【相談事例】相続した遺産の家賃収入のトラブルについて

アパート

相続した不動産から家賃収入がある場合、この家賃収入は誰が相続するのでしょうか。この賃貸物件を相続した相続人が独占できるのか、それとも相続人全員で分けるのか。いずれにしてもトラブルになることが予想されます。

家賃収入などの遺産の収益の分け方、また、賃貸物件について遺産を管理している人が支払っている遺産管理費用についても同じようにトラブルが生じやすいところです。当事務所に寄せられた実際の相談事例をもとにわかりやすく解説します。

【相談】相続した遺産の家賃収入をどう分けるか?

次のような相談がありました。

【父の遺産から生ずる不動産賃料でもめています】
父が亡くなり遺産分割協議書はまだ作成していません。相続人は子供3人です。市役所に届けて兄が相続人代表になっています。遺産の中に父が大家になっている賃貸物件があり、毎月賃料が入ります。現在賃料収入の振込先は兄の口座を使っています。そこで質問ですが、この賃料収入については、死亡から正式に遺産分割協議が完了するまでは3人の共有財産という事で正しいでしょうか。また、このまま兄が賃料を他の兄弟に分配せず、保有し続ける場合、他の兄弟はどうすればよいでしょうか?

【回答】相続した遺産の家賃収入は相続人で分割

この相談について次のように回答しました。

【相続した遺産の賃料も相続人全員のもの】
相続した遺産からの収益である賃料収入も広い意味では遺産の1つと考えられます。ですから相続人3人の共有財産となるでしょう。遺産分割も賃料を他の遺産と合わせて行うことが一般的です。そもそも遺産分割協議に応じないというのであれば裁判所へ遺産分割調停を申し立てたり、双方で代理人(弁護士)を立てて話し合うしかないでしょう。

この相談のポイントとは

この相談のポイントは次の通りです。

  1. 遺産から生じた収益も相続人で分けるのか(賃貸物件を相続した人のものでは?)
  2. 賃料を兄が独占して管理していることへの対処法
  3. 兄が遺産を管理していれば賃料以外の収入や管理費用が生じていることも
  4. 賃借人から賃料を供託されてしまうことも

では順に検討していきたいと思います。

遺産から生じた収益も相続人で分けるのか?

相談事例について、相続が開始してからどの程度の期間が経っているのか分かりません。しかし、相続が開始してから実際に遺産の分割がされるまでに時間が経っていれば経っているほど、その間に発生した賃料も相当な金額となっていることが予想されます。

法律上は、このように遺産から生じる賃料を「法定果実」とよび、本来の遺産とは「別の共有財産」として考えています(最判平成17年9月8日)。つまり、「遺産そのもの」ではないという解釈です。遺産であれば遺産分割をすればよいこととなりますが、賃料は「別の共有財産」となり、遺産ではないので遺産分割の話し合いはできないというのが建前です。ただし、賃料を「遺産そのもの」と考えても、「別の共有財産」と考えても、結局相続人3人の財産であることに変わりはありません。

遺産の家賃収入に対してどれだけ権利があるのか

それでは相続した遺産から生じる家賃収入に対して、相続人はどれだけ権利が主張できるのでしょうか。過去の裁判例では「相続分に応じて権利を主張できる(最判平成17年9月8日)」とされています。

ですから、法定相続分か、または遺言で相続分の指定がされていた場合には当該指定相続分を主張できることになります。相談事例では遺言は残されていないようですから、兄弟3人の法定相続分は各3の1ずつとなり、家賃収入に対して3分の1の権利を有することになります。

結局、家賃収入は賃貸物件を相続した人のものではない

いずれにしましても、遺産から生じる収益である家賃収入と、それを発生させる不動産(賃貸物件)は別のものと解釈されるため、賃貸物件を相続した方が当然に家賃収入も単独で相続できるという訳ではありません。

たとえば、相談事例で、今後遺産分割協議が成立し、その中で「賃貸物件は兄が単独で相続する」となっても、相続開始後に発生した賃料まで兄が当然に単独相続することにはならないという事です。分かりやすく言えば「賃貸物件とそこから発生する賃料は紐づいていない」となります。

遺産の収益を兄が独占していることへの対処法

相談事例では、正式な遺産分割協議はまだ行っていないとのことですから、まずはすべての遺産の分け方について話し合うことが先決と思われます。ここで問題となるのが「遺産分割協議の中で賃料収入についても話し合って決定してよいのか」という点です。

なぜこの点が問題かと言いますと、上記で解説しました通り、賃料収入は「遺産そのもの」ではなく「別の共有財産」と解釈されているからです。そうであれば、賃料収入に関することを遺産分割協議で決定しても無効となるはずであり、これを決定するには共有物分割協議などまた別の話し合いをしなければならないはずです。

しかし、このようにすると、遺産分割が終わった後に、賃料収入についてだけ再び分割の手続きをしなければならないことになって非常に煩雑です。そこで、共同相続人全員が賃料収入を遺産分割の対象に含める合意をした場合に限って、その他の遺産と一緒に協議してよいという取り扱いがされています。

遺産分割ができなければ遺産分割調停か弁護士を立てる

相続した遺産について遺産分割の話し合いがまとまらなければ、裁判所への遺産分割調停の申し立てを検討することになります。遺産分割調停においても、相続人全員の合意があれば賃料収入も含めて手続きを進めてもらえます。

