【司法書士監修】相続したいらない山の解決法|国庫帰属を含めて
「相続したいらない山が田舎にあるがどうすればよいか?」は、当事務所に多い相談の一つです。あなたも同じ悩みを持っていますか?
令和3年4月21日の国会で「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下相続土地国庫帰属法と言います)が成立しました。令和5年4月27日から運用されています。この法律が冒頭のお悩みを解決するための新たな方法の一つとなります。
このページでは創業20年、地域随一の相続専門の司法書士事務所が「【司法書士監修】相続したいらない山の解決法|国庫帰属を含めて」と題して、今まさに相続問題でお困りのあなたの疑問にお答えします。
このページを見れば『相続したいらない山をどうすれば良いのか』の具体的な対処法について、国庫帰属だけでなく、その他の方法も含めて、これまでの疑問点がスッキリ解決すると思います。
このページは「相続したいらない山(に限らず土地・畑なども)」について様々なサイトを検索・調査し、不安になっているすべての相続人・その家族に向けたものです。ご参考になれば幸いです。
相続したいらない山・土地の解決法は次の中から選ぶ
まずは始めに、結論です。相続したいらない土地の解決法としては次のようなものがあります。
- 相続を放棄する
- 相続した上で自治体に寄付する
- 相続した上で売却する
- 相続した上で相続土地国庫帰属制度を利用する
この中で「1」「2」「3」の方法は以前からある方法ですから大体のイメージはつかめると思いますので、この記事の最後の方で簡単に説明します。このページのはじめの方では、新しい制度「4」の「相続土地国庫帰属制度」について概略を説明します。
これまで相続したいらない土地の解決方法は「1」「2」「3」の3つだけでしたが、あらたに「4」も加わったことにより、相続人の選択肢が増えました。
「相続土地国庫帰属法」は「相続したいらない土地問題」に悩む相続人のためのもの
この法律を単純に言えば「法務大臣の承認を受けたうえで相続した不要な土地を国に放棄する制度」です。
それでは令和3年の国会で成立した「相続土地国庫帰属法」の内容について、相続手続きを専門とする当司法書士事務所が、法律に詳しくない方にも読みやすいように、順に解説していきます。
「相続土地国庫帰属法」は令和5年4月27日から始まっている制度
まず「この新しい制度はいつから始まるのか?」です。
すでに令和5年4月27日から施行されています(令和3年12月14日に閣議決定されました)。そのため現に利用されている方ももちろんいます。実際の運用状況は下で説明します。
いつの時点の相続に適用があるのか
制度が実際に始まるのは、令和5年4月27日からですが、いつの時点の相続にこの法律が適用されるのでしょうか。
相続土地国庫帰属法の中には、特にこの点に関する定めは置かれていません。ですから、この法律が施行された後に生じた相続に適用されるのは当然として、それ以前の相続にも適用があると考えて良いでしょう。
実際法務局のホームページにも「相続土地国庫帰属制度開始前に相続した土地であっても申請することができます」と案内されています。つまり、相続が発生した時期が令和5年4月27日より前であっても、この制度を利用できるという意味です。
「相続土地国庫帰属法」の手続きのイメージ
次のこの手続きを利用する場合の手順です。大まかには次のようになります。
①事前相談(法務局)
この後に説明しますように、この制度はハードルが非常に高いものです。つまり、常に国庫が引き取ってくれるというものではなく、一定の条件を満たす土地のみを引き取ってくれることになっています。
その条件も非常に複雑です。そのため事前の相談が必要になります(事前予約制)。法律で定められているわけではありませんが、実際の制度の運用上、事前相談は必須のものと理解してください。
どこに事前相談するかですが、窓口は放棄したいと思っている不動産の所在地を管轄する法務局の「本局」になります。法務局には支局や出張所もありますが、支局や出張所では相談できません。
たとえば、埼玉県秩父市の山林を放棄したい場合、最寄りの法務局は秩父支局ですが、相談先はさいたま市にあるさいたま地方法務局本局となりますので注意してください。
ただし、土地が遠方で管轄法務局まで出向くことが難しい場合は、近所の法務局の本局で相談することもできます。
しかし、その場合、管轄法務局が相談を受けるわけではありませんから、個別具体的な相談はできない可能性もあります。多少無理をしても管轄の法務局で相談される方がよろしいかと思います。その方が手続きも進めやすいです。
事前相談に持参する資料は、事前予約をしたときに法務局から案内があるかと思いますが、法務省のホームページによると次のようなものを持参するとよいようです。
<資料の具体例>
・登記事項証明書又は登記簿謄本
・法務局で取得した地図又は公図
・法務局で取得した地積測量図
・その他土地の測量図面
・土地の現況・全体が分かる画像又は写真
②承認申請(法務局)
