【司法書士監修|総まとめ】相続土地国庫帰属ができない土地とは?

2024年3月22日

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令和5年4月27日から施行された新しい法律「相続土地国庫帰属法」。一言で言えば「相続した不要な土地を国へ放棄できる制度」です。

しかし、どのような土地でも国に引き取ってもらえるわけではありません。

国への放棄が認められる土地は非常に限られています。

このページでは、「司法書士監修|総まとめ 相続土地国庫帰属が認められない土地とは?」と題して、創業20年の相続専門の司法書士事務所が、法令やパブリックコメントなどの最新情報をもとに分かりやすく解説します。。

このページを見れば「どんな土地だったら放棄できるのか?」と、制度の利用を検討している相続人皆さんのこれまでの疑問点が解決すると思います。

なお「相続土地国庫帰属法」のキホンが知りたい方は、別のページでお伝えしていますので、そちらもチェックしてみてください。

目次

相続土地国庫帰属ができない土地は全15種類ある

まず、相続土地国庫帰属制度に関する法令は大きく分けて全部で次の3つがあります。

  1. 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(いわゆる「法律」)
  2. 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令(いわゆる「政令」)
  3. 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則(いわゆる「法務省令」)

イメージとしては、制度の骨格となる部分が「法律」で定められていて、もう少し細かい部分が「政令」で、そしてさらに細かい部分が「法務省令」で定められているような構成です。

ですから、この3つを1つのものとして理解して、はじめて実際の内容が分かるような仕組みになっているわけです。

そして、国庫帰属ができない土地は全部で15種類規定されているのですが、「法律」で10種類、「政令」で5種類ずつ定められています(「法務省令」には定めはない)。

それでは、順番に以下でお伝えしていきます。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する「法律」により認められない土地10種はこれだ

まず「法律」により国庫への帰属が認められない10種類を具体例などを交えて順にお伝えします。

根拠となる法律は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」の「第2条第3項1号から5号(ここで5種類)」そして、「第5条第1項1号から5号(残りの5種類)」です。

建物がある土地

  • 廃屋(いまだ建物としての状態を保っているもの)がある場合は、認められない。
  • 廃屋(屋根が崩落する等建物の状態を保っていないもの)がある場合も、認められない。
  • 建物として登記されているかどうかは関係がなく、現況で判断される

担保権や使用収益権が設定されている土地

担保権とは、抵当権や根抵当権などです。使用収益権とは、賃借権などを言います。

  • 登記されていない担保権や使用収益権が設定されている場合も、認められない。
  • 仮差押、仮処分、仮登記、買戻特約、譲渡担保権設定登記などの登記がある場合も、認められない。

通路など他人の利用が予定されている土地

  • 現に通路の用途で利用されている土地は、認められない。
  • 原野や山林の一部に、現に通路として利用されている部分がある場合は、個別の事案ごとに判断される。
  • 「現に」の判定は、法務局職員による現地調査や資料の提供によって判断される。
  • 墓地(墓地埋葬等に関する法律に定めるもの)は、認められない。
  • 境内地(宗教法人の目的のため儀式行事や庭園などとして利用されているもの等)は、認められない。
  • 現に水道用地や用悪水路、ため池として利用されている土地は、認められない。

土壌汚染されている土地(一定の基準を超えるものに限る)

  • 一定の基準とは「土壌汚染対策法施行規則第31条第1項および2項」となる
  • 土壌汚染の原因が土地所有者になかったとしても、国庫帰属は認められない
  • 土壌汚染の有無を申請者においてどこまで調査するかは、はっきりしない

境界不明の土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地

  • 現に境界について争いがなくても、そもそも境界が不明確な場合は、国庫帰属は認められないという考え方がある
  • 所有権界と筆界が一致していない場合は、前提として分筆の登記が必要と考えられている
  • この要件で審査の対象となるのは所有権界であり筆界ではないため、確定測量までは要請されていない
  • この申請がされると法務局から隣地所有者に通知されるが無回答の場合は異議がないものとして取り扱われる

崖がある土地(一定の基準を超えるものに限る)

