【相続司法書士監修】葬儀費用と遺産分割の総まとめ

葬儀

今では家族葬といって比較的低料金で行える葬儀もありますが、葬儀のやり方にはピンからキリまであり、何をどこまで行うかによって金額は全く異なります。そしてそれこそが相続人の間で問題を引き起こす原因にもなったりします。

このページでは、葬儀費用とはそもそも何の費用を含むのかということから、葬儀費用は誰が負担すべきものなのか、相続税法上は葬儀費用をどう考えるべきなのか等、相続問題に直面して葬儀費用の扱いに悩んでいる方に役立つ情報を整理して考察していきます。

葬儀費用の問題の難しさ

まず前提として葬儀費用の問題は大変難しい問題の一つと言えます。それは葬儀および葬儀費用について明確に定めた規定・法律が存在しないという点に原因があります。これを法の不備であると指摘する専門家もいますが、葬儀の形式には一般的な仏式だけでなく、神式やキリスト式など宗派によって無数の形式が存在し、また葬儀の行い方も一般葬や社葬、家族葬など様々で、法律によって一律に定めることが困難であるという事情もあります。

しかしどのような葬儀にもあてはまる「一般的共通事項」のようなものは存在します。このページでは、「一般的共通事項」について解説します。

葬儀費用に含まれるもの|含まれないもの

相続人による遺産分割においては、最終的に「誰が葬儀費用を負担するのか」という問題になるわけですが、その前に、葬儀費用に含まれる費用と、含まれない費用を整理してみましょう。まとめると以下の表のようになります。

葬儀費用に含まれるもの葬儀費用に含まれないもの
  • 葬儀屋に支払った葬式費用(飲食代等を含む)
  • お通夜の諸経費(飲食代等を含む)
  • 葬儀・お通夜の出席者へのお礼の品代
  • 住職へのお布施・戒名代・お車代
  • 火葬料・埋葬料
  • 墓地や墓碑の購入代金
  • 仏壇や仏具の購入代金
  • 香典返し(お礼の品代以外の金銭等)
  • 法要の費用
  • 解剖費用

前述しましたように、葬儀費用についての法律は存在しません。その中で唯一根拠となるのが、国税庁による「相続税法基本通達」です。念の為、以下に内容をそのまま列挙します。

(葬式費用) 13-4 法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。(昭57直資2-177改正) (1) 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用) (2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用 (3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの (4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用
(葬式費用でないもの) 13-5 次に掲げるような費用は、葬式費用として取り扱わないものとする。(昭和57直資2-177改正) (1) 香典返戻費用 (2) 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料 (3) 法会に要する費用 (4) 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用 国税庁|法令解釈通達

読んでわかる通り、この国税庁の通達には概括的なことしか書かれておらず、一般の方にはあまり参考にはならないと思いましたので、上記のように表にまとめました。あくまで一例ですからこちらに掲げたもの以外についての費用については個別に検討する必要がありますし、表に掲げた費用についても必ずしも表の通りの結論になるとは限りません。例えば「葬儀屋に支払った葬式費用」は飲食代も含めて葬儀費用に含まれるとしましたが、故人の生前の職業や社会的地位に比較して不相当に高額であった場合(つまり必要以上に葬式費用が高額である場合)は、その全額が葬儀費用に含まれるわけではない為、注意が必要です。

葬儀費用の領収書がなかったら…

通常領収書が発行される費用については、必ず領収書を保管しておく必要があります。例えば、葬儀屋に費用を支払えば必ず領収書は発行されるため、葬儀費用に含めたければ領収書は大切に保管しておくべきです(もし保管していなければ後日相続人間で争いになってしまう可能性があります)。

しかし、そもそも常識的に領収書が発行されない費用も存在します。たとえば住職へ支払う戒名代・お布施などは領収書が発行されないのが普通と言えます。そのような場合は、メモ書きで良いので「支払日・支払先・金額」を残すようにしてください。通常領収書が発行されない費用については、メモを残しておけば大丈夫です。

