【司法書士監修】いま相続登記が未了の世帯にも罰則適用か?|相続登記の義務化

いま政府は、相続が開始した際の名義変更(相続登記)を、法律上国民に義務付ける法案の作成準備に入ろうとしています。

今年の3月から法務省による「法制審議会民法・不動産登記法部会(部会長:早稲田大学山野目章夫教授)」の会議がこれまで10回にわたり開催されてきました。令和元年11月19日に開かれた第10回会議では、相続登記の義務化について、さらに話し合いが持たれたようです。

いま相続登記は義務ではないのか?

そもそも現在はどうなのか?を整理する必要があります。現在は、相続登記は義務ではありません。相続登記に限らず、売買や贈与の登記も法律上は何ら義務付けられていません。

しかし、登記を行わないと、所有者が変更したことを、売買や贈与の当事者ではない人(法律上は「第三者」といいます)に主張することができないため、「登記は行わなければならない」というのが暗黙の社会常識となっています。

ところが、相続で所有者が変更しても、一般的には親族に権利が移っただけのケースも多く、第三者と権利を争うことにはならないため、相続登記を行わないで放置しておくことも実際にあります(事の是非は別として)。

ところが、このように相続登記が長期間にわたり放置されると、相続人についてさらなる相続が発生して権利関係がさらに複雑になり、最終的に所有者を特定することができなくなってしまいます。

全国にはこのような所有者不明の土地が多数存在し、東日本大震災の復興事業の妨げとなったり、空き家問題・空き地問題を発生させています。政府は、所有者不明の土地問題を非常に重要視しています。

故人の名義のままというのが法律的に間違っている

そもそも登記簿というものは、不動産に関する権利関係を忠実に公示していなければ意味がありません(不動産登記法第1条)。ですから、現在の法律においても、権利の帰属主体として登記簿に所有者として記録できる者は、権利能力を有する者であることが求められています。

「権利能力を有する者」とは、分かりやすく言えば「実在する者」といったイメージです。ウルトラマンとか仮面ライダーという名前で所有者として登記はできないという事です。

これに反して登記が申請されても、法務局はその申請を却下できます(不動産登記法第25条13号、不動産登記令第20条2号)。もし法務局が間違えて登記をしてしまったときは、職権でその登記を抹消することも可能です(不動産登記法第71条)。

これに対して、いったん所有者として登記をした後に、その所有者が権利能力を失った場合(つまり死亡した場合)には、その状態を是正することが必要ではあるものの、現在の不動産登記法にはこの場合に関する規律が設けられていません。

つまり、登記簿上の所有者が死亡しているということは、現時点ではこの世に存在していない方が所有者として登記されてしまっているとなっている点で、法律的には良くない状態であると言えるのです。

なお、登記ができる権利は所有権だけではなく、抵当権や賃借権、地上権等ありますが、特に所有権は重要な権利でもあり、制度上、虚無人名義の登記を防止する要請が高いとされています。

相続登記の義務化は避けられない

令和元年11月19日に開催された第10回法制審議会の資料は公開されていますから、誰でも簡単にダウンロードをすることができます。

参考までにリンクを貼っておきます。
法務省:法制審議会-民法・不動産登記法部会

この資料を見ても、もはや相続登記の義務化は避けられないと考えます。この議論は、法制審議会で話し合われる前から、「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会(座長:早稲田大学山野目章夫教授)」の場で平成29年から審議されており、細かい点についての意見の対立はあるものの、相続登記を義務化するという1点については一貫性があります。

詳しくは、当事務所の別の記事がありますから、もしよろしければお読みください。
【司法書士監修】相続登記の義務化は罰則規定もあり?

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改正法はいつからスタートするか?

この度審議されている不動産登記制度の改正は、相続登記の義務化だけではありません。その他にも「登記名義人の氏名・住所等の情報の更新を図るための仕組み」「相続以外の登記原因による所有権の移転の登記申請の義務付け」「登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続きの簡略化」「外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策」等々、多くの内容を含んでいます。

現在、法制審議会で審議中ですが、報道によると令和元年以内に最終的に審議の内容をまとめて、法務大臣に答申(報告)するようです。その後、内閣が答申の内容を尊重する形で法案を作成し、パブリックコメントなどを踏まえた上で国会の審議に付す、という流れになると思われます。

令和2年の国会で法案成立、令和3年より施行というスケジュールが最短ですが、改正内容が多方面に渡っていますから、それはむずかしいでしょう。そうなりますと、令和3年の国会で法案成立、令和4年より新制度スタートでしょうか。いずれにしても今後の進展に注目です。

改正法施行時に相続登記が未了のケースにも

令和元年11月19日に開催された第10回法制審議会の資料の中の、「民法・不動産登記法部会資料19」を読んでいて、改めて気になった情報がありました。

それは、新制度がスタートした時点で、すでに相続登記が未了のケースにおいても新制度を適用すべき、と議論されていることです。

新制度がスタートした後に、相続が開始したのであれば、当然に新制度が適用されて、相続登記は義務となります。しかし、それだけではなく、改正法施行時点で、すでに相続登記が未了となっているケースにも新制度を適用し、相続登記の放置は許さない方向で検討しているのです。

