【司法書士監修】相続人が通帳見せてくれない問題|手っ取り早い解決法とは?
「相続が開始して故人の遺産を調べようとしたが通帳を見せてもらえない場合はどうすればいいのか?」「銀行口座の残高や履歴を調べる法律上正しいやり方とは?」は、当事務所に多い相談・質問の一つです。あなたも同じ悩みを持っていますか?
相続が発生しているにも関わらず、通帳を管理している人がなかなか中身を見せてくれないと言うことはよくあることです。通帳の残高が分からないと、遺産分けの話し合いもできませんし、もしかすると不正に引き出されていたりするかもしれません。
今回このページでは創業20年以上、地域随一の相続専門の司法書士事務所が「【司法書士監修】相続人が通帳見せてくれない問題|手っ取り早い解決法とは?」と題して、今まさに相続問題でお困りのあなたの疑問にお答えします。
このページを見れば『通帳がなくても銀行の残高や入金出金履歴を確かめる方法』や『株や投資信託の残高の確認方法』について具体的な対策・対処方法や注意点をコンパクトに知れて、これまでの疑問点がスッキリ解決すると思います。
このページは相続の際に相手方が通帳を見せないという法律問題で様々なサイトを検索・アクセス、調査し、不安になっているすべての相続人・その家族に向けたものです。ご参考になれば幸いです。
通帳を見せてもらえなくても調べる方法はある
「通帳を見せてもらえないなら何もわからない」「通帳の中身がわからなければ相続手続きをあきらめるしかない」などと悲観する必要はありません。
確かに、通帳の内容が分からないと、相続財産が全体としていくらあるか計算できませんので、一人当たりの法定相続分がいくらくらいになるのか判断できず、遺産分割が進みません。
また、相続財産の計算ができなければ、遺言書がある場合に遺言の内容が自分の遺留分を侵害しているのかどうかを判断することもできません。
さらに、被相続人(たとえば亡くなった親)に多額の借金があるという場合に、相続人が相続放棄をすべきかどうかは、預金や不動産などのプラスの財産の評価がどれだけあるかと照らし合わせて判断します。その計算もできません。
つまり、通帳の中身(残高)は相続人にとって重要な資料・証拠の一つと言えるわけです。
しかし、たとえ通帳を見せてもらえなかったとしても、あなた自身も相続人であれば、残高などを簡単に調べる方法はあります。
金融機関名は分かっているか、がポイント
「どの銀行に口座があるかわからない」では調べようがありません。最低限の情報としては、口座のある金融機関が特定できているかどうかとなります。
支店まで特定できていれば良いのですが、もし支店名までわからなくても調べるに当たって特に影響はありません。
金融機関名が分からなかったらどうすればよいか
「どの銀行に口座があるか調べてください」というのはできない相談です。
一般的には、遺品整理をするなかで発見された金融機関の封筒やATMの明細、ティッシュやボールペン、メモ帳などの粗品などから、徐々に金融機関を絞り混んでいきます。
また、高齢者はゆうちょ銀行に口座を保有している確率が高いので、まずはゆうちょ銀行から以下にお伝えする方法で調査してみると良いかもしれません。
証券口座は何の情報がなくても特定できる
上で説明しましたように、銀行口座についてはある程度の情報がないと口座を特定するのは難しいです。それに対して、被相続人の取引のあった証券会社が不明の場合は、何の情報がなくても口座を特定することができます。
被相続人の口座があった証券会社が不明な場合は、株式会社証券保管振替機構に対して、口座の開示請求をすることにより、被相続人の口座がある証券会社を調べることができます。
口座開示請求の結果、被相続人の口座開設先の証券会社が判明すれば、その後改めてその証券会社に対して、残高証明書などの請求をして明らかにしていけば良いことになります。
参考までに株式会社証券保管振替機構の公式ホームページのリンクを貼っておきますのでご確認ください。
費用は1件当たり6,050円(税込)かかるようです。手続きの詳細は上記のリンクからお調べください。
残高だけ知りたければ「残高証明書」を請求
それでは、次に預金の残高や、投資信託・株式の残高を確認する方法についてお伝えします。
各金融機関では「残高証明書」という預金や株式・投資信託などの残高を証明する書面を発行しています。どの金融機関でも電話で具体的な残高を教えてくれるという扱いはありません。
残高証明書は相続人それぞれが単独で請求|他の相続人の同意は不要
残高証明書は相続人なら誰でも単独で請求できる書面です。残高証明書を請求するに際して、他の相続人の同意や承諾を得る必要はありません。
