【相談事例】遺産の相続で戸籍を抜ける|縁切りは可能か?

縁切り
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もともと親子の間の仲が良くない場合、戸籍を抜いたり、縁切りをして、遺産相続の際には一切かかわりたくないという考えの方は多いと思います。

また「戸籍を抜く」「縁切り」は、一般的にも良く使われる言葉で、そのような手続きが法律上あるかどうかを知りたい方も多いでしょう。

このページでは「親と縁切りしたいと思っている子どもの側から、遺産相続において縁切りをすることができるのか?」を相続専門司法書士の立場で考察してみました。

当事務所に寄せられた実際の相談事例をもとにわかりやすく解説します。

【相談】遺産を相続したくないから戸籍を抜ける|縁切りは可能か

次のような相談がありました。

【親の遺産を相続したくないので縁切りしたい】
将来の親の相続で不安です。子供の頃から親との仲が悪く、私が実家を出てから全く連絡をとっていません。
両親の顔を見たり話したりすると精神的に不安定となるため、直接やり取りなどは一切したくありません。
将来親が亡くなり、相続となると私のところへ連絡が来ると思いますが、私は関わりたくないので縁を切りたいと考えています。
法律上そのような方法はあるのでしょうか?

【回答】縁を切る方法はありませんが、代わりの方法ならあります

この相談について次のように回答しました。

【法律上縁を切る方法はありません】
法律上は「縁を切る」方法はありません。物理的に親の戸籍を抜ける方法はいくつかあります。
しかし、そのどれも親との法律上の関係まで切れるものではありません。
ただし、相続で関わりたくないというなら代わりの方法はあります。自分を相続人から外すように遺言を書いてもらったり、または自分から相続放棄をすることで相続手続きに関与せずにすむことができます。

この相談のポイントとは

この相談のポイントは次の通りです。

  1. 「戸籍を抜ける」「縁切り」の方法はあるのか
  2. 親の戸籍を抜ける方法はいくつかある
  3. 遺産相続で、縁切りした親の相続手続きに関与しないで済む方法とは
  4. 自分を相続人から除外する遺言書を作成してもらえば、相続手続きで関与しないで済む
  5. 相続権をはく奪する「廃除」の手続とは
  6. 自分から相続を放棄すれば、相続手続きで関与しないで済む

では順に検討していきたいと思います。

遺産相続で「戸籍を抜ける」「縁切り」の方法はあるか

相談事例のように親子の関係が悪く、親の方から「縁を切りたい」、または子供の方から「縁を切りたい」と考える人は現実にいます。しかし、親子の縁を切る、いわゆる「勘当」は、現在の法制度として存在しません

ただし、もともと養子縁組をしていて、その後養子縁組を離縁によって解消すれば、養親と養子の縁は切れることになります。しかし、実の親と実の子の縁を切る方法は、法律上存在しないのです。

非常に特殊な事例ですが、特別養子縁組に出された子供は、法律上は実の親との縁は切れることになります。特別養子縁組とは一般に行われる縁組とは全く異なるもので、家庭裁判所の審判で行われるものです。教科書的な事例ですから、実際に当事務所で扱ったことはありません。

いずれにしましても、たとえ不仲でお互い一切連絡をとっていなかったとしても、法律上の親子の関係までは切れませんので、相続や扶養義務はそのままの状態という事です。

「縁を切る」というのは日常用語で、法律用語ではないということですね。

親の戸籍を抜ける方法はいくつかある

相談事例では「両親の顔を見たり話したりすると精神的に不安定となる」とありますから、法律上の効果はさておき、親の戸籍を抜けるだけでも心理的には楽になるかもしれません。

親の戸籍を抜ける方法はいくつかあります。代表的なものを解説します。

結婚すれば当然に親の戸籍を抜けることに

結婚すれば、当然に親の戸籍から抜けることになります。しかし、親の戸籍を抜けたからと言って、親との法律上の関係が切れたわけではありません。扶養義務は生じますし、親が亡くなれば相続人にもなります。

他の人の養子になれば親の戸籍を抜ける

他の人を養親として、養子縁組をする方法があります。養子縁組をすれば、親の戸籍を抜けて、養子は養親の名字を名乗り、養親の戸籍に入ることになります。

一般的な養子縁組でしたら、「養子縁組届」を役所に提出するだけです。「養子縁組届」は役所で用紙をもらうことができます。ただし、当事者以外の成年の証人が2人必要となり、「養子縁組届」に署名・押印が必要となります。

養子縁組をすれば、確かに実の親の戸籍から抜けることにはなります。しかし、親の戸籍を抜けたからと言って、実親との法律上の関係が切れたわけではありません。

扶養義務は生じますし、実親が亡くなれば相続人にもなります。この点は、上記でお伝えした、結婚した場合と同じ扱いです。

結婚や縁組が難しければ「分籍」という方法がある

結婚や縁組をしなくても、親の戸籍から抜けることはできます。「分籍」という方法です。分籍とは、それまでの戸籍を抜けて、その人を筆頭者とする単独の戸籍を新たに編成することです。

「分籍」をしたいときは、役所に「分籍届」を提出します。特別の同意や承諾、許可などは一切不要です。「分籍届」は役所で用紙をもらうことができます。新しい本籍は、従前の本籍地とおなじ市町村に定めることもできますし、他の市町村に定めることもできます。

「分籍届」を提出すると、従前の戸籍には次のように記載されます。分籍届が提出された日や、新しく編成した新本籍が記載されます。

【分籍した場合の戸籍の記載例|従前の戸籍】
身分事項
分籍
【分籍日】令和3年3月3日
【送付を受けた日】令和3年3月5日
【受理者】国分寺市長
【新本籍】国分寺市本町二丁目●番地

