相続法の改正|遺産の一部分割

40年ぶりの相続法改正。これまでいくつか記事を書いてきましたが、今回は小ネタとなります。

「遺産の一部分割」を認めるという条文ができました、についての解説です。

それでは、どのような改正で、問題点はないのか考えてみたいと思います。

遺産の一部分割とは

遺産の「一部」分割と言うからには、遺産の「全部」分割もあります。そもそも遺産分割とは何でしょうか?

遺産分割とは

私共東京国分寺こん・さいとう司法書士事務所は、相続手続き専門の司法書士事務所ですので、遺産分割に関する実務書が数多くあります。

たまたま目の前にある実務家向けの書籍から、遺産分割の意義を引用します。

遺産分割とは、相続開始後、共同相続人の共同所有に属している相続財産を、各共同相続人に分配、分属させる手続きである。改訂遺産分割実務マニュアル 東京弁護士会法友全期会相続実務研究会 ぎょうせい

実務家向けの記述なので、一般の方には少し分かりにくいかもしれません。

遺産は相続開始と同時に、相続人に当然に移転します。相続人が1人であれば、遺産は1人のものですから、遺産分割の問題は生じません。しかし、相続人が数人ある場合は、遺産は数人の共同所有となるので、誰がどの遺産を取得するのか協議が必要となります。この話し合いの事を遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は相続人全員で行います
遺産分割協議は相続人全員で行います

遺産分割の実際

まず遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。よくある問題点としては、相続人中に認知症の方がいる、相続人中に行方不明の方がいる、というケース。こちらに別の記事がありますので、よろしければご参照ください。

遺産分割協議|遺産分割調停

また、分割の対象となる遺産ですが、基本的には「全部」を一気に分割するケースが多いです。

現行法上は「その協議で、遺産の分割をすることができる(民法907条)」としており、全部の遺産分割なのか一部の遺産分割なのかよくわかりません。

しかし、現実の世界においては必ずしも全部を一気に分割できるケースだけとは限りません。たとえば、特に相続人間で争いのない不動産だけ先に遺産分割をして、争いのある預貯金については別途遺産分割をするというように、順次遺産分割協議を行うことは、現行法上においても実務上認められていました。

「全部の遺産について協議がまとまらないと、遺産分割協議として認めない」というのではあまりに杓子定規に過ぎますし、結果として遺産分割の遅滞を招くことになります。

なお、この扱いは当事者の話し合いによる遺産分割協議だけでなく、家庭裁判所による遺産分割調停・遺産分割審判でも同様の扱いです。

遺産の一部分割は前から行われていた

今回の改正は、以前から実務的に当然のように行われていたものを、単に明文化したにすぎません。ちなみに、新しい改正条文は以下のようになります。

【改正民法907条1項】 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

ということで、この条文の改正による影響はなさそうです。もちろん、この遺産の一部分割も、当事者の話し合いによる遺産分割協議だけでなく、家庭裁判所による遺産分割調停・遺産分割審判でも同様の扱いです。

なお、改正法は平成31年7月1日より施行されます。

改正907条1項の問題点とは

とは言いながら、遺産の一部分割を明文化したことで、大手を振ってそれができるわけですから、とりあえず資産価値の高い不動産や預貯金だけ分割して、山林や田畑など誰も相続したがらない遺産については遺産分割せずに放置しておくという事も増えそうな予感はします。

これにより、所有者不明の土地が増加する懸念も実務上指摘されています。法律の改正は、あちらを立てればこちらが立たず、と何とも難しいものですね。

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