しかし、賃料収入に関して遺産分割調停で決定することについて相続人の同意が得られない場合には、その他の本来の相続財産の分割の手続きが遅れてしまうため、原則論に立ち返って、賃料収入は遺産分割調停の対象とはしない形で手続きが進められてしまうこともあります。そうすると、賃料収入の問題を解決するために別に民事裁判を提起する必要があります。

遺産分割調停は裁判所を通じた当事者同士の話し合いの場であるため、必ずしも弁護士に依頼する必要はありません。しかし、これとは異なり民事裁判は裁判のルールを理解した上でなければ行えないものです。もし自分で訴訟を申し立てても、その方法が適切でない場合には、裁判所から「弁護士を選任するように」と言われる場合もあります。

遺産相続では共益費や敷金、管理費用の問題も

相談事例では、兄が一人で賃貸物件を管理しているようですから、賃料以外にも共益費や敷金、礼金、保証金、更新料などの名目で様々な入金があるかもしれません。これらの金額についても賃料収入と同じように考えてよいのか否かは明確な結論はありません。事例ごとに考えていくことになります。

また、不動産を管理するに際しては一定の管理費用も生じます。たとえば、固定資産税などの税金、修理や改築にかかる費用、火災保険料の支払いなどです。これらの遺産管理費用を当然に賃料収入などの遺産の収益から差し引いてよいのか、また、これらを遺産分割協議で話し合って良いのかという問題があります。

遺産管理費用の問題については、賃料収入(遺産収益)と同じ結論で、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議や遺産分割の対象になると解されています。

しかし、そもそもそれらの収入金額が遺産の収益となるのか、または支出額について遺産管理費用になるのかという点は、相続人全員の意見が一致しないことが多く、その解決には困難が伴います。

賃借人から賃料を供託されると面倒

ところで、相続が開始して、その旨を銀行に連絡すると、その銀行口座はは凍結されて預金の引き出しは当然として、その口座への振込もできなくなります。ですから、賃借人に何も知らせることなく賃料振り込みの銀行口座が凍結されてしまうと、賃借人は賃料を振り込めなくなり、場合によっては賃料を供託所(法務局)に供託されてしまう可能性もあります。

賃料を一度供託されてしまうと、法が定めるさまざまな書類を提出しない限り供託所から家賃を引き出せなくなってしまうため、非常に面倒です。

賃貸人に相続が開始しても、その旨を連絡しないと賃借人には分かりません。また、今後の賃料を誰に支払えばよいのかも分かりません。したがって、このようなトラブルを避けるためにも、新しい賃貸人が誰であるかを書いた賃貸人変更通知などを賃借人に送付すべきでしょう。

すぐに遺産分割協議がまとまりそうもない場合には、当面の賃料の振込先を賃借人に連絡したり、賃料振り込みの口座がある銀行には相続開始の連絡をせず、口座の凍結を先送りにするなどの工夫も必要になってくるかもしれません。

相談事例の場合は、賃料の振込先は兄の口座となっているようですから、このような面倒はおこりません。

相続した遺産の家賃収入のトラブルの解決法

まず、相談事例のように相続した財産の遺産分割自体が済んでいない場合には、家賃収入などの遺産収益も他の遺産と同時に遺産分割協議の中で話し合うようにするのがベストです。

ただし、家賃収入の金額が多かったり、遺産管理費用の金額で当事者の主張が食い違う場合には、遺産分割協議の中で解決しようとすると、他の本来の遺産の分割が遅れてしまう危険があり、相続税の納税が必要な場合には納税期限に間に合わないリスクもあります。この場合は遺産収益については他の遺産と切り離して話し合うことも検討しなければならないでしょう。

また、家賃収入などの遺産収益について話し合いがまとまらず、遺産分割調停を利用しようとしても、原則的には遺産収益は遺産分割調停で扱うべき事項とはされていないため、遺産分割調停では解決できないケースもあります。

通常、相続した遺産の話し合いがまとまらない場合とは、遺産の収益だけでなく、それ以外の相続財産についてもまとまらないケースがほとんどです。そのような場合は、はじめから双方で代理人(弁護士)に依頼して、代理人を通した話し合いを行う方が、裁判手続きを利用するよりも安価で迅速に結果が出ることもあります。

相続した遺産の家賃収入、一体どうすれば…

相続した遺産から生じる家賃収入について、すでに相続人同士で争いが生じてしまっているのであれば、裁判の手続を利用して解決する方法が前提となりますが、相続人がそれぞれ代理人(弁護士)を選任して、弁護士を通して和解に向けた話し合いを行うという方法もあります。当事務所には相続問題に強い提携の弁護士がおりますので、このような事案にも対応が可能です。

また、まだ争いにはなっていないのであれば当事務所で直接対応が可能です。例えば、話し合いの前提として客観的な遺産目録の作成ができますし、相続人会議などを開き、法律事項を整理・解説し相続人全員に提示するようなことができます。

いずれにしても、このページで解説したような事情があって、どのようにすべきか迷ったら、当事務所にご相談ください。自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「【相談事例】相続した遺産の家賃収入のトラブルについて」と題して、実際に当事務所に寄せられた相談を少しアレンジして紹介・解説しました。同じような問題で困っている方の参考になれば幸いです。

相続した遺産の家賃収入のトラブルは、当事務所のような相続専門の司法書士事務所で解決できるケースもありますし、弁護士でなければ解決できない場合もあります。当事務所には相続実務に精通している提携の弁護士がいます。

ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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