  • 一定の基準とは「勾配が30度以上で、かつ、その高さが5メートル以上」である
  • 一定の基準を超える崖があっても、認められる可能性はある
  • 一定の基準を超える崖があっても、たとえばそれが崩落しても周辺土地やその住民に悪影響を及ぼさない等、その管理に過分の費用や労力を要しないなら、認められる
  • 平坦地の一部分に一定の基準を超える崖地がある場合、その崖地が、たとえばそれが崩落しても周辺土地やその住民に悪影響を及ぼさない等、その管理に過分の費用や労力を要しないなら、認められる

土地の利用を妨げるような物が「地上」にある土地

  • 土地の通常の管理や処分を妨げるような工作物、車両、樹木、その他の有体物が地上に存在する土地は、認められない

土地の利用を妨げるような物が「地下」にある土地

  • 除去しなければ、土地の通常の管理や処分ができない有体物が地下に存在する土地は、認められない
  • 広大な土地の片隅に配管がある場合、これが土地の通常の管理や処分を妨げないようなものであれば、認められる

隣接土地所有者との争訟によらなければ利用できない土地

  • 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(現に通行が妨げられているものに限る)は、認められない
  • 他の土地に囲まれて公道に通じない土地であっても、現に公道へ通行できるものについては、認められる
  • 隣地から樹木の越境がある土地であっても、簡易迅速に問題が解消できるような、妨害の程度が軽微な土地については、認められる
  • 隣地の樹木や建物の屋根の庇(ひさし)が越境している土地で、隣地所有者との争訟によらなければ通常の使用ができない土地は、認められない

通常の管理や処分に過分な費用・労力がかかる土地

どのような土地が、「通常の管理や処分に過分な費用・労力がかかる土地」と言えるのか、については、別途「政令」に規定がされていますので、以下、「政令」の項目でお伝えします。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する「政令」により認められない土地5つはこれだ

次に「政令」により国庫への帰属が認められない5種類を具体例などを交えて順にお伝えします。

ここでは、法律が定めた「通常の管理や処分に過分な費用・労力がかかる土地」について、より詳しくその内容を規定しています。

根拠となる政令は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令」の「第3条第3項1号から5号」です。

災害が発生、または発生するおそれがある土地

  • 土地の崩壊(土砂崩れなど)、地割れ、陥没、水または汚液の漏出、その他の土地の状況に起因する災害が発生し、または発生するおそれがある土地で、その災害により生命・身体・財産に被害が生じ、または生じるおそれがあり、その被害を防止するために土地の現状に重大な変更措置を講じる必要がある土地は、認められない(つまり「費用が掛かりすぎる」ということ)
  • 単に抽象的な危険性(なんとなく危ないなぁという程度)があるだけの土地は、認められる
  • これらの災害は、その土地だけではなく、周辺の土地(その他の土地の状況から生じたものも含めて判断される

鳥獣・病害虫が生息する土地

  • 鳥獣、病害虫が生息する土地で、これにより周辺での生命・身体・財産に重大な被害が生じ、または生じるおそれがある土地は、認められない
  • 単に抽象的な危険性(なんとなく危ないなぁという程度)があるだけの土地は、認められる(ほとんどすべての山林や原野には鳥獣や病害虫はいるだろうから)

適切な管理をしていない山林

  • 森林として利用されている土地のうち、市町村森林整備計画に定められた事項に適合していないため、追加的に造林、間伐、保育を実施する必要がある土地は、認められない
  • 管理が不十分、または、管理が放棄された山林は、「通常の管理や処分に過分な費用・労力がかかる土地」となり、認められない
  • 適切な造林、間伐、保育を行っていない山林は、「通常の管理や処分に過分な費用・労力がかかる土地」となり、認められない
  • 「適切な造林・間伐・保育」を行っている(行っていた)かどうかは、法務局から林野庁に調査協力を依頼したり、地方公共団体に資料の提供要求をして調査する予定
  • 相続人が山林について適切な管理等を行っていなくても、故人が行っていれば、認められる可能性はある
  • 山林を相続した相続人が当該山林の場所すら把握していないような場合は、そもそも「境界不明の土地」に該当するため、承認申請すらできない可能性もある

