相続法の改正|法定相続分以上を相続したら要注意|民法899条の2

今回は、「40年ぶりの相続法の改正」のテーマから、「民法899条の2、共同相続における権利の承継の対抗要件(相続の効力等に関する見直し)」を取り上げます。

今後、特に遺言によって法定相続分以上の財産を取得する相続人は、他に権利を奪われないように十分に注意する必要があります。
相続手続き専門の司法書士が、改正相続法について3分で読めるようにわかりやすく説明します。

現行制度は「遺言書は万能」

現行制度を、分かりやすく言えば「遺言書は万能」と説明できるでしょう。
例えば、遺言書に「○○に財産を全部相続させる(法律上これを「遺言による相続分の指定」と言います)」と書いてあれば、遺留分の問題は別として、原則としては誰に対してもその権利の取得を主張できます

しかし、遺言書に力を与えすぎてしまった為、一方で不利益を受ける人もあり、実務上争いも絶えなかったのです(数々の裁判例があります)。少し具体例で見てみましょう。

具体的に「遺言書が万能」といえるケースとは?

具体例

父が遺言書で長男に「私の財産は全部長男に相続させる」と書いて死亡しました。
二男はAさんから多額の借金があります。
Aさんは借金を取り立てるために、二男が相続した財産を差し押さえたいと考えています。
さて、Aさんは無事に借金の取立てができるでしょうか?

答えは、「できません」。

改正前の扱いによると、遺言はこのようなケースで万能なのです。
遺言書の中に「長男に全部相続させる」と書いてあるので(法律上は「遺言による相続分の指定」と言います)、長男は当然にこれをAさんにも主張できるためです。

長男は「全部俺のものだから、Aさんが差押えするのはおかしいだろう」と主張できます。

長男とAさんの財産の奪い合い

改正前の規定は、遺言の内容を知り得ないAさんを害する

しかし、遺言書があるかどうか、遺言書の内容がいかなるものか、相続人でもないAさんが知るわけがありません。
Aさんとしてみると、相続が生じたのだから、当然にその半分は二男が相続するはすだと考えます。と言うより、それを見越して二男にお金を貸した、という流れが自然と言えます。

つまり、万が一貸したお金が返ってこなくても、将来相続した時に不動産を差し押さえればよいだろうという目論見です。

しかし、遺言によりAさんの期待は一方的に裏切られることになります。結局、改正前の規定はAさんの期待権を一方的に害するものなのです。

新制度は「遺言書は万能ではない」

考えてみれば、「遺言書があるからと言って、債権者をないがしろにして良いのか」という感じがします。それでは新制度・改正相続法ではどうなったのでしょうか?

「改正民法899条の2第1項」を読み解く

まず、条文は次のように規定されます。

改正民法899条の2 第1項

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

条文だけではよくわかりませんね。超訳してみます。

超訳 改正民法899条の2 第1項

相続のとき、法定相続分を超えて財産を相続した場合は、法定相続分を超える部分については、第三者より先に登記しないと負けですよ。

新制度は、遺言の内容を知りえないAさんを保護する

新制度(改正民法899条の2)では、長男が全財産自分のモノとAに主張したければ、Aが差し押さえるよりも先に、司法書士に登記をしてもらう必要があります

つまり、遺言があるからと言って、長男はウカウカしていられないのです。その意味で、今までのように、「遺言があるから安心」とはならないのです。

遺言書が残されている場合は、相続人同士で遺産分割の話し合いをする必要もなくなるため、名義変更をはじめとする相続手続きをのんびりと考えている方も多いのですが、今後は早急に手続きをしないと財産を失う可能性があります

新制度は、相続人同士では問題にならない

新制度(改正民法899条の2)は、上記の事例のように「相続人(長男)と相続人以外の第三者(債権者A)」の間で適用されます。

相続人間においては、改正法は無関係であり、長男は登記が無くても次男に対して権利の取得を主張できます。しかし、この点は、そもそも改正に関係なく、改正前から同様に理解されていました。

新制度は、預貯金を相続した場合にも適用される

新制度(改正民法899条の2)は、遺産として不動産を相続した場合に限られず、銀行預金などの債権を相続した場合にも適用されます

例えば、法定相続分以上の預金を相続した場合は、銀行に対してその旨の通知をしなければ第三者に対して権利を主張できなくなってしまいます。この通知は、内容証明郵便など確定日付のある証書でする必要があります。

改正民法899条の2 第2項

前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

新制度は、遺産分割の場合にも適用される

新制度(改正民法899条の2)は、遺言により法定相続分以上の財産を相続した場合だけではなく、相続人間の遺産分割協議による場合も含みます。

遺産分割協議により法定相続分より多く財産を相続しながら、他方の相続人が先に手続きをして、さらにそれを第三者へ譲渡して登記も備えたとなると、第三者が優先的に権利を取得してしまいます。

しかし、この点は、改正前より同様に理解されていましたので、今回の改正により直接影響はありません。

相続法の民法改正条文「899条の2」はいつから

改正法は令和1年7月1日以後に開始した相続に適用されます。

令和1年7月1日より前に作成された遺言であっても、令和1年7月1日以後に死亡すれば新制度(改正民法899条の2)の適用があります。

なお、預金などの債権を相続した場合(改正民法899条の2第2項のケース)は、特例があります。

(共同相続における権利の承継の対抗要件に関する経過措置) 第三条  第一条の規定による改正後の民法(以下「新民法」という。)第八百九十九条の二の規定は、施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による債権の承継がされた場合において、施行日以後にその承継の通知がされるときにも、適用する。平成30年法律第72号附則

つまり、令和1年7月1日前に開始した相続であっても、遺産分割による債権の相続がされた場合で、銀行に対して通知をしたのが令和1年7月1日以後であれば、新制度(改正民法899条の2)の適用が受けられるというものです。

無料相談を受け付けています

私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「相続法の改正|法定相続分以上を相続したら要注意|民法899条の2」についてお話ししました。

以前のように、「相続手続きは期限が無いからいつ手続してもいい」と気楽に構えていると、自分の権利を失うことになるかもしれません。同じようなお悩みをお持ちですか?

まず、相続手続きをこれから始めるにはどうすればよいのか、費用はいくら位かかるのか、様々な具体的な疑問があることと思います。

毎週土曜日に無料相談を受け付けていますので、この機会にお気軽にお問い合わせください。
お電話(代表042-324-0868)か、下のバナーより受け付けています。無料相続相談会予約フォームはこちら