【司法書士監修】法改正で遺産分割に期限ができたのは本当か?

期限が迫る男
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「遺産分割協議をまだやっていないが改正法で期限ができたのは本当か?」最近、当事務所に多い相談の一つです。あなたも同じ悩みを持っていますか?

令和3年4月21日の国会で「民法等の一部を改正する法律(以下「改正法」)」が成立しました。

このページでは、創業20年の相続手続き専門司法書士が、遺産分割の期限に関する法律の改正情報を、実際の条文に基づき、できるだけ正確にお伝えします。

「遺産分割協議に期限ができた」…訳ではない

まず結論をお伝えすると、今回の法律の改正によって遺産分割協議に期限ができた訳ではありません

ですから、遺産分割協議そのものは、故人が亡くなってから10年たっても、20年たっても可能です。

たとえば、もしすでに相続が開始していてまだ遺産分割協議をしていなかったとしても、今回の改正法が施行された後に遺産分割協議をすること自体は、何ら法律違反ということもなく認められます。

「遺産分割協議に期限ができた」というネット情報を見たが…

現時点では「遺産分割協議に期限ができた」という情報は誤りです。しかし正式に改正法が公布される前はそのような情報があったのも事実です。

法律の改正というものは、短期間にできるものではありません。今回の改正法も、数年前から有識者による会議が継続的に行われ、改正法の前段階ともいえる「中間試案」が作成されていました。

「中間試案」の中では複数の案が提案され、「遺産分割協議に期限をもうけるべき」との案もあったのですが、最終的には採択されず、下記にお伝えするような案が採用されました。

ですから「遺産分割協議に期限ができた」という情報は、「中間試案」の情報であって、最終的に国会で成立し公布された改正法の内容とは違います。

「中間試案」の情報は、新聞報道までされてしまったため、いまでもネット検索をすると「遺産分割協議に期限ができた」という誤った情報が放置されているのを見つけることができます。

「特別受益と寄与分の主張に期限ができた」が正解

「遺産分割協議に期限ができたわけではない」とすると、改正法により、一体何の期限が設けられたのでしょうか?

こちらも結論からお伝えすると、「特別受益と寄与分の主張に期限ができた」というのが正解です。

特別受益とは、生前に故人から特別の贈与などを受けていた場合の話で、その分、今回相続できる遺産は少なくなりますよという制度です。民法903条です。
寄与分とは、生前に故人の事業や療養看護について特別の働きをした人がいた場合の話で、その分、今回の相続では多くもらえますよという制度です。民法904条の2です。

特別受益も寄与分も、相続人が主張してはじめて本来の相続分より多くなったり、少なくなったりするものです。これまでは、特別受益や寄与分を主張できる時期について期限はありませんでした。

今回の改正法は、特別受益と寄与分を主張できる時期について明確な期限を設けました。

期限は「死亡から10年」となった

遺産分割の中で特別受益や寄与分が主張できる期限は、「相続開始の時(死亡の時)から10年」となりました。「自己のために相続の開始があったことを知った時から10年」ではありませんので注意が必要です。

相続手続の中に「相続放棄」がありますが、こちらの期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時」が起算点になっています(民法第915条)。

特別受益や寄与分の期限もこれと同じくする案もあったのですが、起算点が画一的に定まらないこととなり、結果として期限を設ける意義が大きく損なわれるということで採用されませんでした。

「相続開始の時」とは、一般的には戸籍に記載された死亡の日ですから、客観的にも明らかな起算点と言えます。

改正民法第904条の3とは

では、実際に改正(新たに設けられた)された民法の条文を見てみましょう。

(期間経過後の遺産の分割における相続分)
第904条の3 前3条の規定(著者註*特別受益と寄与分の規定のこと)は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
①相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき
②省略民法等の一部を改正する法律案|法務省

期限後の遺産分割は結局どう行われるのか?

それでは、特別受益・寄与分の主張ができる期限が経過した場合、その後の遺産分割はどのように行われるべきなのでしょうか。

法律上は、特別受益・寄与分の主張は不可能となるわけですから、法定相続分通りに分割するしかないのでしょうか。そんなことはありません。遺産分割協議は相続人の合意によって行われるべきものですから、相続人全員の合意さえあれば、必ずしも法定相続分通りにする必要はありません。

このことは、期限前も期限が経過した後も同様です。しかし、相続人全員の合意が揃わずに、裁判(遺産分割調停・遺産分割審判)となった場合には、もはや期限後は特別受益・寄与分は主張することはできなくなっているため、結局は法定相続分通りに相続するしか方法はないということはあります。

寄与分は「見通しの悪い制度」とも言われ、裁判所で主張してもその通りに認められることは少ないです。

寄与分については別のページで詳しい情報をお伝えしています。よろしければそちらもご参照ください。

【司法書士監修】寄与分はいくら?|高齢者を療養看護した場合

【司法書士監修】寄与分はいくら?|高齢者を療養看護した場合

「特別受益と寄与分の期限の制度」は2年内に始まる

次に「この新しい制度はいつから始まるのか?」です。

法律は令和3年4月21日に成立し、4月28日に公布されましたが、すぐにこの制度が始まるわけではありません。この法律の中に「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とあります。

つまり、具体的にいつから始まるかは現時点ではわかりませんが、2年内に始まるということは確かです。

おそらく令和5年の4月ごろではないかと予想しています。

昔の相続にも適用されるのか?