こちらが通帳を保有していなくても請求できますし、もちろん通帳を保管している相続人やその家族の同意も必要ありません。
いつの時点の残高が分かれば良いのか
預金等の残高証明書は、被相続人の相続税の申告が必要な場合は税務上の添付書類となります。この場合は、相続開始日(死亡した日)の残高証明書が必要となります。ですから一般的には死亡日時点の残高証明書を取り寄せることになります。
ただし、遺産分割調停や遺産分割審判などの裁判手続きとなる場合は、現時点の残高で遺産を分割することが多いため、死亡日ではなく現時点での残高証明書が必要となるケースもあります。
そのような場合は税務申告にも備えて、死亡日時点のものと、現時点のものと2種類用意しておけば安心でしょう。
残高証明書を発行してもらうには2つの方法が
残高証明書を発行してもらうのは難しい作業ではありませんが、手間と時間がかかります。
金融機関の数が多かったりすると、残高証明書を発行してもらうのにかなりの時間と労力を費やしてしまうので、料金はかかりますが専門家に任せてしまうと言う選択肢もあります。
残高証明書は郵送のやり取りによって発行してもらう方法と、窓口で発行してもらう方法の2つのやりかたがあります。
窓口で残高証明書を発行してもらう場合の手順|即日発行の金融機関も
金融機関の窓口で残高証明書を発行してもらう場合の一般的な流れは次の通りです。
- 事前に電話やホームページから来店予約をする
- 窓口で「残高証明書の発行請求用紙」に記入し必要書類を提出
- 後日残高証明書が郵送される
金融機関によっても異なりますが、大体このような流れになります。最近の金融機関は待ち時間短縮のため、事前予約制になっているところが多いです。事前予約の方法もホームページで受け付けていたり、支店に直接電話したりと様々です。
残高証明書は、被相続人の口座がある支店とは別の支店でも発行してもらえます。たとえば被相続人の口座が銀座支店だというケースで、その残高証明書は新宿支店でも発行してもらえます。
遠方の地方銀行は、東京や大阪などの大都市に支店があるケースもあるため便利です。
発行手数料は無料というところもありますし、数千円かかるところもあります。概ね1,000~2,000円程度です。各金融機関によって異なります。
発行されるまでの日数ですが、即日発行してもらえるところもありますが、ほとんどは2週間程度で後日郵送してもらえます。
残高証明書の発行依頼をする際に必要な書類一覧
残高証明書の発行を依頼するためには、次のようなものが必要となります。
- 死亡の記載のある被相続人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 相続人(窓口で請求する人)の戸籍謄本
- 相続人(窓口で請求する人)の印鑑証明書
- 相続人(窓口で請求する人)の実印
- 本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)
「1」「2」の戸籍謄本についてですが、必ずしも被相続人の死亡から出生に遡るすべての戸籍謄本は必要ありません。少なくとも、窓口で請求する方が被相続人の法定相続人であることが証明できれば法律上は問題ないはずです。金融機関で間違った対応がされる場合がありますので、ご注意ください。
窓口で残高証明書を発行してもらうメリット|その場で書き方を教えてもらえる
窓口で残高証明書を発行してもらうことのメリットとして次のようなものがあります。
- 「残高証明書の発行請求用紙」の書き方がわからなくてもその場で教えてもらえること
- 支店名が分からなくてもその場で教えてもらえることがあること
- 発行手数料をその場で支払えるので余計な振り込み手数料などがかからないこと
- 戸籍謄本などはその場でコピーした上で返却してもらえるので他の用途にすぐ利用できる
窓口で残高証明書を発行してもらうデメリット|不足書類があれば再来店
反対に、窓口で残高証明書を発行してもらうことのデメリットとしては次のようなものがあります。
- 戸籍謄本などあらかじめ用意しなければならない書類などに不備があると再来店が必要になること
- 当日発行がされる場合は待ち時間が長時間になる可能性もあること
郵送で残高証明書を発行してもらう場合の手順|窓口で請求するより時間はかかる
郵送で残高証明書を発行してもらう場合の一般的な流れは次の通りです。
- 口座のある支店か各金融機関の相続センターへ電話して「残高証明書の発行請求用紙」を取り寄せる