相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限られます)により土地を取得した相続人は、その土地の所有権を国庫に帰属させるように、管轄の法務局に「申請書」を提出します。持参しても郵送しても大丈夫です。
その際、法務局に提出するものは以下の物です。
- 申請書
- 添付書類
- 審査手数料(一筆あたり14,000円)
そして「添付書類」としては次のようなものを添付することになっています。
<自分で新たに作成する書類>
・申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
・申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
・申請に係る土地の形状を明らかにする写真
<用意する書類>
・申請者の印鑑証明書
・固定資産税評価証明書(任意)
・申請土地の境界等に関する資料(あれば)
・申請土地にたどり着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
・その他相談時に提出を求められた資料
「申請書」の書き方などは、法務省のホームページにいわゆる記載例がありますので、リンクを貼っておきます。
③審査
申請をしても常に承認・許可されるわけではありません。国庫に帰属させるためには以下で説明するような厳しい要件をクリアしている必要があります。承認されなかったとしても、申請時に支払った審査手数料(一筆あたり14,000円)は返還されません。
申請を受け付けた法務局は、事例によって法務局所属の職員による現地調査や、申請人・その他の関係者からの事実の聴取、追加資料の提出の請求などをする権限が与えられています。
審査には半年から1年程度の時間がかかります。かなり長期間と言ってよいでしょう。
④負担金の納付
無事に国庫への帰属が承認された場合には、申請者に対し「承認通知」とあわせて「負担金の納付通知」がされます。
負担金とは、国がこの土地を管理するのにかかる費用のことです。土地の管理費用とは、具体的には柵・看板設置費用、草刈、巡回費用などを指します。申請時の審査手数料とは別に納付することになります。
この管理費用は10年分を負担金として納付するように規定されました。宅地や田畑・雑種地・原野は面積に関わらず原則として20万円です。ただし宅地のうち都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の土地は、面積区分に応じた計算式で算定します。
山林は面積区分に応じた計算式で算定します。例えば200㎡であれば793,000円となります。面積が多くなればなるほど多額になります。
この負担金は10年ごとに納めるというものではなく、最初の1回のみ納付するものとなります。
負担金は、納付通知を受けた日から30日以内に納付する必要があります。もし納付しない場合は「承認通知」は当然に失効します。つまり、承認はなかったことになります。
法務省のホームページに負担金額の自動計算シートがありましたので、リンクを貼っておきます。
■相続土地国庫帰属制度の負担金|負担金額の自動計算シート|法務省
⑤国庫帰属
土地の所有権は、申請者が負担金を納付した時点から国庫に移転します。国庫への名義変更ですが、手続きは国が行いますので、申請者側から登記を申請する必要はありません(国が当事者となる登記を「嘱託登記」と言います)。
実際にどれくらい利用されている手続きなのか?|制度の運用状況
2023年4月27日から運用されている相続土地国庫帰属制度ですが、運用開始に先立って2月22日から全国の法務局の本局で相談受付が開始されました。
法務省が発表した令和5年度の相談件数(速報値)と、申請件数(速報値)は以下の通りです。
相談件数 | 申請件数 | |
2・3月 | 1,863件 | ー |
4月 | 2,549件 | 132件 |
5月 | 3,055件 | 214件 |
6月 | 3,035件 | 237件 |
7月 | 1,892件 | 145件 |
8月 | 1,953件 | 157件 |
9月 | 1,855件 | 141件 |
10月 | 1,896件 | 162件 |
11月 | 1,486件 | 162件 |
12月 | 1,238件 | 155件 |
1月 | 1,163件 | 156件 |
実際に承認はされるものなのか?データから読み取れる状況とは…
まず事前相談は活用されていると言ってよいでしょう。事前相談では、内容にもよりますが、要件を満たす土地なのかどうか、承認の見込みがある土地なのか、について一定の結論が得られます。
つまり実質上の「事前審査」と言っても良いのではないでしょうか。つまり、事前相談の時点で「見込みがない」とあきらめた相続人は、その後申請することももちろんないと考えられます。
事前相談で「見込みがある」と判断した相続人が、実際に申請手続きを行うことになります。
では、申請件数の内、国庫帰属が承認された件数はどれほどなのでしょうか。
