相続法の改正|遺留分侵害額請求権(遺留分に関する改正)

2023年5月16日

無料相談をしようか迷われる方がいらっしゃいましたら、無料相談のページでより詳細な内容をご案内しております。是非ご覧ください。

40年ぶりの相続法が改正されました。今回は、ご相談でもよく頂く「遺留分」についての主な改正点のご紹介です。

従来の「遺留分減殺請求権」という言葉が、「遺留分侵害額請求権」に改められるなど、単に言葉の言い換えだけでなく、法律的な考え方が一新されることとなりました。

まずは、「相続分」と「遺留分」は何が違うの?というところから、順を追って見てみましょう。

遺留分とは何か

そもそも財産は、それを所有する個人が自由に処分できるのが大原則です。

例えば、下の図のように、父が「自分の不動産は息子たちには相続させたくない!」として、生前に愛人に贈与することを誰も止めることはできません。

しかし、息子2人はこれによって本来相続できるはずであった財産を相続することができず、問題です。
そこで、民法は、自由に処分するのは勝手だけど一定の限度までですよと制限を設けています。

この一定の限度のことを「遺留分」と言います。遺留分とは一定の相続人に法律上必ず与えられる、遺産の一定割合のことを言います。

法定相続分は、遺産分割協議などによって修正されますが、遺留分は決して奪われることのない権利です。

【民法1042条1項】
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
1.直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
2.前号に掲げる場合以外の場合 2分の1

上記のケースですと、法律上、長男と次男はそれぞれ4分の1ずつの遺留分を有します(遺留分割合や遺留分を主張できる遺留分権利者には法改正はないので従来通りです)。

つまり、亡父の遺産が4000万円の不動産だけとすると、長男と二男はそれぞれ1000万円ずつ合計2000万円の遺留分を持つことになります。

ですから、父が勝手に愛人に贈与できるのは、4000万円のうち2000万円の限度までだったはすなのです。しかし、その限度を超えて父は愛人に贈与してしまいました。遺留分を奪われた息子たちはどうすれば良いのでしょうか?

民法改正前の遺留分減殺請求とは

4000万円の不動産が愛人に贈与されると、長男二男は何も相続できないことになりますし、自分の遺留分が愛人によって侵害されています。
この時、長男二男は愛人を相手にして「遺留分減殺請求」をすることができます。

つまり、「自分たちの遺留分は法律上保証されたものであるから、その部分は返せ」と言えるのです。
ですから、愛人は長男二男に対して、贈与で受け取った不動産のうち、4分の1ずつを彼らに返還しなければなりません。

改正前は、愛人が長男二男に返還する方法としては、受け取った現物を返還するのが原則でした。
ですから、不動産の4分の1ずつを長男二男にそれぞれ返還することになります(これを「遺留分減殺請求による物権的効果」と呼びます)。

しかし、これはいかにも不自然です。

なぜなら、返還した結果、不動産が共有状態になってしまうからです。つまり、4分の1長男・4分の1二男・4分の2愛人という3者共有状態です。

共有という事は一緒に使うという事ですが、長男二男が愛人と同じものを共有したいと思うでしょうか。改正前はこの点がいかにも不都合だと指摘されていました。

改正前の登記手続きはどうなっていたか?

これまでは遺留分減殺請求権を行使することによって当然に物権的効果が生じた為(分かりやすく言えば当然に所有権が減殺請求権を行使をした人に移るという意味です)、「遺留分減殺請求」を登記原因とする所有権移転登記の申請を行っていました。

改正法による遺留分侵害額の請求とは

改正法では減殺請求を受けた愛人側の返還方法を改めました。現物を返還するのではなく、金銭を支払うしたのです。

長男次男の立場から言うと、愛人に対して「生前贈与で受け取った不動産を返してください」と請求するのではなく、「私たちにお金を払ってください」と請求することになります。

しかし、すぐに金銭を準備できない場合もあるでしょうから、愛人側からの申出により、裁判所はこの支払につき相当の期限を許与することができる(例えば支払いは3か月後の月末まででいいですよというように先送りにすること)という規定を設けて、愛人側の利益を保護しました(民法1047条5項)。

改正民法1046条1項の条文を見てみる

【改正民法1046条1項】
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受遺者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

上記図のケースでは、長男二男は1000万円ずつ愛人に対して金銭の支払いを請求することになります。

なお改正前は「遺留分減殺請求」という用語を使っていましたが、改正法では廃止されます。改正法では「遺留分侵害額の請求」となります。意味や用法は変更ありません。

改正後の登記手続きはどうなるのか?

「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)法務省民二第68号令和元年6月27日法務省民事局長」によると、「改正により従前の遺留分減殺を登記原因とする所有権の移転登記の申請は受理することができないこととなる」と明言しています。

これは、従前のように、遺留分減殺請求により所有権が請求権者に移転しなくなったため、当然の扱いと言えます。

改正法が適用されるのはいつからか

改正法は令和1年7月1日より施行されます。つまり、令和1年7月1日以後に開始した相続について適用があるという意味です。
令和1年7月1日より前に開始した相続については、旧法の規定が適用されます(改正法附則第2条)。

無料相談を受け付けています

私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「相続法の改正|遺留分侵害額請求権(遺留分に関する改正)」についてお話ししました。今回の改正は多岐にわたり、そして身近なものが多いです。もう少し詳しい説明を聞きたいと思いませんか?

また、相続手続きをこれから始めるにはどうすればよいのか、費用はいくら位かかるのか、他にも様々な疑問があることと思います。

毎週土曜日に無料相談を受け付けていますので、この機会にお気軽にお問い合わせください。
お電話(代表042-324-0868)か、予約フォームより受け付けています。

 

無料相談をしようか迷われる方がいらっしゃいましたら、無料相談のページでより詳細な内容をご案内しております。是非ご覧ください。

ご相談・ご予約はこちら