そして「分籍届」を提出すると、新しい戸籍には次のように記載されます。従前の戸籍やその時の筆頭者(法務太郎)が記載されます。

【分籍した場合の戸籍の記載例|新しい戸籍】
身分事項
分籍
【分籍日】令和3年3月3日
【従前戸籍】東京都千代田区内幸町一丁目●番地 法務太郎

分籍をすれば、確かに実の親の戸籍から抜けることにはなります。しかし、親の戸籍を抜けたからと言って、実親との法律上の関係が切れたわけではありません。

扶養義務は生じますし、実親が亡くなれば相続人にもなります。分籍をしても、何ら身分上の変動は生じません。この点は、上記でお伝えした、結婚した場合や養子縁組した場合と全く同じ結論です。

遺産相続で縁切りした親と関わらないで済む方法

このように、結婚や縁組、分籍をすれば事実上は親の戸籍から抜けることはできます。しかし、すでに説明しましたように、どの方法によっても、法律上の親子関係までは切れないため、特に相続の手続きに際しては、連絡を受け、手続きに協力しなければなりません。

しかし、一定の手続をすれば、もし相続が生じても相続手続きに関与せずに済む方法があります。次にその方法について解説します。

遺言書を作成してもらえば相続手続きに関わらずに済む

相談事例では「両親の顔を見たり話したりすると精神的に不安定となる」とありますから、難しい方法となるかもしれませんが、両親の生前に遺言書を書いてもらうことで、目的は達成できるかもしれません。

具体的には、自分を相続人から除外するような内容の遺言にしてもらうのです。そうすれば相続手続きで署名捺印を求められたり、印鑑証明書を提出したりする必要はなくなります。

ただし、完全に相続手続きに関与させない内容にするためには、遺言の内容を工夫しなければならないので、相続手続きに詳しい専門家のアドバイスが必須となります。遺言の作成については、別のページで詳しく解説しています。

公正証書遺言の作成サポート

親の側からの遺産相続の縁切り|廃除とは

相談事例は、子供の方から縁を切りたいというケースなのであてはまりませんが、親の方から「遺産相続の場面」に限って子供との縁を切る方法はあります。

「廃除」という方法です。ほとんど利用されていないシステムですが、解説します。

廃除とは、家庭裁判所で手続きを行い、相続人が持つ相続権をはく奪するものです。廃除が家庭裁判所で認められるケースは非常に限定的ですが、民法は次のように定めています。

(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。民法|e-Gov法令検索

単純な具体例で言えば、親が子供から虐待を受けていたようなケースで使えるのが「廃除」という制度です。

廃除が認められても親子の縁までは切れないのですが、少なくともその子供を相続人から除外できるため、遺産相続手続きに関してのみ縁切りしたのと同じ効果が生じます。

廃除が裁判所で認められると、戸籍にもその旨が記載されます。なお、廃除は遺言の方法でも行うことができます。民法は次のように定めています。

(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。民法|e-Gov法令検索

具体的には遺言書の中で「○○を廃除する」と書いておくわけですが、実際に廃除の手続を請求するタイミングは相続が開始してからとなります。

しかも遺言執行者が家庭裁判所に請求して行うことになりますが、その時点では「虐待」や「重大な侮辱」の証拠を挙げることは困難となるため、ほとんど利用されていません。

もし廃除の手続をどうしても行いたいと言うのであれば、生前に手続をするのが現実的と思われます。

相続放棄すれば相続手続きに関わらずに済む

相続放棄は相続人から手続きをします。相続放棄は、相続の開始を知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ書類を提出することにより行います。

まだ相続が開始していないのにあらかじめすることは法律上できません。反対に、3か月以内に手続を行わないと、もはや相続放棄はすることができなくなります。

相続放棄が認められますと、相続が開始した時に遡ってはじめからその方は相続人でなかったことになります。債務・借金だけでなく、不動産や預貯金などの財産も全部相続できなくなります。

もし他の相続人から相続手続きの協力を求められても、最終的に裁判所から発行される相続放棄に関する書類を提出すれば、何らの協力をする必要もなくなります。

相談事例で言いますと、子供の側から「遺産相続の場面」に限って親との縁を切る方法が、相続放棄といえるでしょう。相続放棄の詳しい内容は別のページで解説しています。

相続放棄

遺産の相続で縁切りしたい、一体どうすれば…

以上のように実際上「縁切り」「戸籍を抜ける」と言う方法で遺産相続をしないで済む方法は無い、という事はお分かりいただけましたでしょうか。

「縁切り」も「戸籍を抜ける」という言葉も良く使われていますが、法律上の手続には無いという事です。しかし、これらの言葉がよく使われる背景には、このような問題で悩んでいる方がとても多いことがあると思います。

事実上の親子の縁を切ることはできないわけですが、遺産相続の時に限っては「縁切り」をして、「相続しない」あるいは「相続させない」方法もある点を解説しました。

一番利用される方法は相続放棄の方法ですが、この方法が全員にとってより良い方法とは限りません。

いずれにしても、このページで解説したような事情があって、どのようにすべきか迷ったら、当事務所にご相談ください。

自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「【相談事例】遺産の相続で戸籍を抜ける|縁切りは可能か?」と題して、実際に当事務所に寄せられた相談を少しアレンジして紹介・解説しました。同じような問題で困っている方の参考になれば幸いです。

このページでお伝えしたかった内容は次の2点です。

  1. 「縁を切る」「戸籍を抜ける」ことで相続に関わらないことはできない
  2. 遺言や相続放棄をすれば相続にかかわらないことはできる

このような問題の解決方法は、公正証書遺言の作成や相続放棄が一般的ですが、どちらも専門的な内容となりますのでご自分でのお手続きは難しくなる場合があります。

ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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