【司法書士監修】相続と認知していない子の見逃せない問題とは?

2022年7月7日

遺産問題
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遺産相続が開始した場合、誰が法律上の相続人となるのかは、一般の方には判断が難しい問題です。なかでも相続と認知の関係については情報もあまり多くなく、不安になることでしょう。

このページでは、認知していない子が相続人となるのか、相続人とはならないのか、そしてもし相続人となった場合にすでに終わっている遺産分割をやり直す必要があるのか等を相続の専門家の視点から解説します。また、認知していない子に財産を相続させないようにする為の方法についても考察します。

認知していない子は相続人ではないのが原則

結婚していない男女の間で生まれた子は、原則として母(および母の血族)との間では血縁がつながっているとされますが、父(および父の血族)との間では、当然には血縁関係は生じません。

父(および父の血族)と子の間に血縁関係が生ずるためには、父の認知が必要となります。ですから、父が死亡して相続が開始した時点において、認知していない子は父の相続人にはならないのが結論です。ここまでは知っている方も多いのではないでしょうか。

問題は「認知していない子が父の相続人となる余地はあるのか?」という点です。この点は項目を改めまして次項で説明します。

(認知)
第七百七十九条  嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。 民法|e-Gov法令検索

認知していない子も相続人になることがあるか?

認知は父が任意に行うものという認識があるかもしれませんが、父が自ら進んで認知を行わない場合は、子の側から調停を申し立てたり、裁判所に訴えることによって、強制的に認知を行わせるというやり方もあります。

これを強制認知と言うのですが、この方法はすでに父が死亡していても利用できる方法です。死亡後に認知が完成することもあるという意味で「死後認知」と称されます。

死後認知によって相続人になることもある

このように、生前に父が子を任意に認知していなくても、父の死亡後に子の側から強制認知の手続を利用されて、裁判所でこれが認められれば、子は父と血縁関係を生じ、翻って父の相続人となります。

ですから、もし父に認知していない子がいる場合は「相続人ではないから心配することはないだろう」とは言い切れないのです。そしてこれこそが「相続と認知していない子の見逃せない問題」となる訳です。

すでに終わっている遺産分割はやり直すのか?

それではすでに他の相続人全員の間で遺産分割が終わっている場合、死後認知によって新たに相続人となった子を含めて再度遺産分割をやり直さないといけないのでしょうか。

たしかに死後認知によって子が父との血縁関係が認められると、法律上は、その子は生まれたときから父の子であったことになるため(民法第784条)、共同相続人の1人を除外してなされた遺産分割は無効であるはずです。

(認知の効力)
第七百八十四条 認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。 民法|e-Gov法令検索

しかし、そのようにすると遺産分割のやり直しが必要となるため、遺産分割の法的な安定性が担保されなくなってしまいます。しかし、その一方で認知によって新たに相続人になった子の利益も保護する必要があります。

金銭の請求ができるだけ

そこで民法には、このような「遺産分割後に認知があった場合」の特例として、子は他の相続人に対して金銭の支払い請求をすることができるという規定があります(民法第910条)。

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
第九百十条 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。民法|e-Gov法令検索

これを父の側に置き換えて考えてみると、「死後認知が裁判所で認められれば、認知された子から他の相続人へ金銭の請求がされる」という結論になります。裁判上認められた権利ですから、請求されたにもかかわらず支払わないとすると、支払いを求めて裁判を起こされる可能性があります。

なお、認知された子は金銭の請求ができるだけですから、すでになされた遺産分割自体は有効です。ですから、その遺産分割に基づいて行われた相続登記も有効ですから、その相続登記を変更したり抹消したりする必要はありません。

認知の意味と方法について

ここで認知の意味をあらためて確認します。結婚していない男女の間に生まれた子を法律上は「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」と言います。婚姻外で生まれた子という事で法律上の呼び方ではありませんが「婚外子(こんがいし)」と言われることもあります。

昔の民法では「私生児(しせいじ)」と称して、これを父が認知することにより「庶子(しょし)」と呼んでいました。しかし昭和17年の民法改正で私生児や庶子の名称は廃止して「嫡出でない子(非嫡出子)」と改めました。