国が処分する時に、余計な費用が掛かることが確実な土地

  • 国庫への帰属後、国が処分する際に、通常の管理費用の他に費用が生じることが確実な土地は、認められない
  • 管理費用の定めがある別荘地(リゾート物件など管理費用だけで年間数十万円という物件もある)であっても、国が処分する際に余計な費用が掛からないのであれば、認められる可能性はある(別荘地だから認めないとは言ってない)
  • 土地の管理については費用がかかるところ、それ以外の費用を負担することは、それがわずかなものであっても、認められない
  • 土地改良区内の農地(賦課金がないもの)は、認められる
  • 土地改良区内の農地(近い将来賦課金の支払いが必要となるもの)は、認められない
  • 土地改良区の賦課金がかかる農地であっても、国庫への帰属申請前に弁済していれば、認められる
  • 農用地土壌汚染防止法上の農用地土壌汚染対策地域内の農地は、「通常の管理や処分に過分な費用・労力がかかる土地」ではないため、認められる

国が所有者の債務を承継することになるような土地

  • 承認申請者が所有者として金銭債務を負担する土地で、所有権が国庫に帰属したことに伴い、国が金銭債務を承継することとなる土地は、認められない

その他の土地(農地や原野)の扱いが気になる

  • 「農地」も国庫帰属の承認申請はできる。認められた場合、宅地よりも負担金の金額は安い安い扱いとなる。
  • 「農地」は、必ずしも現に耕作されている農地に限られない。相続したが、相続人らが耕作や草刈り等の管理を行っていない農地も、認められる可能性はある。
  • 故人が原野商法によって購入した「原野」は、上記でお伝えした法律や法令に触れなければ、認められる。「原野」だからといって、基準が厳しくなったり緩くなることはない。

 

国庫帰属の承認申請は、司法書士へ依頼できます

国庫帰属の承認申請は、添付書類を揃えたうえで、申請書を作成し、管轄の法務局へ提出しなければなりません。

国庫帰属の承認申請は、相続人が自ら行うことももちろんできます。ただし、上でお伝えしましたように、かなり専門的な内容になることが予想されます。

「法務局」に提出する書類の作成は、司法書士に専属する業務です。依頼先は司法書士となります。

その中でも、相続を専門に扱っているような司法書士事務所を選択されると宜しいかと思います。

法務省のページに以下のような記述がありましたのでご紹介します。

  • ■申請者ご自身で申請書や添付書類(以下「申請書等」という。)を作成することが難しい場合には、申請書等の作成を代行してもらうことができます
  • ■その場合、業務として申請書等の作成の代行をすることができるのは、専門の資格者である弁護士、司法書士及び行政書士に限られますので御注意ください。
    法務省|相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について

とりあえず相続登記はやっておくべき

いま現に相続した不要な土地がある場合、どうすればよいのでしょうか?

「相続土地国庫帰属法」の利用にあたり、何をしておけばよいのでしょうか。

もしすでに相続が開始していながら相続登記の手続きが放置されているものについては、速やかに相続登記を済ませておくことをお勧めします。

なぜなら、令和6年4月1日より相続登記が義務化されるからです。もし相続登記が放置されている場合、最高で10万円の罰金(正確には過料)の対象となります。

相続登記さえ済ませておけば、「相続登記を義務付ける法律」が施行されても罰則の適用を受けることはありませんし、速やかに「相続土地国庫帰属法」に基づいて国庫への申請手続きが行えます。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

さいごに|いまなら無料相談が受けられます

私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「司法書士監修|総まとめ 相続土地国庫帰属が認められない土地とは?」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。

このページでお伝えしたかったことは次の3点です。

  • 令和5年4月27日から「相続したいらない土地」を国へ放棄できるようになったこと
  • 国への放棄が認められない土地は15種類もあるので要注意
  • 「相続登記」も「国庫帰属の承認申請」も司法書士に依頼できること

放置しておいた相続登記を速やかに行うためには専門的な知識が必須となります。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。また相続問題に強い提携の税理士や弁護士もおりますので、全方向の対応が可能です。

いまなら毎週土曜日に面談(対面・非対面)による無料相談を実施しています。また無料相談は平日も随時実施しています。
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