法務省が発表した統計情報によると、令和5年12月28日時点で、85件とのことです。申請件数は1,505件ですから、そのうち85件のみが承認されたということです。このデータだけを見ると、申請してもほとんど承認されないとも読み取れます。
しかし、実際には審査に非常に時間がかかり、当該時点で審査完了済みの件数は91件というデータも公表されています。ということは91件中、85件は承認されているので、承認率は93%とも言えそうです。
「相続土地国庫帰属法」の手続きを利用するための要件はかなり厳しいものに…
このように、相続を望まない土地(収益も見込めない山)がある相続人にとっては、何としても利用したいと考える手続きではありますが、その要件はかなり厳しいものがあります。
その要件を以下にお伝えしていきますが、最初に大雑把にまとめると、次の一言になります。
- 抵当権もなく、争いなどもなく、建物等もないきれいな土地
理由としては「争いがあるような土地は国で管理できない」からです。
なお前提として、今回の法律で国庫に帰属させることができるのは「土地」だけです。ですから、空き家がある場合は、これを解体して更地にしておくことが前提条件となります(その他具体例は下記でお伝えします)。
それでは法律が定めている具体的な要件を見ていきます。
次の10項目のうちどれか1つでも該当したらダメ
法が定める要件は全部で10項目あります。次にあげる10項目のうち、どれか1つでも該当していたら国庫への帰属は承認されません。かなりハードルは高いと言えるでしょう。
- 建物が存在する土地
- 担保権や用益権が設定されている土地
- 通路など他人によって使用されている土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界不明など権利関係に争いがある土地
- 管理するのに過分の費用・労力を要する崖がある土地
- 車両・樹木・工作物などが地上に存在する土地
- 除去が必要な埋設物が地下に存在する土地
- 隣地所有者と争訟をしなければ使えない土地
- 以上に定めるほか管理するのに過分の費用・労力を要する土地
田、畑、山林も国庫帰属の承認申請は可能
この制度を使って国庫帰属の承認申請ができるのは、「宅地」に限られません。田、畑、山林、雑種地なども承認申請をすることができます。
実際には、相続人からすると、田、畑、山林こそ不要な土地となるため、承認申請もそのような土地について多くなされることが予想されます。山林についても伐採の必要はなく、要件を満たしさえすればそのままの状態で申請が可能です。
また、国庫帰属の承認申請をするときに、農業委員会の許可や、森林法による届け出なども不要です。
空き家や倉庫、車庫、蔵がある土地について国庫帰属の承認申請は不可能
登記されているかどうかを問わず、物理的に「空き家」があれば、国庫帰属の承認申請はできません。「建物が存在する土地」の承認申請はできないとなっているためです。
倉庫、車庫、蔵は建物として登記されている場合もあるかと思いますが、たとえ登記されていなくても「工作物」となるでしょう。そして、「工作物などが地上に存在する土地」の承認申請も認められません。
別荘などの空き家や倉庫、車庫、蔵がある場合は、あらかじめ解体して、更地にした後であれば、国庫帰属の承認申請が可能となります。
売買で取得した土地について国庫帰属の承認申請は不可能
例えば、原野商法により売買で取得した山林については、その人は国庫帰属の承認申請はできません。しかし、その山林をその人から相続した相続人は、国庫帰属の承認申請ができることになります。
ですから、原野商法に騙されてうっかり購入した土地について、その土地の所有者が、この制度を利用して国庫に引き取ってもらおうとしても、それはできません。ところが、その土地の所有者が亡くなった後であれば、相続人から国庫帰属の承認申請ができます。
具体的に言うと、親が原野商法に騙されて購入した土地を、親自身が国庫に引き取ってもらうことはできないけれども、親を相続した子であれば国庫に引き取ってもらうことができる、ということになります。
この制度が使えるのは、「相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地の所有権を取得した」場合に限られるのです。
遺贈で取得した土地については国庫帰属の承認申請できない場合も
故人が遺言書を遺していて、遺言書により不要な土地を相続した場合はどうなるのでしょうか。
結論は次のようになります。
【1】相続人が相続した場合 | 国庫帰属〇 |
【2】相続人以外が相続した場合 | 国庫帰属× |
つまり、遺言書により相続人が不要土地を相続したケースは、通常の相続と同じように、国庫帰属の承認申請が可能です。
これに対して、本来の相続人以外の人が遺言書の内容により不要土地を取得したケース(遺贈)は、国庫帰属の承認申請はできません。
国庫帰属の承認申請は法務局への専門的な手続き
相続土地国庫帰属法による国庫帰属の承認申請の流れや、要件は理解できましたでしょうか。ここまででお伝えしなかった、その他の注意点を4つお伝えします。
境界不明な山林はどうすれば良いのか?
