自筆証書遺言の保管制度と公正証書遺言はどちらがいいのか比較してみた

40年ぶりの相続法改正。従来の規定が変更されたり、新しい制度が創設されたりしました。なかでも、「自筆証書遺言の保管制度」は注目を集めている新設制度です。

自筆証書遺言の保管制度の詳しい記事は、依然こちらに記事にしています。もしよろしければこちらもあわせてお読みください。

相続法の改正|自筆遺言書の保管制度の創設

自筆証書遺言書の保管制度は、法務局が保管するので安全性はとても高いです。今回は、同じく安全性が高いとされる公正証書遺言書と比較して、結局どちらによるべきか?を考察してみたいと思います。

自筆証書遺言の保管制度 VS 公正証書遺言書

では、色々な項目を比較してみることにしましょう。

1、費用

これが一番気になりますよね。公正証書遺言書を公証役場で作成する場合、公証人に支払うべき手数料はいくらでしょうか。こちらに詳しい記事を書いています。

公正証書で遺言書を作るといくらかかるか計算してみた

財産(遺産)の金額によって変動しますが、財産1億円で約60000円程度です。しかし、この金額は本人が自分で公証人に頼んだ場合の金額です。司法書士や弁護士にサポートを依頼した場合は、その報酬も要しますので、実際にはもう少しかかるでしょう。

では、自筆証書遺言の保管制度は、遺言書を保管する法務局に手数料を払うことになります。ではその手数料はいくらでしょうか?

実はまだ保管手数料についての定めは決定していません。ウワサでは数千円ではないかと言われていますが、詳細が決定しましたら記事にしたいと思いますので、是非新着記事をチェックして下さい。

いずれにしても、保管料が数万円という事は考えにくいので、金額で比較すれば自筆証書遺言の保管制度に軍配が上がります。

2、手間

公正証書遺言書は公証役場で公証人に作成してもらいます。事前に用意すべき書類もありますし、事前に公証人と打合せをする必要があります。また、証人2名以上を立ち会わせなければならないので、かなりの手間と言えるでしょう。

これに対して、自筆証書遺言の保管制度ですが、自ら作成したい自筆の遺言書を法務局に持ち込むだけです。ただし、申請書を作成して、申請書の添付書類と本人確認書類が必要です。そう考えると、これらは事前に用意すべきであるので、手間いらずとまでは言えないでしょう。

しかし、証人の立会は不要ですから、自筆証書遺言の保管制度に軍配が上がりそうです。

3、本人が出向けない場合

公正証書遺言は公証役場で作成するのが原則です。しかし、本人が病気等の事情で公証役場に出向くことができない場合は、出張料を支払ったうえで公証人に出張してもらうことができます。

これに対して、自筆証書遺言の保管制度では、必ず本人が法務局に出向く必要があります。本人が出向くことができない場合に、法務局の担当者に出張してもらうことはできません。また、代理人に預けて法務局に保管することも出来ません。

この点は、公正証書遺言書に軍配が上がります。

4、場所

公正証書遺言書は、公証役場で作成する遺言書ですが、どの公証役場で作成しても構いません。

これに対して、自筆証書遺言の保管制度は法務局に遺言書を預けるわけですが、預けることができる法務局には決まりがあります。次の3つから選択できます。

  1. 遺言者の住所地を管轄する法務局
  2. 遺言者の本籍地を管轄する法務局
  3. 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局

通常は、「1」でしょう。ところで公正証書遺言書もわざわざ遠くの公証役場で作成することはないと思いますから、この点は引き分けとなりますね。

5、安全性

公正証書遺言書は公証役場で保管します。自筆証書遺言の保管制度は法務局で保管します。どちらも安全ですね。この点も引き分けですね。

6、検索システム

公正証書遺言書は、平成元年以降に作成されたものであれば、遺言者が死亡した後、一定の者から、遺言検索システムによって、その存否等の照会が可能です。

これに対して、自筆証書遺言の保管制度も、遺言者の死亡後に「遺言書情報証明書」の交付請求ができます。これは実際に遺言書を預けている法務局以外の法務局に対しても交付請求ができるとなっているので、法務局が保管している遺言書情報はオンラインで共有されているのでしょう。

ということは、この点も引き分けと言えますね。

7、検認

公正証書遺言書は、遺言者の死亡後に検認手続きを行うことは不要です。これは、自筆証書遺言の保管制度も同じです。この点も引き分けですね。

8、紛争の防止

自筆証書遺言の保管制度は、自筆証書遺言書を単に保管するための制度でしかなく、自筆証書遺言書の内容の正確性や、遺言者の遺言能力を担保するものではありません。したがって、これらの点に関して後日紛争が生じる可能性は否定できません。

それに対して公正証書遺言書は、公証人との事前打合せにより公証人が作成すること、証人の立会が必要な事(その後の証言も得られやすい)など総合的に見ると、かなりの確率で紛争の防止に役立つとみていいでしょう。

しかし、公正証書遺言が完全なものかというと、本人の遺言能力について争われた裁判例もありますから、鉄壁とは言えないでしょう。

ですが、一般論として言えば、やはり軍配は公正証書遺言書に挙がるとみてよいでしょう。

相続手続きの専門家から見た結論

自筆証書遺言の保管制度が始まるのは、平成32年7月10日からです。ですから、より安心な遺言書を求めるのであれば、現時点では公正証書遺言書の一択です。

しかし、保管制度が始まれば、自筆証書遺言の保管制度の利用も視野に入れるべきと言えます。

個人的には、次のやりかたがベストだと思います。

1、自筆の遺言書内容を、専門家にチェックしてもらう
2、その上で自筆証書遺言の保管制度を利用する

ただし、自筆の遺言書なのに、あまりに専門的かつ高度な内容であると「本当に本人の意志によって書かれたものなのか?」とあらぬ疑いをかけれれる可能性もあり、この点は裁判の実例など今後の展開を見守るしかないでしょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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