- 必要書類を同封の上「残高証明書の発行請求用紙」に記入して返送する
- 後日残高証明書が郵送される
「発行請求用紙」は、電話ではなくインターネットで取り寄せることができる金融機関もあります。取り寄せなくてもホームページからダウンロードできる金融機関もあります。
また、初めに戸籍謄本などを送付しないと「発行請求用紙」を郵送してもらえない金融機関もありますので注意しましょう。
「残高証明書の発行請求用紙」に記入したら、窓口で請求するのと同じもの(戸籍謄本や印鑑証明書・本人確認書類など)を同封して返送します。
発行手数料は、残高証明書を請求する金融機関にあなたが口座を持っている場合は、口座引き落としにしてもらえる場合もありますが、ほとんどの場合は「発行手数料と振込先」が書かれた案内が同封されていますので別途振込手続きが必要です。料金は窓口で請求する場合と同じです。
発行されるまでの日数ですが、だいたい2~3週間程度で郵送してもらえます。郵送に要する日数も含めて考えると窓口で取得するより時間がかかります。
郵送で残高証明書を発行してもらうメリット|時間の節約になる
郵送で残高証明書の発行を請求するメリットは、窓口に行く時間を節約できることくらいでしょうか。
郵送で残高証明書を発行してもらうデメリット|一般の方にはお勧めできない
反対に、郵送で残高証明書の発行を請求するデメリットとして次のようなものがあります。
- 「残高証明書の発行請求用紙」の記載や同封した書類に不備がある場合は、請求が差し戻されるなどして発行されるまでにかなり時間がかかってしまうことがある
- 発行手数料の支払いが手間になったり、振り込み手数料が高くなったりすることがある(ATMで振り込めない口座を指定されることが多く窓口で振込手続きをするため)
- 残高証明書が発行されて郵送されてくるまでの間、提出した戸籍謄本等が利用できない
預貯金の不正使用を調べたければ「取引履歴」を請求
相続が開始した後に通帳を見せないということは、預貯金が不正に引き出されている可能性は否定できないと思います。また、不正に引き出されていなかったとしても、何か後ろめたい事情があるからに違いないのでしょう。
こうしたことを調べるには通帳を見せてもらうのが一番なのですが、相手方がそれに応じないという場合は、銀行等に対して口座の「取引履歴」という証明書の発行を依頼することができます。
「取引履歴」を請求する場合は、いつからいつまでの入出金の情報が必要なのかを記載する箇所があります。そちらにあなたが知りたい期間を特定した上で発行の請求をすることになります。
取引履歴は最長で10年は調査可能
金融機関によっても異なりますが、取引履歴は最長で10年まで遡って発行してもらうことが可能です。
一方で、相続税の申告に際しては、事例によりますが3~7年前まで遡って取引履歴を調査します。これは、相続開始前3~7年以内に生前贈与があった場合に、相続税の課税価格に生前贈与の金額を加算して相続税額を計算するためです。
なお、取引履歴の発行手数料は一般的に残高証明書の発行手数料より高いことが多いです。一部の金融機関では「1日あたり〇円」となるところもあり、数年遡ると何万円にもなることがあるので注意が必要です。
「取引履歴」も相続人の一人から発行の依頼ができる
故人の取引履歴を金融機関に請求するに際して、個人情報保護の観点より、共同相続人の全員の同意を求められることがあるようですが、その対応は誤りです。
被相続人名義の預金口座についてその取引履歴の開示を求める権利を単独で行使することができるというべきであり、他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない(最判平成21年1月21日)。
この様に最高裁の判例で、取引履歴の請求は他の相続人の同意なく、相続人が単独で請求できることが認められています。
取引履歴の発行依頼をする際に必要な書類など手続きは残高証明書と同じ
取引履歴の発行を依頼するためには、次のようなものが必要となります。
- 死亡の記載のある被相続人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 相続人(窓口で請求する人)の戸籍謄本
- 相続人(窓口で請求する人)の印鑑証明書
- 相続人(窓口で請求する人)の実印
- 本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)
つまり、残高証明書の発行を請求する場合と同じです。窓口でも郵送でも請求することができます。
不正使用が判明したらどうするべきか|遺産分割の中で解決可能か?