国庫帰属の承認申請をするにあたって事前の測量は必要ありません。ただし、土地の所在・所有権の範囲を示した図面を作成する必要があるため、境界点を示す杭やポール、プレートが設置されていないのであれば、それらをあらためて設置する必要があります。
なお、勝手にこれらを設置することは好ましくありませんので、隣地所有者立ち合いのもとに行うことになるでしょう。もしそうなれば常識的に謝礼を支払うことも考慮すべきでしょう。いずれにしてもこれらの準備に相当な時間はかかりそうです。
国庫帰属の承認申請で、どの程度境界を明確にすればよいのかは事例によって大きく異なると思います。しかし、何も境界標がないと、法務局の職員も現地調査ができませんから、境界標を設置するというのは必須になると思われます。
事前相談をする場合には、法務局の担当相談員に境界標の設置については必ず確認するようにしてください。
共有者の1人から国庫帰属の承認申請はできるのか?
土地を数人で共有している場合は、共有者の全員が共同して国庫帰属の承認申請を行う必要があります。共有者の1名から国庫帰属の承認申請を行うことは認められていません。持分の割合が多い方からのみの承認申請などはできません。
ですから、例えば共有者の中に認知症の方がいる場合には、まず家庭裁判所で成年後見の手続をしてもらい、成年後見人を選任したうえで、その成年後見人と共同で国庫帰属の承認申請をする流れとなるでしょう。
10項目の要件をクリアしているかどうかを誰が判断するのか?
国庫帰属の承認申請を、承認したり却下したりする権限は、法務大臣にあります。しかし、日本に1人しかいない法務大臣がそのような事務を行うことは物理的に不可能です。
そこで、実際には法務大臣から各法務局に国庫帰属の事務は委任される格好で運用されます。つまり、10項目の要件を最終的に判断するのは、各法務局となるのです。
相続登記も法務局がその事務を管轄していますので、これと同じ扱いということです。もちろん、「ある法務局では承認されたのに別の法務局では却下された」という事態が生じないように、制度の運用が進むにつれて統一的な指針も整ってくると思われます。
事前相談で、国庫帰属の対象になるか否か、何をすれば国庫帰属の対象になるか、ある程度は明らかになります。ですから必ず事前相談は受けるようにしてください。
虚偽の申請は損害賠償責任も
上で説明した10項目のどれか一つでも該当したら、申請は承認されないわけですが、それを避けるために、これらに該当することを隠して承認を受けた場合、相続人はどのような責任が問われるのでしょうか。
(中略)いずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じた場合において、当該承認を受けた者が当該事由を知りながら告げずに同項の承認を受けた者であるときは、その者は、国に対してその損害を賠償する責任を負うものとする。相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律|法務省
つまり「聞かれなかったから言わなかっただけ」という言い訳は許されず、上記の10項目に該当する事由があったら申請時に自ら申告しなければなりません。
しかし、上記10項目に該当することを申告すれば認可はされないわけですから、結局、10項目のどれかに該当する場合は申請できないことになります。
結局、虚偽の申請をした場合、国に対して賠償責任を負うだけでなく、一度された承認も取り消されることになります。
国庫帰属後は財務省が土地を管理
無事に国庫帰属が承認された場合、その後は、財務省がその土地を管理します。名義も国に代わりますので、あなたがその土地について何らかの責任を負うことは一切ありません。
なお、農地や山林は農林水産省が管理するようです。
国庫帰属の承認申請は司法書士に依頼できる
国庫帰属の承認申請は、相続人が自ら行うことももちろんできます。しかし、かなり専門的な内容となります。それでは、どの専門家に国庫帰属の承認申請の手続を依頼すればよいのでしょうか。
上でもお伝えしましたように、国庫帰属の承認申請は「法務局」に対して行います。「法務局」に提出する書類の作成は、司法書士に専属する業務ですから、依頼先は司法書士となります。
その中でも、相続を専門に扱っているような司法書士事務所を選択されると宜しいかと思います。ただし、現地調査を伴うことも考えられるので、現地の司法書士事務所を探すとよいでしょう。
相続したいらない土地は「いままで」どうしていたか?
