【司法書士監修】私道が漏れていた遺産分割協議は有効か?|解決法

一般的に遺産分割は故人のすべての遺産について一度に行うことが多いです。しかし、全ての遺産について遺産分割をしたつもりでいたところ、後日、私道部分(道路)の存在が発覚した場合、相続人はどのように対処すればよいのでしょうか。

そもそも私道とは何か、そして私道が遺産分割から漏れてしまう原因やその解決法などを考察します。

道路|公道と私道の違いとは

道路には大きく分けて、①公道、②私道、の2種類があります。まずは、その定義から見ていきましょう。

もし、道路部分が遺産分割から漏れていたとしても、それが公道であれば何の問題もありません。

公道と私道の定義とは

道路の定義は厳密には難しいのですが、一般的に次のように説明されます。

一般の交通の用に供する道を「道路」といい、このうち行政が築造管理する道路を「公道」、私人が築造管理する道路を「私道」といいます。相続・遺言の落とし穴|新日本法規

分かりやすく言いますと、市や県などが所有者となっている道路が「公道」であり、個人が所有者となっている道路が「私道」となります。特殊な例外は除くとして、ほぼこのような理解で問題はありません。

公道か私道かを確認するには?

道路部分が公道か私道かを確認するには、その土地の登記簿(登記事項証明書)を取得するのが確実な方法です。

登記簿(登記事項証明書)は最寄りの法務局か、オンラインでも取得することができます。参考までに、オンラインで取得するためのウェブページをリンクしておきます。

■登記情報提供サービス| 一般財団法人 民事法務協会

取得した登記簿(登記事項証明書)に、その土地の所有者として市や県が記載されていれば「公道」です。個人の氏名・住所が記載されていれば「私道」となります。

また、その不動産を購入したときの「売買契約書」で確認することもできます。私道が有れば、売買契約書に道路部分として物件が明示されているはずです。

自宅の前にある道路が「公道」であるか「私道」であるか、経験上ほとんどの方は認識しています。しかし、それが相続した不動産となると、正確に把握している相続人は少ないように思います。

私道は隣地者との共同所有であることも…

上記に挙げた方法で登記簿(登記事項証明書)を取得すると、「共有者」として近隣住民の氏名住所も記載されていることがあります。その場合「持分」も記載されているはずです。

つまり、「私道」は単独所有の場合と、近隣住民との共有の場合の2つのケースがあるという事です。どちらのケースが多いということもなく、どちらが正解という問題でもありません。単にそのような状態であるというだけです。

私道の遺産分割に関する諸問題

それでは故人名義の私道が有るとして、その様々な問題を考察していきたいと思います。

私道も遺産分割の対象になるのか?

もちろん、その私道が故人の名義であれば、それが単独所有であるか、近隣住民との共同所有であるかを問わず、遺産分割の対象となります。ですから、もし既になされた遺産分割で私道部分が漏れていたのであれば、その遺産分割は不完全であると言えます。

私道が遺産分割から漏れてしまう原因

もちろん例外もありますが、多くの私道は、課税上「公衆用道路」とされていて、地方税法348条2項5号により固定資産税は非課税となります。

不動産の所有者には固定資産税が課され、毎年「固定資産税の納税通知書」が送付されるはずです。通知書の中には。固定資産税の課税対象となる物件が土地・建物に分けて記載されますが、課税対象となっていない私道はここには記載されません。

また、「固定資産税課税台帳の写し(名寄せ)」を不動産所在地の役所に請求すると、当該所有者が所有する物件の一覧を知ることができます。しかし、課税対象となっていない私道は、この書面にも(原則として)記載されません。

ですから、「固定資産税の納税通知書」や「固定資産税課税台帳の写し(名寄せ)」から故人の所有している不動産を割り出す場合は、結果的に私道部分は漏れてしまうことになります。

相続人が故人の所有不動産を完全に把握していない場合は、そのような方法で故人の所有不動産を割り出していくことが多いのですが、私道部分が漏れてしまうリスクが生じます。

これを避けるためには、道路と思われる部分の登記簿(登記事項証明書)を、公図(法務局備え付けの図面)を頼りに片っ端から取得するのが一番の方法です。これは金融機関や不動産業者がよく使う方法で、私たちのような専門家も依頼に応じて行うことがあります。

もちろん、故人が不動産を取得した際の「売買契約書」や「登記済権利証(登記識別情報)」があれば簡単に私道の判別が可能ですから、苦労せずに私道部分を特定することができます。

私道部分が漏れている遺産分割協議は無効なのか?

