いま、政府は、所有者不明土地問題の解消に向けた取り組みをはじめています。
所有者不明の土地問題は、2011年の東日本大震災の際に、復興の妨げとなりました。
所有者不明の土地は、2016年で約410万ヘクタール(九州くらい)、2040年には約720万ヘクタール(北海道くらい)になると予想されています。
これによる経済損失額は、2040年までの累計で約6兆円としています。
今回は、所有者不明の土地問題と、これに伴う相続登記の義務化について考えてみます。
相続登記は義務なのか
「所有者不明の土地」となるワケ
そもそもなぜ所有者不明の土地が生じるのでしょうか?
政府は、その理由を「現在の法律では所有権移転登記が義務ではない為だ」としています。
これは相続で権利が移転する場合だけでなく、売買や贈与で権利が移転する場合も同じです。
現行法では、所有権移転登記は義務ではありません。
しかも、期限もありません。
だからこそ、所有者不明の土地が生じる、と言っています。政府が。
「所有者不明の土地」問題解決方法
そこで、現時点において、所有者不明の土地問題を解決する方法として政府が検討している内容を、相続問題・相続手続に関するものだけまとめました。
2.相続登記の申請手続きを簡略化する
3.相続登記未了の土地について登記官に調査権限を与える(通知による警告)
4.死後30年以上経過している土地の相続登記は非課税とする
5.課税標準額20万以下の土地の相続登記は非課税とする
6.登記情報と戸籍情報・マイナンバーを連携させる
7.長期間放置された土地の所有権を放棄する制度を新設する
あくまで検討事項です。
決定事項ではありませんのでご注意を。
ちなみに、上記の根拠は、内閣府法務省民事局の資料「所有者不明土地問題の解消に向けた取組」です。
「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」(座長=山野目章夫早稲田大学大学院教授)の資料・議事要旨も参考にしました。
相続登記の手続が変わる?
相続登記を義務化して、本当に所有者不明の土地が減少するのかは疑問です。
登録免許税を非課税とする等の免税措置を呼び水にしても、あまり意味が無い気もします。
なぜなら、相続登記をせずに放っているのは、経験上、登録免許税が惜しいからではなく、相続登記したくてもできない事情が他にあるからです。
たとえば、相続人の中に認知症の人がいたり、行方不明の方がいたり、相続手続きに絶対に協力しない人がいたりすると、やりたくても相続登記をすることはできません。
また、相続人を戸籍謄本等で調査したところ、数十名となり、断念せざるを得なかったという事例もあります。
もちろん、専門的に言えば、これらの場合であっても方法はあります。
しかし、難しいのです。
難しいからやらない、となるわけですね。
遺産分割に関する詳しい記事はこちらにあります。
結論 相続登記はやるべきか
将来、相続登記が本当に義務化されるかどうかは分かりません。
しかし、義務化されるか否かはさておき、相続手続き専門家の目から見て、やらないデメリットの方が多い気がします。
たとえば、現在、相続登記を申請しないまま2次相続、3次相続が生じた場合、所有者不明の土地を生じさせることになります。
将来、「相続登記の申請手続きが簡略化」されていればよいのかもしれませんが、上記の研究会の資料を読む限りでは、大胆な簡略化は期待できないと思います。
自分が放っておいた相続問題を、子、孫の世代へ押し付けてよいのでしょうか。
「立つ鳥跡を濁さず」と逝きたいものです。
相続登記・報酬に関する詳しい記事はこちらにあります。
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