それでは、いままでは相続を希望しない土地がある場合、どのように対処していたのでしょうか。方法は他に3つあります。
- 相続を放棄する
- 相続した上で自治体に寄付する
- 相続した上で売却する
それぞれ順に説明します。
「相続の放棄」は最も使われる方法
故人に遺産がほとんどない場合は、相続を希望しない土地を含めて「相続放棄」の手続きを行うことが多いです。「相続放棄」は、財産の一部だけを放棄することはできない手続きです。
例えば、不要な土地だけ放棄して、残りの遺産を相続することは認められないのです。したがって、どうしても相続したくない土地がある場合には、他の遺産も含めて全部放棄することになります。
相続には法定の順位があるので、最優先順位の相続人が相続放棄をすると、相続権は次の順位の相続人へ移ります。
相続の順位は第三順位まであるので、第一順位から第三順位までの相続人が全員相続放棄をしたら、法律上は「相続人不存在(相続人が誰もいない状態)」になります。この問題点は後述します。
相続放棄するメリットとデメリットは以下の一覧の通りです。
メリット | ・裁判所の手続き費用は安い
・相続人一人で手続きが可能 |
デメリット | ・すべての相続財産を放棄することになってしまう
・原則として相続放棄できるのは死亡を知ってから3か月以内 |
「自治体に寄付する」はあまり使われない
なぜこの方法があまり使われないかというと、現在のところ、ほとんどの自治体関連は不要土地の寄付は受けていないというのが実情です。
もちろん利用価値のある土地であれば自治体も寄付を受けるのかもしれませんが、利用価値のない土地は管理費用ばかり掛かってしまい予算が付かないということなのでしょうか。
ただし、例えば農地であれば自治体の農業委員会に相談すると、農業委員会が仲介人となって、引き取り手を探してくれるということも一部あるようです。ですから、不要な土地については念のため、地元の自治体に相談をしてみるというのは試してみる価値はあると思います。
自治体に寄付するメリットとデメリットは以下の一覧の通りです。
メリット | ・負担金のようなものを支払わないで済む
・地元の自治体に土地を任せられるので安心 |
デメリット | ・寄付を受けてもらえる相手(国や地方公共団体など)を探すのが大変
・寄付を受ける基準が国や地方公共団体等によって異なる |
「売却する」はかなり難しい方法と言える
お伝えした4つの方法の中で、どれが一番理想的かと言えば、こちらの方法です。売るのが一番良い方法と言えます。しかし、売却するというのは実際には困難なことが多いです。
特に手入れのされていない山林の場合には、買主側の立場に立った場合、これを取得するメリットはほとんど考えられないためです。購入してもらえる買主を探すのは難しいですが、その候補としては、近隣の所有者が考えられます。
また、地元の自治体の森林組合に問い合わせて、引き取り手の斡旋をしてもらえないかを確認してみることも良いでしょう。
なお、山林に限らず不要な土地を引き取るサービスを専門にしている不動産会社などもあるようです。このようなサービスにつきましては、契約条件などを良く確認した上でご自分の判断で決めていただきますようお願いします。。
売却するメリットとデメリットは以下の一覧の通りです。
メリット | ・売買代金を得ることができる
・共有者がいる場合でも自分の持分だけ売却も可能 |
デメリット | ・購入してもらえる相手を探すのが困難
・売買のための条件等を交渉する必要がある |
「相続登記をしない」というやり方も現時点では有効
上記以外の方法として、相続を望まない土地については「相続登記をしない」というやり方を使う相続人もいます(最近はあまりいませんが…)。
「相続登記をしない」という選択をしても、法律上は(観念的には)相続しているのですが、「不要な土地について自分が名義人となることを避けたい」という要望も多く、そのような依頼があれば(現時点では)司法書士としては受けざるを得ません。
ちなみに現在の法律では「相続登記をしない」という方法も違法ではありませんが、問題を先に残すことになります。この点は後述します。
「相続放棄」や「相続登記をしない」方法には決定的な問題が
上でお伝えしたように「相続放棄」をしたり「相続登記をしない」という方法を使って相続したくない土地を回避してきたわけですが、この2つの方法には問題があります。
「相続の放棄」は最終的に「相続財産管理人」の問題となる
相続したくない土地がある場合に「相続放棄」は確かに有効な方法です。
しかし、相続には民法という法律で定められた相続順位がありますから、第一順位の相続人が相続放棄すれば、遺産の権利は第二順位の相続人へ移ります。また、第二順位の相続人が相続放棄すれば、遺産の権利は第三順位の相続人へ移ります。
つまり、ここまでは相続したいらない山を次の順位の相続人へ押し付けているようなイメージです。この時点で、相続人間でトラブルが生じる恐れもあります。