葬儀費用と遺産分割

上記で検討したように、まずは葬儀費用に含まれるものと含まれないものを仕訳した上で、次に、葬儀費用を誰が負担すべきかを考察します。特に葬儀費用の負担者をめぐって争いとなる場合は、必ずこの順番で検討するようにしてください。

葬儀費用を負担するのは誰か|法律上の建前

冒頭にも掲げましたが、葬儀費用を誰が支出すべきかという事について、法律上の規定はありません。たとえば、故人の借金・債務であれば、その借金・債務は故人が負ったものである為、相続人全員が負担していくことになります。しかし、葬儀費用は故人が亡くなった後に発生する費用であり、故人が生前に負ったものではありませんから、当然に相続人全員が負担するという事にもなりませんし、反対に当然に遺産から支払われるべき金額とも言えません。

この問題についての考え方は大きく次の4つがあります。実務上の判断もケースごとに検討せざるを得ない場面が多く、厳密に決定するのは難しいです。

【葬儀費用の負担者の関する4つの見解】
①喪主が負担する
②相続人が負担する
③相続財産(遺産)から負担する
④慣習・条理により定まる

葬儀には通常「喪主」が存在し、「喪主」が葬儀について葬儀屋等と契約を行う為、一次的には喪主(祭祀主宰者)が負担すべきと考えるのが、法律上建前として正しいと言えます。しかし、財産相続に関しては法定相続分を定めて均等に相続させるとしていながら、葬儀費用については法律上規定を置かず、喪主に全額負担させるというのは公平性を欠いた結論でしょう。

葬儀費用を負担するのは誰か|実際の処理のされ方

上記のように法律上の正論によると喪主が葬儀費用を負担することになりますが、それではあまりに喪主が不利益を受けるため、一般的には別の処理をします。

次の項目で説明する「香典」とも関係があるのですが、通常の葬儀であれば額の多少はあるものの「香典」が喪主に贈られるはずです。「香典」は喪主に贈られたものなので、故人の遺産とは別モノであり「喪主」のものと一応考えることができます。

しかし、葬儀費用の負担者問題を簡単に解決する為には、まず「香典」から葬儀費用に充てて、「香典」では足りない残額について故人の遺産から支出するとするのが良いでしょう。もちろん喪主の勝手な権限でこのようなこと(故人の遺産からの勝手な支出)はできないため、相続人全員の了解を得る必要があるでしょう。

具体的には、葬儀費用の内訳や金額を相続人全員に開示して、遺産から支出して良いかという同意を得る必要があります。具体的には、「遺産分割協議書」の合意項目に記載するなどして(または「遺産分割協議書」に署名・捺印をもらう前に内訳や金額を明らかにして)後日の紛争を避けるのが望ましいと考えます。

実務的にも、内訳や金額を事前に明らかにして遺産分割協議をすれば、他の相続人が葬儀費用についてあえて争うという事はほとんどなく、喪主が自分個人の財産から支出するというケースはあまりありません(当事務所では一度もありません、というより争いがある場合は当事務所ではお受けできません)。もちろん内訳や金額を事前に明らかにしても、社会常識的に考えて不相当に高額な場合は、争いの原因を一つ増やすことになるため、慎重な判断が求められます。

身分不相応な葬儀費用は誰が負担するか

上記で示した葬儀費用の負担者は、あくまで故人の身分に相応な葬儀費用の話であって、身分不相応に高額な葬儀費用はまた別の話になります。そもそも身分不相応な葬式費用は「葬儀費用」には含まれないわけですから、そのような身分不相応な葬儀を主宰した喪主が負担すべき金額と言えます。つまり、喪主でなければ、例え相続人であってもこれを負担する必要はありません。

身分不相応な葬儀は仮に「故人を喜ばせたい」という想いがあったとしても、後々費用の問題を勃発させるだけとも言えるため、慎重に検討されるのが宜しいのかなとは思います。

