裁判所に、後見等開始の審判の申し立ての手続きをします。たとえば医師により認知症と診断された人が相続人の中にいる場合、相続手続きを行うためには、現在の法律上は、成年後見人を選任する以外に方法はありません。

ただし、相続手続きを裁判手続き(遺産分割調停や審判など)によって解決するのであれば、成年後見制度を利用することなく、裁判手続き(遺産分割調停や審判など)の中で本人(判断能力が劣る方)を代理する方として特別代理人を選任することで済む方法もあります。常に認められるわけではありませんが、当事務所では過去に特別代理人を選任することで相続手続きを終えることに成功した事例があります。

なお、本人に意思能力がない状態で、老人ホームなどの入所契約や預金の解約手続き、本人名義の不動産を売却する等であれば、現時点では成年後見人を立てるしか方法はないでしょう。成年後見制度を利用したくないというのは理由になりません。

すでに成年後見制度を利用している方へ

次にすでに成年後見制度を利用されている方へ向けて、ぜひ知っておきたいポイントを簡潔に解説します。当事務所にお問い合わせの多い項目を特別にピックアップしました。

成年後見人は何をするべきか?

成年後見人が本人に代わってすることは2つあります。

1つ目は財産管理です。預貯金の入出金、各種費用の支払いや受領、不動産の管理や保存の事務について本人を代理して行います。通帳やキャッシュカード、権利証など本人の財産に関するものはすべて成年後見人が管理するのが原則です。

2つ目は身上監護です。本人に必要な介護サービス、老人施設、病院の入退院の契約事務について成年後見人が本人を代理して行います。いわゆる身の回りのお世話や、医療行為(手術等)の同意は行いません。すでに上に掲げた表ですが再掲します。

財産管理とは
  • 本人名義の預貯金口座の入出金、口座の管理
  • 各種費用・料金の支払い
  • 本人が賃貸人となる不動産の管理(賃料の請求や受領・更新契約など)
  • 不動産の売却や賃貸
  • 遺産分割の協議
  • 保険契約の締結や保険金の受領 など
身上監護とは
  • 病院の入院や通院に関する契約
  • 施設の入所や対処に関する契約
  • 介護サービスの締結や変更・解約に関する契約
  • 在宅や施設での生活の配慮 など

また、成年後見人は、少なくとも毎年1回、後見事務報告書、財産目録、収支状況報告書を作成して家庭裁判所へ提出する義務があります。いつまでに提出すべきかは裁判所から連絡があります。また、提出すべき書類の様式については裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。通帳のコピーも毎回必ず提出します。不正を疑われるような出金は特に気を付けてください。後見人を解任されるだけでなく、横領罪が成立してしまうこともあります。

成年後見人を途中で辞任できるか

成年後見人自身の病気(成年後見人自身が高齢となってしまった場合を含む)や転居など「正当な事由」がない限り成年後見人を辞任することはできません。

成年後見人を辞任するためには家庭裁判所へ申立てをして、家庭裁判所の許可が必要となるため、「正当な事由」にあたるか否かは家庭裁判所が事情を総合的に考慮して判断することになります

(後見人の辞任) 第八百四十四条 後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。電子政府の総合窓口|e-Gov

成年後見人は財産管理と身上監護を行うわけですが、それらの方針が家族・親族等と大きく異なっていて、お互いの信頼関係を維持できなくなったような場合も「正当な事由」に該当すると裁判所が判断することもあります。

成年後見人を解任したい

いま付いている成年後見人(保佐人・補助人)を解任することもできます。民法には次のように規定されています。

(後見人の解任) 第八百四十六条 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。電子政府の総合窓口|e-Gov

これによると、解任する理由があり、一定の手続きをとれば解任できることになります。これを表にまとめると次のようになります。

解任の理由(解任原因)手続き
①不正な行為(1)親族等からの申立

(2)裁判所による職権

②著しい不行跡
③その他後見の任務に適しない事由がある場合

まず、解任原因があることが前提になります。「①不正な行為」とは、成年後見人が法律違反の行為をした場合です。例えば、家庭裁判所の許可を得ないで居住用の不動産を売却した場合が考えられます。

「②著しい不行跡」とは、成年後見人の日頃の行いが著しく悪い場合です。「③その他後見の任務に適しない事由がある場合」とは、成年後見人が権限を乱用したり、成年後見人の職務を全く行わない場合などです。家庭裁判所の監督に従わない場合などもこちらに該当します。

これら3つのどれにも該当しない場合、例えば「成年後見人と意見があわない」とか「後見報酬が高すぎる」などを理由として解任することはできません。「成年後見人と意見があわない」のであれば、前述した「辞任」の手続きが選択肢として考えられます。具体的には、現在の成年後見人に辞任を促して裁判所の許可をもらい、後任の成年後見人を選任してもらうという流れです。「後見報酬が高すぎる」点については後述します。

解任原因があるとして、次に解任の具体的な手続きです。解任の手続きには「申立」による方法と、「職権」による方法の2つがあります。「申立」は親族など一定の方が管轄の家庭裁判所へ成年後見人の解任の申立書を提出することにより行います。親族の言い分だけでなく、成年後見人の意見なども考慮して家庭裁判所が審判します。

