【司法書士監修】遺言執行者に選任されているが別の者に交代してもらえるか?辞任も解説

故人が遺した遺言書の中で、私自身が遺言執行者に選任されている場合、別の者に交代してもらうことは法律上できるのでしょうか?

遺言執行者の任務を行うための時間がない、荷が重すぎるなどの理由で、「他の人に代わってもらいたい」と考える人は多いです。

今回は、遺言執行者の地位や義務、交替の可否、辞任の手続きなどについても解説します。

遺言執行者とは何か?(地位や義務)

遺言は故人が生前に書面で作成するものです。そして、その効力は死亡と同時に発生します(民法985条)。

遺言書に書いてある内容を実現しようとしても、遺言が効力を生じる時点では遺言者はすでに死亡している訳ですから、いったい誰が遺言の内容を具現化するのかが問題となります。

そこで、遺言の内容を遺言者本人に代わって実現する職務を行うのが遺言執行者となります。

具体的に何を行うのかについてですが、遺言内容の確認、相続財産の保全、管理等、遺言の内容に応じて単純なものから複雑なものまで様々です。

また、遺言により利益を受ける人と不利益を受ける人が明確な場合は、相続人同士の紛争に巻き込まれ、訴訟の原告や被告になったりすることもあります。

さらに、遺言執行者には法律上いくつかの義務があります。例えば、遺産の管理義務(民法1012条)や、相続人への通知義務(民法1017条)、財産目録調整義務(民法1011条)などです。

親族が遺言執行者となっている場合、これらの義務を軽んじて認識されている方が多く、実際には義務を履行していないケースが多くあります。

しかし、遺言執行者が法律上の義務を怠り、相続人に不利益を与えた場合には、相続人から賠償請求される可能性もありますし、これを認める裁判例もあります。

遺言執行者の復任権(改正相続法)

遺言書で私自身を遺言執行者に指定していても、当然に遺言執行者に就任しなければならないというものではありません。

遺言執行者への就任を承諾するか否かは、私自身が自由に決めることができます。しかし、実際によくあるのは、うっかり就任を承諾した後に、上記に揚げたような重い義務や責任に気付くというケースです。

では、遺言執行者を他の人に交代してもらえるかという話になるわけですが、できます。

包括的にお願いしてしまうパターン

私自身の遺言執行者の職務を包括的に他人(例えば弁護士や司法書士などの専門家など)に委ねること(復任権と言います)は法律上認められます。この点は令和1年7月1より以下の改正法が適用になります。

【民法1016条1項】
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

改正前は「やむを得ない事由」がある場合に限って、復任が可能でした。それが、改正後は「やむを得ない事由」がなくても、遺言執行者の責任・裁量で復任することができるようになりました。

復任するにあたって、相続人や受遺者の同意は一切不要です。

個々の行為だけをお願いするパターン

遺言執行者である私自身が、例えば預貯金の手続きだけ、登記手続きだけ、訴訟行為だけなど、個別の具体的な行為だけを第三者に委ねることも可能です。

親族間で争いが無いケースでは、個別のケースだけ委任を受けることが多いのが実情です。もちろんこの場合も、相続人や受遺者の同意は不要です。

遺言執行者を免責されるわけではない

上記のように、遺言執行の職務を第三者に代わってもらうことはできますが、私自身が遺言執行者を免責されるのではなく、その意味では厳密には交代ではありません。

第三者に職務を交代してもらっても、私自身は依然として遺言執行者のままです。そして、交代してもらった第三者の職務の行い方に非がある場合は、これを選んだ私自身の責任を相続人から問われる可能性があります。

【民法1016条2項】
前条本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

遺言執行者の辞任

以上のように考えると、いっそのこと遺言執行者を辞任することはできないか?となります。結論から述べますと、一度遺言執行者への就任承諾をした以上は、簡単にやめることはできません

遺言執行者を辞任するには理由が必要

遺言執行者が辞任をするには、「正当な事由」が必要です。

【民法1019条2項】
遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

認められる理由・認められない理由

それでは、「正当な事由」としてどのような事由が認められて、反対に認められないのでしょうか。実際には、個々のケースで裁判所が判断しますが、一般論としては次のようになります。

まず、長期の病気、長期の出張、多忙な職務などの個人的事情は「正当な事由」として認められることが多いようです。

しかし、執行意欲の喪失(やる気がなくなった)は、「正当な事由」として認められない可能性があります。ただし、その理由が、「相続人との調整に失敗し、ために公正な遺言の執行が全く期待できなくなった場合等には積極に解してもよい(新版遺言執行の法律と実務:第一弁護士会・司法研究委員会編:ぎょうせい)」との見解もあり、どちらとも言えません。

辞任の手続き

相続開始地を管轄する家庭裁判所へ、辞任許可の申立て手続きを行う必要があります。家庭裁判所が調査の結果、申立てを相当と認めれば、「辞任許可審判書」が出て、辞任の手続き終了です。

これにより誰も遺言執行者がいなくなりますので、必要であれば、相続人その他の利害関係により新たな遺言執行者の選任を家庭裁判所へ申し立てることになります(民法1010条)。

【民法1010条】
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。

就任前に辞退することはできるか?

このように、一度遺言執行者に就任した後の辞任手続きは非常に面倒です。

しかし、遺言書で遺言執行者に選任されていたとしても、私自身がそれを承諾していなければ、その時点ではまだ遺言執行者ではありません。

ですから、遺言執行者の就任承諾前に辞退することは自由にできます。先に揚げたように、就任するもしないも私自身の自由だからです。就任の辞退をするために「正当な事由」も「家庭裁判所の許可」も必要ありません。

就任の辞退について特別な形式・様式はありません。しかし、後々のトラブルを避けるために一般的には書面により相続人全員に辞退の旨を通知することがよいとされています。

解決案の提示

遺言執行者の交代は、辞任を含めた交代なのか、単なる業務の代行を頼むのか、によってその意味合いや手続きが変わってきます。

また、遺言書に遺言執行者として自分の名前が書かれているだけで、まだ遺言執行者に就任していないというケースは、辞退通知を出せば問題は解決することになります。

しかし、辞任を含めた交代であれば、裁判所への許可申請が必要となりますし、単なる業務の代行であればどの専門家に頼むべきなのかが問題になります。

さらに、辞退通知も適式に行っておくことが望ましいでしょう。

いずれにしても、このような問題に強い、相続手続きに特化した司法書士に相談されることをおすすめします。

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「遺言執行者に選任されているが別の者に交代してもらえるか?」についてお話ししました。

単に交代といっても色々なケースがあることはお分かりいただけたでしょうか。

遺言の手続や、遺言執行の手続きをこれから始めるにはどうすればよいのか、費用はいくら位かかるのか、どの位の期間で完了するのか、様々な疑問があることと思います。

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