そして第三順位までの相続人全員が「相続放棄」すると、相続人が誰もいない状態となります。
相続人が誰もいないのに、遺産(山)だけは残されているわけです。この場合、たとえ相続を放棄したとしてもこの土地の管理責任まで完全には免責されません。
そこで免責を受けるために家庭裁判所に対して「相続財産管理人」の選任手続きを行うわけですが、その際に相続財産を管理するためにかかる費用を「予納金」として納めることが原則として必要となります。
その金額は事例により異なりますが、数10万円から100万円程度まで幅があり、この「予納金」の金額が「相続財産管理人」の手続きをためらわせる要因となっています。
つまり、相続放棄の手続費用をやすく押さえられても、相続財産管理人の費用まで考えるとかなり高額になることがあるのです。
こちらの点につきましては当事務所の別のページで詳しく解説していますのでリンクを貼っておきます。そちらの記事は空き家の事例の解説ですが、基本的には山林であっても同じ問題になります。
*ただ単に相続放棄をした「もと相続人」というだけでは「相続財産管理人(相続財産清算人)」の申し立てが認められない場合もあります。
*その場合は、被相続人の費用(医療費や固定資産税や生活費など)を立て替えていたりすれば、被相続人に対して債権を有する「相続債権者」として法律上の利害関係があると言えますので、申立が認められます。ほとんどの場合、相続人であれば何らかの費用は立て替えていることが多いので、その請求書や領収書はなくさずにとっておきましょう。
【解決事例】相続放棄したら空き家はどうなるのか?(空き家法から読み解く)
「相続登記をしない」は今後は違法となる
「相続土地国庫帰属法」と同じ日に「相続登記を義務付ける法律」が成立、交付されました。
これにより、令和6年4月1日以降に相続登記は義務となり、相続登記をしないことは違法となります。相続登記を行わない場合、最高で10万円以下の過料となります。令和6年4月1日より前に相続が開始して、相続登記がされていないものについても適用があります。
つまり、現時点で相続登記をすませていないのであれば、それは大きなリスクがあると言えます。
こちらの点につきましても当事務所の別のページで詳しく解説していますのでリンクを貼っておきます。
結局、相続したいらない山はどうするべきか?
いらない山や田畑、土地を相続したあなたにとって、これまで説明したどの方法で問題を解決するのか(解決できるのか)は、事例によって異なります。
一般論としては、もし自治体を含めた第三者でよい引き取り手があれば、仮に無償であっても早めに手放すのが一番良い解決法であると提案しています。そのような方法が取れない場合に、相続放棄や相続土地国庫帰属の方法を検討することになります。
しかし、相続放棄には時間的な制限があり、すでに相続放棄はできない状態になっていることも考えられます。もしそうであれば、相続土地国庫帰属制度の利用を検討することになります。
相続土地国庫帰属の申請をするにあたって、もしまだ相続登記をしていなかったとしても、法務局としては申請自体は受け付けるということです。ただし、これも相続登記の義務化がされる令和6年4月までの便宜的な取り扱いと思われます。
ですから、もしすでに相続が開始していながら相続登記の手続きが放置されているものについて、令和6年4月以降に相続土地国庫帰属の申立てを検討している方は、速やかに相続登記を済ませておいた方が良いでしょう。
少なくとも相続登記を済ませておけば、「相続登記を義務付ける法律」が施行されても罰則の適用を受けることはありませんし、速やかに「相続土地国庫帰属法」に基づいて国庫への申請手続きが行えます。
さいごに|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「【司法書士監修】相続したいらない山の解決法|国庫帰属を含めて」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
このページでお伝えしたかったことは次の3点です。
- 令和5年4月27日から「相続したいらない山や土地」を国へ放棄できるようになったこと
- 国へ放棄するための要件は厳しいものであり最低でも20万円以上の負担金がかかること
- 相続登記を放置することは令和6年4月1日以降は違法になること
放置しておいた相続登記を速やかに行うためには専門的な知識が必須となります。個人の力では限界があるかもしれません。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。
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家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
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