もちろん正当な理由があって相続登記が完了していない場合もありますから、経過措置をもうけて、例えば「○年●月から△年▲月までの間に相続登記をして下さい」となり、期間内に相続登記を行えば罰則は適用されない、とすることも検討されています。

参考までに、「民法・不動産登記法部会資料19」の該当部分を下に引用します。

(5) 施行時に所有権の登記名義人が死亡している不動産について

本文の規律を設ける場合には,施行時に所有権の登記名義人が死亡している不動産についても,新たな規律を適用するかどうかが問題となり,第5回会議ではその旨の指摘があった。

まず,施行時に所有権の登記名義人が死亡している不動産についても新たな規律を直ちに適用することが考えられるが,既に数次相続が生じて権利関係が複雑化しているような場合には,登記申請をすることは容易ではないことから,このような場合に直ちに登記申請義務を課すのは酷であるとの指摘が考えられる。

その一方で,施行後に所有権の登記名義人が死亡した場合にのみ新たな規律を適用し,施行時に所有権の登記名義人が死亡している不動産については新たな規律を適用しないとすることも考えられるが,現在,多数存在する相続登記未了状態の不動産について本文の規律が適用されないこととなり,その解消につながらないこととなる。

そこで,施行時に所有権の登記名義人が死亡している不動産については,そもそも施行後一定期間は本文の規律の適用を留保することや,数次相続が発生しているケースについては登記申請をすべき期間をより長期間のものとすることなども考えられる。

このように,施行時に所有権の登記名義人が死亡している事案を念頭にどのような経過措置を設けるかについては,様々な方策があり得ることから,本文(注6)では,引き続き検討する旨を注記している。法務省|法制審議会-民法・不動産登記法部会|資料19

相続登記をしないと罰則があるのか

相続登記を申請すべき義務がある者が、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは罰則を設けるべきではないかとされています。

例えば、不動産登記法は、表示に関する登記(不動産の物理的現況を公示する登記で例えば土地が○㎡であるとか建物が鉄筋コンクリート造であるとか)について、登記を怠った場合は10万円以下の過料に処するとしています(不動産登記法第164条)。

しかし、10万円程度の過料では、相続登記手続に要する費用がこれを上回ってしまい、実効性を欠くのではないかという指摘もされ、この点は引き続き検討課題としています。

正当な理由があれば罰則はない?

「相続が開始したことを知らない」とか「その不動産が遺産だとは知らなかった」という場合は、その相続人には、相続登記の申請義務違反の問題は生じないはずです。

義務違反というのは、自分に義務があることを知りながらそれを行わないことを意味する為、上記のような場合には、そもそも義務違反は生じないものと整理できます。

それでは相続登記が遅れても義務違反とならない正当な理由とは、具体的にどのような理由でしょうか。参考までに、「民法・不動産登記法部会資料19」の該当部分を下に引用します。

「正当な理由」がある場合の例としては,①数次相続が発生して相続人が極めて多数 であることにより,戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要する ときや,②遺言の有効性が争われる訴訟が係属しているとき,③登記申請義務者に重病 等の事情があったとき,④登記簿は存在しているものの,公図が現況と異なるため現地 をおよそ確認することができないときなどが考えられる。

これらの正当な理由について は,明確化の観点から,あらかじめ類型化して(通達等において)明示しておくことが 考えられる。法務省|法制審議会-民法・不動産登記法部会|資料19

正当な理由は、限定的に定められることになると思います。「軽微な土地なので相続登記をやる必然性がない」などは、正当な理由とは呼べないでしょう。いずれにしても、正当な理由が存在しなければ、相続登記はやらざるを得ない、となります。

解決案|いま相続登記が未了だったらどうすれば…

このように、相続登記が義務化の方向へ向けて最終調整されるのは間違いないと感じます。改正法が施行されるのがいつになるかは分かりませんが、現時点で相続登記をまだ行っていないのであれば、新制度がスタートする前に手続を済ませてしまうのも方法の1つです。

ただし、すでに相続登記を放置しているケースにおいては、罰則の適用をしないという法律になることも考えられますから、どちらが最善であるかは断言できません。

正当な理由もなく放置しているようなケースであれば、すぐに相続登記は行うべきでしょう。しかし、上記に引用したような「正当な理由」が存在するなら、もう少し様子を見ても良いでしょう。

いずれにしても、相続登記を放置しているのには何らかの事情があるはずです。その点を改善しないことには問題は棚上げされたままで、子供の世代に無理を押し付ける格好となってしまうことは間違いがありません。

このような相続の問題に強い、相続専門の司法書士等の専門家にまずは一度相談されることをおすすめします。

なお、相続登記とはそもそもどのような手続きなのか、とか、相続登記に必要な書類は何か、相続登記を自分で行うことは可能なのか、等々、よくあるご質問については、別の記事がありますのでもしよろしければお読みください。

【司法書士監修】相続人が知っておくべき相続登記|総まとめ

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このページでは、「いま相続登記が未了の世帯にも罰則適用か?|相続登記の義務化」についてお話ししました。

国は、相続登記を義務化する方向で、最終的な法案作りに着手しようとしています。

すでに相続登記を放置している場合、これからの相続手続や、相続手続きの費用はいくら位かかるのか、どの位の期間で完了するのか、他にも様々な疑問があることと思います。

専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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