香典は誰のものか

香典が誰に帰属するかについても明確な規定はありません。一般的には喪主に贈られたものと解されるでしょう。少なくとも香典は故人に対する謝恩の意味を表明する金銭と言えるため、喪主がこれを受け取っても相続財産(遺産)に含める必要はありません。ですから、喪主が受領した香典を遺産分割協議等により相続人全員で分ける義務はありません。ただし、相続人全員の合意により(遺産分割協議や遺産分割調停等)、香典も考慮した上で遺産を分けることもできます。

なお上記に掲げたように、香典は慣習上まず葬儀費用に充てられますが、残余金がある場合は喪主に帰属するという考え方と、相続人全員に帰属するという考え方があります。

葬儀費用と遺言

つぎに、故人が遺言で葬儀費用について定めていた場合はどのように扱われるのかを検討します。故人が遺言書の中に「私の葬儀費用については私のA銀行の預金口座から支払ってください」と残していた場合、相続人や遺言執行者は遺言の内容に基づいて当然に支払うことができるのでしょうか。

常識的に考えれば「当然できるだろう」と思われますが、これを法律上理論的に説明することは非常に困難です。通常は、故人が葬儀の内容や葬儀費用の希望をあえて遺言に残している場合は、相続人らはこれを尊重して特に争うことも無く、遺言の内容通りに処理します。

しかし遺言書に書くことにより法律上効果が生じることは法律で決まっていて、何を書いていいわけでもありません。繰り返しになりますが、葬儀費用についてはもともと法律がなく、遺言に葬儀費用の点を書いても法律上何ら効力は生じないと考えるのが正論と言えます。その意味では、葬儀費用が法律上の遺言事項に含まれていない点は、法の不備と言わざるを得ないでしょう。

■遺言を残すとき最初に読むページ

遺言

もし相続人同志で葬儀費用について争いが生じることが明白であれば、遺言を作るだけでなく、遺言とは別に死後事務委任契約書の作成なども併せて検討されると良いでしょう。

葬儀費用と相続税

相続税の計算上は、故人の残した債務と葬儀費用は、相続財産の価額から差し引いて計算します。例えば、故人の相続財産が5000万円、債務が100万円、葬儀費用が100万円という場合、5000万円ー100万円(債務)-100万円(葬儀費用)=4800万円を相続税が課税される財産の価格として計算していくことになります。

相続税が課税されるケースは実際にはそう多くはありませんが、もし課税対象となるような場合は、葬儀費用がかかればかかるほど、相続税の負担金額は少なくなるという関係になります。

葬儀費用で相続人が気を付けるべきこと

葬儀費用の問題で相続人が気を付けておくべきことは2つかあります。まず第一に、「葬儀費用に含まれる」ものについて、領収書があるものはきちんと整理して、他の相続人から照会を受けた場合にはすぐに対応できるように準備しておくことです。領収書のないものについては、おおよその金額ではなく、正確な金額と支出した金額・支払い用途をメモとして残しておきます。もし相続税の申告が必要な場合には、これらの資料が役に立ちますから、葬儀費用が相続人間で争われなくても結果的に有用です。

第二に、葬儀費用の金額には注意を払う必要があることです。相続人が多くなればなるほど、そして遠縁の相続人の数が増えれば増えるほど、故人に対する思い入れも希薄となりますので「葬儀費用が高すぎるのではないか?」という意見も出てくる傾向にあります。故人と親しかった相続人からすると「決して高くない」となるのですが、全員がそのように考える保証はありません。このような問題に備えるためには、複数の葬儀社の見積もりを取るという事も方法の一つです。

いずれにしても、あなたが相続人になった場合、できれば自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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このページでは、「葬儀費用と遺産分割の総まとめ」と題して、主に遺産分割における葬儀費用の扱われ方について解説しました。

簡単に解決できない問題があることはお分かりいただけたでしょうか。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

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