「職権」による方法は、成年後見人本人や親族等からの申し入れを受けたり、家庭裁判所の調査官からの報告により、成年後見人に解任事由があると判断した場合、裁判所が申立てなしに職権で解任します。

遺産分割協議や施設の契約が終わったら、後見手続きを止めることができるか

相続人の中に認知症の方がいる場合など、相続をきっかけに成年後見人の選任を選任される方がとても多くなっています。成年後見人が認知症の方の代理人となって遺産分割協議などの相続手続きを行うこととなるためです。

また、入所施設や入院の手続きをするために後見手続きを利用している方も多いでしょう。それでは当初の目的(遺産分割協議や施設の契約等)が無事に完了すれば、後見手続き自体を止めることはできるのでしょうか。

答えは「できません」。相続手続きや入所契約などが完了しても、成年後見手続き自体が終了することはありません。成年後見手続きは、本人が死亡するまで継続します。決して途中で終了することはありません。

相続手続きや施設への入所契約、定期預金等の解約手続きが終了したからといって成年後見人を辞任することもできません(辞任するための正当事由があるとは言えないという意味です)。

成年後見制度は本人(判断能力の劣る方)が亡くなるまで続きます。一度利用を始めたら止めることができません。しかし、本人の判断能力が完全に回復した場合は、後見手続きを止めることができます。この場合は、本人などの一定の方から家庭裁判所に対して「後見等開始の審判の取消しの申立」をすることになります。

また、本人の判断能力が少しだけ回復した場合は、後見制度から保佐制度・補助制度に切り替えることもできます(類型変更と言います)。現在の医療では判断能力を完全に回復させることは難しいですが、少しだけ回復させることは可能とされています。ですから、制度の切り替え(類型変更)については実際に申立てがあるようです。

(後見開始の審判) 第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(後見開始の審判の取消し) 第十条 第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。電子政府の総合窓口|e-Gov

成年後見人の報酬は高いのか?

成年後見人に支払われる報酬額は裁判所が決定します。成年後見人が自分に支払ってほしい額を裁判所に申し立てるわけでもありません。

成年後見人は毎年1回、家庭裁判所に対して直近1年分に関する後見事務の報告をすることが義務です。その際に直近1年間の後見事務に関する「報酬付与の審判の申立」を行います。この申立書に希望する金額を記入することはなく、単に「報酬を付与してください」と申し立てます。その後家庭裁判所が、後見事務の報告書等を審査を経た上で、具体的な報酬金額を決定します。

「成年後見人の報酬は高すぎる」という声を耳にするのですが、上記のように、成年後見人の報酬は成年後見人が定めた金額ではなく、裁判所が決定した金額ですのでご理解いただきたいところです。ですから、成年後見人の報酬が高すぎるという理由で、現在の成年後見人を解任することもできません。

成年後見人へ支払われる報酬は、家庭裁判所の報酬付与の審判を受けた後に、成年後見人が本人の財産(預貯金など)から引き出す流れになっています。親族が支払うわけではありません。

具体的な金額ですが、職業後見人(司法書士・弁護士等)の報酬は、1か月3~4万円が基準です(管理する財産の価額や実際の後見事務の内容によって大きく異なります)。月払いではないので、直近の1年分を一括後払いすることになります。

家族が成年後見人となる場合は、報酬を求めないことがほとんどです。もちろん、法律上は報酬を求めても何ら問題はありません。「報酬付与の審判の申立」をするか否かは成年後見人の自由です。

もし後見人への報酬の支払いができないくらい本人の財産が少ない場合は、助成金を交付している自治体もあります。助成金を受給するための要件は自治体により異なりますので、事前に役所へお問い合わせください。参考までにいくつかの自治体のウェブサイトのリンクを貼っておきます。

■費用の助成(成年後見制度利用支援事業)|社会福祉法人千葉市社会福祉協議会

■成年後見制度利用支援事業(申立費用・後見人等報酬助成)について|川崎市

■区の助成について(申立費用・後見報酬費用)|足立区

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

成年後見の問題を早く解決するには

「裁判所から書類をとりよせたけれど、結局よくわからかなった」「身の回りのお世話で忙しいので法律的なことをやってもらえるだけでもありがたい」。当事務所で行っている無料相談での相談者様の声です。

当事務所では、成年後見人の選任申立手続きをはじめとして、成年後見手続きに関する様々な業務を代行しています。上記の通り、成年後見についてはここでは紹介しきれない位様々な問題があります。それら複雑な問題を家族・親族が自分だけの力で解決することは非常に困難です。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

またご希望により、当事務所所属の司法書士が本人の成年後見人に就任することも可能です(ただし成年後見人をお引き受けするに際しては本人の財産額や年齢、現在の状況など一定の条件がございますので詳細はお問い合わせください)。

さらに、現在家族が成年後見人となっている場合の、家庭裁判所に提出する後見事務報告書・財産目録等の書類作成代理もお引き受けしています。

後見等開始の審判の申立の手続きの流れや、費用はいくら位かかるのか、どの位の期間で完了するのかなど、他にも様々な疑問があることと思います。

専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

毎週土曜日に無料相談を受け付けていますので、この機会にお気軽にお問い合わせください。
お電話(代表042-324-0868)か、下のバナーより受け付けています。無料相談会予約フォームはこちら

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