結論から言って、もし私道部分が既に終わった遺産分割協議から漏れていても、それだけで遺産分割協議が無効となることは少ないでしょう。

市などから公衆用道路と評価された「私道」は、固定資産税の課税上は非課税であると上記で説明しました。

さらに、相続税、贈与税の扱いにおいても、「その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しない」とされています(国税庁財産評価基本通達24)。

つまり、公衆用道路と評価された「私道」は、相続財産の評価額としてもゼロ評価とせざるを得ないと考えられます。わかりやすく言えば、ほぼ無価値という意味です。

ところで、遺産の一部が漏れてなされた遺産分割が有効か、無効かについて争われた有名な裁判例が2つあります。

まず1つ目は、脱漏した遺産が価格等において重要であり、もし相続人がその重要な遺産の存在を知っていたなら遺産分割協議はしなかったというケースです。

この場合は、共同相続人の公平の理念に照らして、すでにされた遺産分割協議は無効となり、脱漏した遺産を含めてもう一度遺産分割協議をやり直すべきであると考えられます(高松高決昭和48年11月7日等)。

つまりこの場合は、先にされた遺産分割協議を一部分割としては認めないという結論です。だからこそ、遺産全体について協議をやり直すべきだとしているのです。

そして2つ目は、脱漏した遺産が僅少で、すでにされた遺産分割協議を無効とするほどの瑕疵が無いと判断されるケースです。この場合は、脱漏した遺産についてのみ、さらに遺産分割協議をすれば足ります(東京高判昭和52年10月13日等)。この場合は先にされた遺産分割協議を一部分割として有効に扱います。

公衆用道路と評価された「私道」は、相続財産の評価額としてもゼロ評価であることを前提に考えると、2つ目の判例が適用され、すでにされた遺産分割協議は有効であり、私道部分についてだけ、再度遺産分割協議を行えばよいことになります。

ちなみに、遺産の一部分割については別の記事で詳しく説明していますから、もし宜しければお読みください。

遺産の一部分割はできるのか?相続法の改正と問題点

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私道の為だけに再度遺産分割協議をするのか?

それでは、私道だけの為に、わざわざもう一度遺産分割協議をしなければならないのかを考察します。再度の分割協議をすることなく、事態を丸く収める方法が無いかを考えてみましょう。

さて、民法第87条には、「従物」に関する規定があります。

【主物及び従物|民法第87条】
1 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2 従物は、主物の処分に従う。

つまり、本地部分(建物の真下の土地のこと)を「主物」とし、道路部分を「従物」と考えれば、民法第87条2項の規定により、本地がAという相続人に相続されれば、道路部分もこれに従い当然にAに相続されるわけですから、わざわざ道路部分に関して再度の遺産分割を行う必要はないのではないか?という考え方も理論上は成り立ちます。「従物は、主物の処分に従う」と条文にあるからです。

しかし、何をもって「従物」と呼ぶかは法律上難しい問題があります。「従物」となるためには次の4つの要件を充たす必要があります。

  1. 主物の常用に供せられていること
  2. 主物に付属すると認められる適度の場所的関係にあること
  3. 主物から独立した物であること
  4. 主物と同一所有者に属すること

この4つの要件を充足し、なおかつ「附属させた(民法第87条1項)」といえるか否かを実質的に考慮し判断していくことになります。

さらに、仮に問題となっている私道がこれらの要件をクリアして、法律上は「従物」であるとしても、本地と別の地番として登記されていれば、登記手続き上は本地とは別に登記を行わない限り、私道が相続人に承継されることはありません。

例えば、本地が「1番地1」、私道が「1番地2」である場合を考えます。この時、「1番地1」と「1番地2」の両方の土地について相続登記を行わなければならないという事です。

仮に私道「1番地2」が法律上「従物」であると認定できたとしても、登記手続きは、その土地ごとに名義変更を行わなければなりません。「1番地1」の登記を行ったからと言って、当然に「1番地2」の登記もできるわけではありません。原則として、登記は不動産ごとに行うためです。