認知すれば相続権が生じる

結婚していない男女の間に生まれた子は、母との親子関係は明らかと言えるので、一般論として、母と子の間で認知という問題は生じません。過去の裁判例でも、母子関係については母の認知を待たず、分娩という事実によって当然に発生する(最判昭和37年4月27日)とされています。ただし、例外的にいわゆる「捨て子」にように分娩の事実が判明しない場合は、母の認知によって母との間に法律上の親子関係が成立することもあると説明されています。

いずれにしても、結婚していない男女の間に生まれた子と母についての母子関係は分娩の事実により明らかですが、父との関係は必ずしも明らかとは言えません。ですから、父から認知を受けていない子は母の戸籍に入り(戸籍謄本をみると父の欄は空欄となります)、親権も母が持ちます。父とは法律上ではなく、事実上の親子関係があるにすぎないという状態です。

認知とはこのような「事実上の親子関係」を「法律上の親子関係」に移行させるものと説明されます。認知によって法律上の親子となりますから、扶養義務も当然に生じますし、父の財産を相続できるようになります。なお、認知したからといって子が当然に母の戸籍から父の戸籍に移ることはありません。また、名字や親権が当然に父親に代わるという事もありません。

認知された場合の法定相続分は普通の子と同じ

それでは父から認知された非嫡出子の相続分はどうなるのでしょうか。従前の民法には、非嫡出子の相続分は嫡出子(婚姻関係にある男女の間で生まれた子)の半分という規定がありました。しかし、この規定は憲法に違反するとして削除されて、現在は非嫡出子の相続分は嫡出子と同じです。

この新法が例外なく規定されるのは、平成25年9月5日以降に開始した相続(死亡した時期が平成25年9月5日以降という意味です)です。それ以前については新法が適用される場合とされない場合があります。くわしくは、法務省のホームページに詳しい記載があります。法務省のページのリンクと、法務省のページに掲載されている図を下に貼っておきますのでご参照ください。

■法務省:民法の一部が改正されました(下の図はこのページからの抜粋です)

法務省HP非嫡出子の相続分

認知の方法は3つある

認知の方法は次の3つがあります。

【認知の方法】
① 父が生前に自らの意思でする「任意認知」(民法第779条)
② 調停・審判でする「認知調停」(家事手続法277条)
③ 判決でする「強制認知」(民法第787条)

①の方法は父が生前に父の意思で任意に行うものですから、すでに父が死亡している場合はこの方法は使えません。ですから、すでに父が死亡している場合は②か③の方法となります。

なお、①の具体的方法は、父が役所に対して戸籍上の届出をすることによって行いますが、遺言でもすることができます。父が自分の遺言書に「○○を認知する」と書けば、その後遺言執行者など遺言を実行する方が戸籍上の届出を提出することにより、認知の効果を生じさせることができます。

ところで②③の方法はすでに説明しましたように、父の生前はもとより、すでに父が死亡していても子の側から行うことができる手続きです。死亡後にこれらの手続を行う場合、これを便宜的に「死後認知」と呼ぶこともあります。一般に裁判所を利用して認知をさせる場合は、まず調停を申し立てて、その後に審判、最終的に裁判(判決を得る)という3つの流れとなります。

しかし、死後認知の場合は調停の申立は不要となり、いきなり審判の申立を行うとされています。調停は相手方との合意が成立する余地がある場合に行う手続きですが、父は既に死亡している為その余地はなく、調停は無用とされている為です。認知調停については裁判所のホームページに詳しい解説がありましたのでご参照ください。

■認知調停|裁判所

死後認知のやりかた|具体的な手続き

死後認知を行うには必ず裁判の手続が必要となります。上記した「②調停・審判でする認知調停」「③判決でする強制認知」のどちらの場合も家庭裁判所へ書類を提出することにより行います。

②も③も裁判ですから、代理人(弁護士)を選任して行うことになります。すでに父が死亡している為、生前であれば可能となるはずのDNA鑑定も行えず、父の子であるという事実の証明はかなり難しいものと予想されます。自分で行うことは難しいでしょう。

管轄は父か子の住所地の家庭裁判所

実際に訴状を提出する裁判所、そして裁判が行われる裁判所(管轄と言います)は、亡くなった父の住所地の家庭裁判所か、死後認知を申し立てる子の住所地の家庭裁判所のどちらかです(人訴第4条)。どちらでも構いません。

