相続法の改正|遺産分割前に財産を処分したらどうなるか

40年ぶりに相続法が改正されました。今回は改正されたテーマの中より、「遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲」について取り上げます。

故人が死亡して相続が開始した後、相続人全員で遺産分割協議をするまでの間に勝手に遺産が処分されてしまった場合、相続人は残された財産のみを分けるしか方法は無いのでしょうか?

遺産分割前に遺産の属する財産が処分された場合の遺産の範囲

遺産の生前の不正使用は含まれない

生前に遺産を管理していた者が、相続前に遺産を不正に使用する「遺産の生前の不正使用」の問題がありますが、これは、今回の改正条文の対象外です。

遺産とは「相続開始時」に故人に属する財産のことです。ですから、相続開始前に処分されてしまっているのであれば、それはもはや遺産とは呼べません。

今回の改正条文があてはまるのは、「相続開始後、遺産分割協議前に処分された財産」についてです。

なお、「遺産の生前の不正使用」についてはこちらに詳しい記事を書きましたのでよろしければお読みください。

遺産の生前の不正使用について

改正民法906条の2

それでは改正された条文の規定を実際に見てみましょう。

【改正民法906条の2 第1項】

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。

条文はわかりにくいですね。つまり、勝手に処分されても、それ以外の相続人の同意があれば(勝手に処分した相続人の同意は不要です(同2項))、処分された財産もなお遺産に含まれるものとして遺産分割ができる、という意味です。

本条の「遺産」に何が含まれるか?

故人名の遺産は当然として、そうでなくても実質的に故人の財産と認めれらるものはすべてふくまれます。実務上よくあるのは、いわゆる「名義預金」です。例えば、故人が妻名義で預けていた預貯金も遺産に含まれます。

本条の「処分」は相続人がした場合のみをさすのか?

そうではありません。条文には「遺産に属する財産が処分された場合であっても」としているだけで、主語は特に記載されていません。

ですから、相続人が処分した場合だけでなく、相続人以外の者が処分した場合にも本条の適用があります。

改正906条の2による具体的な問題解決方法

本来相続人による遺産分割の対象となるべき財産は、故人が死亡時点において存在し、かつ、遺産分割協議の時点でも存在する財産のはずです。

今回の改正により、仮に遺産分割協議の時点ですでに処分され存在しなくなっていたとしても、相続人全員の合意があれば、なお遺産中に存在するものとして遺産分割をして良いことになります。

たとえば、遺産中の不動産を1000万円で売却し、すでに売却代金を得ているならば、遺産分割に際して、すでに1000万円分の相続分を取得しているものとして遺産分けができるとなります。

つまり、すでに1000万円は遺産中より得ている訳ですから、残りの遺産からの分け前は必然的に少なくなるでしょう。

なお、この改正は従来の裁判例や実務の考え方を踏襲したものです。したがって、実は相続実務において影響はほとんどありません。

また、この改正については、平成31年7月1日より施行されます。

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