不正使用のトラブルは法律上は難しい問題となります。不正に使用されたのが死亡前なのか死亡後なのかで対応の仕方が変わってくるためです。
もし死亡後に不正に引き出したというのであれば、引き出した人が引き出した金額を遺産として先に相続したというような形で遺産分割協議を成立させてしまう方法がわかりやすと思います。
もちろんこれは相続人全員の同意が前提となりますので、合意が成立しなければ、相続人全員の話し合いによる遺産分割協議はできませんから、裁判手続き(遺産分割調停や遺産分割審判など)の利用を検討しなければなりません。
また、死亡前に不正に引き出したという場合も、同じやり方が可能です。しかし、死亡前の不正な引出しについては、原則として遺産分割調停や遺産分割審判では審理の対象とはなりません。
不正使用の問題を根本的に解決するためには別の裁判(不当利得返還請求訴訟など)を提起し、その中で主張していく必要があります。
このあたりの事情については、当事務所の別の記事で詳しく解説していますので、もしよろしければお読みください。
結論|通帳を見せてもらえなくても焦る必要はない
以上のように、相続が開始しているにもかかわらず相手から通帳を見せてもらえなくても特に問題がないことがわかります。
そして、見せてもらえない場合の対処法についてもご理解いただけたかと思います。
ただし、通帳を見せてもらえないという時点で今後の相続手続きが難航する可能性は高いと言えます(つまり客観的に見てすでに「争い」が生じていると理解していただくのが良いでしょう)。
いずれにしても、まずは、専門知識を持った相続専門の司法書士や税理士、弁護士(法律事務所)にご相談されることをお勧めします。どの方法がおすすめというものではないので、それぞれの特徴を理解して頂いた上で、状況や経過に即したアドバイスが必要となります。
最後に|いまなら無料相談が受けられます
私たちは、遺産整理をはじめとする遺産相続の手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で20年以上に渡って運営、相続問題・相続に関連する業務に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。
このページでは、「【司法書士監修】相続人が通帳見せてくれない問題|手っ取り早い解決法とは?」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。
このページでお伝えしたかったポイントは次の3点です。
- 相続人の一人から預金の「残高証明書」を請求できるが銀行名は特定できている必要がある
- どの証券会社か分からなくても相続人の一人から「残高証明書」を請求する方法はある
- 預金の不正な引出しを疑う場合は「取引履歴」の発行を請求すればよい
本ページで説明した「残高証明書」や「取引履歴」の発行の請求は、相続人でもできる手続きですが、銀行や証券会社の数が多かったり、請求するための情報が不足していたりすると、個人の力では限界があるかもしれません。
ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用・連絡いただければと思います。
専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。また相続に関連する問題・相続税の申告に強い提携の税理士や弁護士もおりますので、全方向のサービス・サポート・代行・紹介が可能です。
いまなら毎週土曜日に面談(対面・非対面)による無料相談を受付しています。また無料相談は平日も随時実施しています。
お電話(予約専用ダイヤル042-324-0868)か、予約フォームより受け付けています。メールによる無料相談も行っております。いずれも初回無料ですが誠意をもって対応します。お気軽にご利用ください。
東京司法書士会会員
令和4年度東京法務局長表彰受賞
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員(法務大臣認定司法書士)
公益社団法人成年後見リーガルサポート東京支部会員
家庭裁判所「後見人・後見監督人候補者名簿」に登載済み
公益財団法人東京都中小企業振興公社「ワンストップ総合相談窓口」相談員
公益財団法人東京都中小企業振興公社「専門家派遣事業支援専門家」登録