制度が実際に始まるのは2年内ですから、遅くとも令和5年度までには開始するということですが、いつの時点の相続にこの法律が適用されるのでしょうか。

この点について法律は「施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する(附則第3条)」としています。

ですから、この法律が施行された後に生じた相続に適用されるのは当然として、それ以前の古い相続にも遡って適用があります。

この場合、問題は「すでに死亡から10年経過している相続についてはもはや特別受益・寄与分の主張はできないのか?」という点です。次の項目で詳しく解説します。

昔の相続でも5年間は特別受益・寄与分の主張可能|経過措置あり

「すでに死亡から10年経過している相続についてはもはや特別受益・寄与分の主張はできないのか?」という問題ですが、もし「できない」とすると国民にとって不意打ちとなってしまいます。

そこで経過措置(救済制度)が設けられました。具体例で見てみましょう。

遺産の分割に関する経過措置

平成11年に相続が開始して、まだ遺産分割がされていない場合も、今回の新制度は適用されます。その結果、相続人が特別受益・寄与分を主張できるのは、平成21年までとなります。

仮に改正法が令和5年からスタートするとして、その時点ですでに特別受益・寄与分を主張できる10年が経過しているため、その後の遺産分割ではもはや特別受益・寄与分は主張できないことになりそうです。

しかし、経過措置により、この場合であっても改正法施行の時から5年を経過するまでは(つまり令和10年まで)、特別受益・寄与分の主張ができます。

注意すべきは、この場合の遺産分割は必ず裁判(遺産分割調停・遺産分割審判)によらなければならないということです(附則第3条)。もっとも長期間遺産分割が放置されていたということは、そもそも話し合いでは解決できなかったケースがほとんどであるため、当然とも思える規定です。

(附則)
第3条 新民法第904条の3(中略)の規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第904条の3第1号中「相続開始の時から10年を経過する前」とあるのは、「相続開始の時から10年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から5年を経過する時のいずれか遅い時まで」(中略)とする。民法等の一部を改正する法律案|法務省

遺産分割を促進したいのが国の狙い

そもそも国は、なぜこのような規定を新しく設ける改正をしたのでしょうか?

現在の民法では、相続人が複数いる場合には、相続の開始により遺産が相続人の共有となります。そしてその後に遺産分割がされることが想定されています。

この想定の通りに遺産分割がされて、その旨の相続登記がされれば、所有者が不明の土地の発生は抑えられます。しかし、実際には相続が開始しても特段の協議がされず、放置されていることも少なくなく、このことが所有者が分からない土地の発生の要因の一つであると考えられています。

所有者の分からない土地が多数あることにより、東日本大震災の復興が大幅に遅れてしまったことは記憶に新しいところです。

そこで遺産分割において相続人にメリットのある「特別受益・寄与分」を主張できる期限を設けることにより、遺産分割を促進して遺産の共有状態を速やかに解消する改正法を創設したと説明されています。

いま遺産分割をしていない人はどうすればよいか?

すでに相続が開始していて、遺産分割をしていない場合、どうすればよいのでしょうか?

上にお伝えした制度が施行されるのは、2年内ですが、それまでに何をしておけばよいのでしょうか。

相続人が協議に応じないという理由で遺産分割が終わっていないのであれば、あと2年待っても結論は同じですから、裁判(遺産分割調停・遺産分割審判)の手続を速やかに検討しましょう。その裁判の中で特別受益や寄与分の主張をすることが可能です。

また、注意しなければならないのは、すでに開始している相続で、相続登記がされていないものについては、今後相続登記が義務化されることにより、最高で10万円の罰金(正確には過料)の対象となる点です。

ですから、もしすでに相続が開始していながら相続登記の手続きが放置されているものについては、速やかに相続登記を済ませておくことが必要です。

相続登記を済ませておけば、「相続登記が義務化」されても罰則の適用を受けることはありません。

「相続登記をしない」は今後は違法となる

上にお伝えした遺産分割の改正と同時に、3年内に相続登記は義務化されることとなりました。今後相続登記をしないことは違法となります。相続登記を行わない場合、最高で10万円以下の過料となります。

こちらの点につきましても当事務所の別のページで詳しく解説していますのでリンクを貼っておきます。

相続登記の義務化の法案が成立【相続専門司法書士監修】

相続登記の義務化の法案が成立【相続専門司法書士監修】

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「【司法書士監修】法改正で遺産分割に期限ができたのは本当か?」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。

このページでお伝えしたかったことは次の2点です。

  • 遺産分割に期限ができたわけではない
  • 遺産分割の中で特別受益や寄与分を主張できるのは、死亡から10年内となった

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