相続法の改正|自筆遺言書の保管制度の創設

9月6日に発生した、北海道胆振東部地震の被害に見舞われた方々には謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い再建を心よりお祈りいたします。

さて、今年の7月6日に、約40年ぶりとなる相続法大改正の法案が可決されました。大改正と呼ばれているのは決して大げさではなく、その改正・新設項目は多岐に渡っています。

今回は、「自筆遺言証書の保管制度の創設」について取り上げます。まずこの制度は、新たに設けられた制度で、今までになかったものです。

簡単に言えば、自筆証書遺言(自分で手書きで書いた遺言書)を法務局に預けるという制度です。

法務局も手間が増えて大変だな、と人ごとのように思うのですが、利用者からすれば大変便利な制度になりそうです。

現在の法律上、自筆証書遺言の最大の欠点は、

1、遺言を書いた人の意思確認をする人がいない

2、保管場所・保管者の定めがない

3、偽造・変造・隠匿のおそれがある

があげられます。これらの欠点を補う役目を果たすのが、今回新設された保管制度です。保管制度のポイントをあげてみましょう。

自筆遺言書の保管制度のポイント

どこに預けるか

自筆遺言書の作成者は、次の3つの中から選択できます。

  1. 遺言者の住所地を管轄する法務局
  2. 遺言者の本籍地を管轄する法務局
  3. 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局

法務局は日本全国にありますからね。どこでもいいというわけではありません。
この管轄の規定、どこかで見覚えがあると思ったら、「法定相続証明情報」と同じですね。

法務局が保管するなら、遺言書の隠匿・偽造・変造という問題は解決できそうです。

ただし、「保管した」という事実を遺言者以外の人が知っていなければ、保管された遺言書は誰にも発見されずに終わってしまいます。この点は、解決できていません。

近い将来、役所の戸籍データと紐づけされることもあるでしょう。そうなれば、役所に死亡届出をすることにより、相続人や受遺者に遺言保管の旨が法務局から通知される、となりそうです(予想)。

誰が預けるか

遺言書を作成した本人が預けます。本人確認を法務局の窓口で行うようです。本人確認の作業は、我々司法書士でも苦労することが多いのに、大丈夫なのでしょうか。

代理人が行うことはできません。ですから、入院・療養中の方は、この制度の利用は困難と思われます。外出が困難な方は、これまで通り、公証人に出張してもらう形で公正証書遺言を作成することになりそうです。

遺言書には封をしない

遺言書に形式的な不備がないか、という点まで法務局が確認するようです。至れり尽くせりですね。日付、氏名、押印もれを指摘してもらえるとはありがたいですね。

形式的に内容を確認して貰うために封をしてはいけません。遺言書を封筒に入れるのはいいとして、封がされていては中身を確認できませんからね。

実質的な内容の審査まではしないはずなので、遺言の内容が遺留分に反しているか否か等、法律的な問題が生じそうな条項については、これまでどおり司法書士等のアドバイスを受けるべきでしょう。

実質的な審査はしないというのは、公正証書遺言でも同じですが…。

保管の費用はいくら?

今後、政令で定められるとのことです。

「法定相続証明情報」は無料でしたが、保管制度は無料とはなりません。法務局側からすると大変な手間ですからね。しかし、なるべく安くしてほしいものです。

検認手続きが不要

法務局で保管している自筆証書遺言については、裁判所による検認手続きは不要となります。

保管の費用がどれくらいかかるのかは分かりませんが、検認にかかる手間と費用を節約する目的で保管制度を使うこともアリかもしれませんね。

いつから制度がスタートするのか

平成32年7月10日からです。スタートするまでは、法務局は遺言書を預かりませんので、せっかちな方は注意してください。

政令第三百十七号 法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行期日を定める政令 内閣は、法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)附則の規定に基づき、この政令を制定する。 法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行期日は、平成三十二年七月十日とする。インターネット官報

相続手続き専門家による総評

便利な制度だと思います。保管費用がいくらかはまだ分かりませんが、これにより遺言の利用者が増えるかもしれません。非婚化が進む現代、「遺言で財産の帰属先を決めて置きなさい」という国策なのでしょうか。

そして、保管の際に法務局が遺言者の本人確認をするとのこと。

自筆証書遺言を巡っては、残された親族等の間で「これは本人の筆跡ではない」「本人はこんなこと書くわけない」と、遺言無効確認の訴訟が提起されることがあります。

保管制度を使えば、このような訴えは未然に防げそうではあります。しかし、どの程度の本人確認なのでしょうかね。制度の行く末を見守りたいと思います。

遺言書の信頼性」をランキングを言えば、

  1. 公正証書遺言(公証役場で公証人が作成し、証人2人以上が必要なので)
  2. 法務局が保管する自筆証書遺言(法務局で本人確認しているので)
  3. それ以外の自筆証書遺言

の順番でしょうね。保管制度が実施されても、公正証書遺言の確実性は揺るぎないものだと考えます。なぜなら証人がおりますので。

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