以上により、私道だけの為に再度遺産分割をやらなければならず、これを省略する手法は無いことが分かります。

私道の再度の遺産分割のやりかた

再度の遺産分割のやり方は、最初の遺産分割のやり方と同じです。相続人全員の同意が必要となります。

相続人が変動している可能性もある

最初の遺産分割と再度の遺産分割に時間的な隔たりがなければ、相続人の構成は同じなので協議も早く済むかもしれません。しかし、最初の遺産分割から何年も経って私道が判明したような場合は、相続人の構成も変わっているでしょう。

遺産分割は、これを行う時点での相続人に資格があります。したがって、時間が経ってから私道が判明した場合は協議が難航する可能性もあります。

すでに認知症になっている方がいれば、成年後見人の選任申立手続が必要です。行方不明になっている方がいれば、不在者財産管理人の選任申立手続が必要です。わざわざ私道だけの為に、関係当事者がそのような煩雑で費用の掛かる手続きに協力してくれるかは期待できません

相続人が再度の遺産分割協議に協力してくれない時は

最終的に1人でも同意しない相続人がいる場合には、遺産分割調停・遺産分割審判の申立をせざるを得ません。この理屈は、最初の遺産分割でも同じです。遺産分割は相続人全員の同意が必要不可欠なのです。

誰が私道を取得すればよいか

すでに説明した通り、「私道」はそれ自体はほとんど価値がありません。「本地」とセットで初めて財産的な価値が認められるものです。したがって、「私道」を取得すべき方は、最初の遺産分割で「本地」を相続した相続人となるでしょう。

タダで私道を相続してよいか

「本地」を相続した方が「私道」も相続するのが望ましいと上記で説明しました。では、再度の遺産分割協議で、他の相続人に「代償金」を支払う必要は無いのでしょうか。

一般論として、遺産を相続人の1人が独占的に相続する場合、他の相続人にはその代わりに「代償金」を支払うケースが多いです。他の相続人は相続できないわけですから、その代わりにお金を支払うことで償うわけです。

それでは、「私道」を相続する見返りとして、他の相続人に「代償金」をわざわざ払う必要があるのか?という問題です。

すでに挙げたように、公衆用道路して評価された私道は固定資産税については非課税の扱いであり、相続財産の評価額としてもゼロとなります。つまり、「「適正な評価額による代償金」もゼロと評価すべき」と言えます(「Q&A遺産分割後のトラブル対応」|新日本法規)。ということは代償金はゼロでも良い気もします。

しかし、他の相続人に私道部分の再度の遺産分割協議を持ちかける時に、全く何の支払いもしないという提案はやりにくいのではないでしょうか。少なくても「ハンコ代」程度の代償金は提案するのが賢明かもしれません。

この「ハンコ代」としては、すでに挙げた「国税庁財産評価基本通達24」を参考に計算することも可能です。これによると私道は原則として「相続税路線価の100分の30に相当する価額によって計算する」ことができるため、例えば本地部分が1㎡あたり100,000円の相続税路線価であれば、私道部分はその30%、つまり1㎡あたり30,000円と算定することができます。

このように法的に根拠のある金額を代償金と示して再度の遺産分割協議を提案すれば、仮に当初の相続人と構成が変動していても、まとまりやすくなると考えます。

解決案の提示|私道の再度の遺産分割をスムーズにするには

最初の遺産分割がどの相続人を主導に行われたのかにもよりますが、私道部分が漏れていたのはもはや止むを得ない事実として認識しなければなりません。放っておいても何も解決になりません。

その上で再度の遺産分割協議を全ての相続人に持ちかけるわけですが、慎重に話を進める必要があります。なぜなら他の相続人は既に遺産分割は終わったものであると思っているわけですから、そこへ再び「この書類に実印を押して印鑑証明書も用意してくれ」では説明が付きません。

当初の遺産分割で私道が抜け落ちていた経緯や、その解決手段、可能であれば代償金の提示まで、全ての相続人に対して納得のいく説明が求められます。

できれば自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、他の全ての相続人に対して丁寧で誠実な対応を心がけるしかないでしょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「私道が漏れていた遺産分割協議は有効か?|解決法」についてお話ししました。

私道が漏れていても当初の遺産分割協議自体は原則的に有効ですが、その後の問題が残ります。すでに挙げたように再度の遺産分割協議は、最初の遺産分割協議以上に慎重に進める必要があります。ぜひそのような場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

遺産分割の手続きの流れや、遺産分割協議書作成の費用はいくら位かかるのか、登記手続きにかかる費用や、どの位の期間で完了するのか、他にも様々な疑問があることと思います。

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