被告は検察官

原告は認知を求める子です。子が未成年の場合は、母が子を代理して認知の訴えを提起することができます。一方、被告は検察官となります。本来は父とすべきですが、父は既に死亡している為、被告にはなりません。また父の相続人も被告にはなりません。

死後認知は死亡後3年内に限ってできる

死後認知は、父の死亡後3年を経過するとできなくなります。しかし、死亡後3年を経過していても例外的に死後認知の訴えを提起できるケースもあります。具体的には、子が父の死亡を長年知らず(知らされず)、つい最近知ったというようなケースです。過去の裁判例で認められています。

(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。 民法|e-Gov法令検索
【最判昭和57年3月19日】
父の死亡の日から3年以内に認知の訴えを提起しなかったことがやむを得ないものであり、また、右認知の訴えを提起したとしてもその目的を達しえなかった場合には、他に特段の事情がない限り、死後認知の訴えの出訴期間は、父の死亡が客観的に明らかになった時から起算すべきである。

死後認知されても遺産を相続させないようにする方法

これまでの説明をまとめますと以下のようになります。

【まとめ|認知していない子が相続人になるか?】
原則|相続人にはならない
例外|死亡後3年以内に死後認知がされれば相続人になる

それでは次に、死後認知がされても、その子に遺産を相続されないようにするためにはどのような方法があるのかを考察します。

遺言書を作っておく

まずは遺言書を生前に作成しておく方法があります。法的に有効な遺言書が有れば、基本的には遺言書に書いてあるように遺産は相続されますから、もし死亡後に死後認知がされたとしてもその子に財産を相続されるようなことはありません。

しかし、遺言書の内容は、認知していない子には財産を与えないような内容であるため、必然的にその子の遺留分を侵害するものとなります。ですから、死後に他の相続人が遺留分の請求(金銭で支払うことになります)を受ける可能性はあります。

生前贈与しておく

生前に他の子供などに財産を生前贈与しておく方法があります。生前贈与しておけば、死亡時点ではすでに本人の財産ではなくなっているため、相続財産(遺産)とはならず、もし死亡後に死後認知がされたとしても、その子に財産を相続されるようなことはありません。

しかし、生前贈与した財産は「遺留分の計算をするにあたって」は、計算上、遺産の金額に加算することになっているため(民法第1043条)、遺留分の請求を受ける可能性はあります。

(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。民法|e-Gov法令検索

保険に入っておく

生前に保険に加入して、死亡保険金の受取人を他の子供などにしておく方法があります。この方法は相続税の節税方法としてもよく知られた方法です。また、死亡保険金は原則として遺留分の請求の対象とはなりませんので、もし遺留分の請求をされたとしても、その請求額をなるべく低く抑えることができます。

ただし、死亡保険金の金額が保険金以外の遺産の金額にくらべて著しく高額な場合は、遺留分の請求の対象となることもありますので、その点はご注意ください。

相続において認知していない子への対処法

まず、認知していない子がいる場合に、その子が相続人となるかならないかについては一通り理解ができたと思います。その上で、死後認知がされた場合を想定して、上記で解説した生前にできる相続対策を試みたらよろしいのではないでしょうか。もちろん、遺言、生前贈与どちらも当事務所でお取り扱いがあります。

しかし、相続が開始した後に認知していない子が発覚した場合に、他の相続人はどのように対処すべきかは迷うところです。

相続が開始した時点で認知されていないのであれば、そもそもその子は相続人ではないため、父死亡の事実を伝える必要はないと思われます。伝えると、強制認知の手続きの機会を自ら進んで提供しているようなものだからです。

一方で何も連絡をしなければそれでよいのかというと、必ずしもそうとは言えません。上記で説明しましたように死後認知は「死亡を知った時から3年」は手続きできるからです。例えば、死後10年経過してはじめてその子が父の死亡を知った場合、それから3年は死後認知の手続きを行え、それが裁判所で認められれば、金銭の請求をされる可能性もあります。

いずれにしても、このページで解説したような事情があって、どのようにすべきか否か迷ったら、当事務所にご相談ください。自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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このページでは、「【司法書士監修】相続と認知していない子の見逃せない問題とは?」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、相続と認知の問題に関して知っておくべきことを解説しました。

このページで解説した「認知していない子」がいる場合、相続開始前または相続開始後にどのような対応をすれば自分では判断が難しいかもしれません。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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