【最新版】法定相続情報証明制度を使ってみる

法定相続情報証明制度(不動産登記規則247条~248条)は、平成29年5月29日から全国の法務局においてスタートした制度です。その後、平成30年4月1日に利用範囲の拡大のため取扱いを変更しています。

相続手続き専門の司法書士が、あらためてこの制度を検証します。

法定相続情報証明制度とは

相続手続きをするには、相続関係を確認するため戸籍謄本の束を、その手続きごとに法務局や銀行、保険会社、税務署等へ提出しなければなりません。

ところが法務局から「法定相続情報一覧図」の交付を受ければ、「法定相続情報一覧図」を戸籍謄本の束の代わりとして各種相続手続きに使うことができます。

これにより、相続手続きがいくつもある場合に、手続きを同時に進めることが可能となり(法定相続情報一覧図は何枚も交付してもらえます)、相続手続きにかかる時間短縮につながると言われています。

ただし、「法定相続情報一覧図」は、その内容を法務局が作成してくれるわけではなく、これを使いたい相続人側で作成する必要があります。

相続人が作った図を法務局に提出し(これを「法定相続情報一覧図の保管および交付の申出」といいます)、その図に法務局から認証文・認証印を入れてもらったものが「法定相続情報一覧図」となります。

戸籍謄本を法務局に提出するだけで「法定相続情報一覧図」は法務局が勝手に作ってくれるものだ、というのは間違いです。

あくまで「図」は相続人側で作成する必要があります。法務局は、相続人が作った「図」に、相続人から提出された戸籍謄本の内容を確認&照合したうえで、法務局のハンコを押して返してくれるだけのことです。

いずれにしても、この制度は、相続登記が未了のまま放置されることにより、所有者不明の土地問題や空き家問題が社会問題となったため、相続登記を促進するための施策の1つとして設けられたものだと説明されています。

法定相続情報証明制度を利用する前に…

法定相続情報証明制度を利用する前に知っておきたいことが6つあります。

必ず必要な手続きか?

法定相続情報一覧図は相続手続きをする際に必ず必要なものではありません

インターネットの不確かな情報の中には、法定相続情報証明制度という新しい制度ができたので積極的に利用すべきとの記載も散見されるのですが、決してそんなことはありません。

制度を利用すべきか否かはケースによって異なります。

利用した方が良い場合、利用しなくても良い場合

それではどのような場合に利用した方が良いのでしょうか。また反対に、利用しなくても良い場合とはどのようなケースでしょうか。対比の表を作成しました。

利用した方が良い場合利用しなくても良い場合
■いくつもの相続手続きを同時進行でやらなければならない場合

■相続税の申告期限が迫っていて相続手続きを急いでいる場合

■収集した戸籍謄本の通数が多い場合

■時間に余裕があり、相続手続きを急いでいない場合

■相続手続きを同時進行でやる必要もなく、順次行えば大丈夫な場合

■収集した戸籍謄本の通数が少ない場合

例えば、不動産の名義変更と複数の金融機関の相続手続きがある場合、まずは金融機関の相続手続きを窓口で行い(窓口で行えば戸籍謄本はその場で原本を返却してもらえます)、その後、不動産の登記手続きを行うというやり方があります。

このような手順を踏むと、結果として法定相続情報一覧図を利用する意味はありません。

たしかに数個の相続手続きが必要なケースではありますが、銀行手続きを直接窓口で行う限り、提出した戸籍謄本の原本はその場で返還されるため、銀行が複数あってもその戸籍謄本を窓口毎に提出すれば足りるからです。

しかし、不動産名義変更や金融機関の相続手続きを窓口ではなく郵送等で行う場合は、金融機関等に戸籍謄本を一定期間預けることになりますので、預けている間は別の相続手続きができなくなってしまいます。ですから手続きを止めないために法定相続情報一覧図の利用を検討することになります。

このように、法定相続情報証明制度を利用すべきか否かは、個々の事例によって異なります。
しかし、大雑把に結論を言うのであれば、よほど手続きを急いでいない限りは利用する意味はあまりないと考えます。

「相続開始後○か月内」など利用時期の制限はあるか

法定相続情報証明制度を利用するのに、時期的な制限はありません。相続が開始してから1年後であろうと10年後であろうと、法定相続情報一覧図の交付の申出をすることができます。

手数料はかかるか?

法定相続情報証明制度は無料で利用できます
つまり、法定相続情報一覧図の発行手数料は(何枚でも)無料ということです。

ただし、以下でお話ししますが、法定相続情報一覧図を発行してもらうためには、戸籍謄本などの必要書類をいったん法務局に提出するのですが、戸籍謄本などの取得には当然のことながら所定の手数料が必要です。

また、以下で別途説明しますが、郵送で申請することも可能とされています。この場合の往復の送料も当然のことながら自己負担です。

法定相続情報一覧図は即日発行してもらえるか

即日発行してもらうことはできません
登記申請と同じように、法務局の窓口に書類を提出してから、1~2週間程度の時間がかかります。法務局の混雑具合や業務処理状況によって異なりますが、1週間以内で発行されることもあります。

法務局に戸籍謄本等を提出している間は、戸籍謄本等は使えませんので、他の相続手続きはできなくなってしまいます。提出した戸籍謄本等は、発行時に返却されます。

再発行(再交付)してもらえるか

たとえば追加で法定相続情報一覧図が必要となった場合でも再発行は可能です。一度提出されたデータは、その法務局で提出日の翌年から起算して5年間保管されます。

ですから、はじめに提出した法務局に対して5年間は再交付の申出ができます。再交付を受ける際も発行手数料は無料ですが、再交付の申出ができるのは、最初に申出をした方に限られます。

例えば最初の手続きをAが行っている場合、Bから再発行の申請がされても認められないということです。再発行の申請もAが行わなければなりません。

もし、Bからの再発行の申請が予想される場合は、当初の申請をAとBの連名でしておけば大丈夫です。以下で別途説明しますが、申請は必ずしも1名からでなく、複数名からすることもできます。

法定相続情報証明制度を利用するメリットとデメリット

この制度を利用するメリットは、相続手続きが多方面にわたる場合、いちいち戸籍謄本の束を出す必要がなくなるという点にあります。

この制度を利用するデメリットは特にありませんが、以下で説明するような一連の手続きをとる必要があり、それを煩雑と感じるかもしれません。

法定相続情報証明制度の具体的な手続き

それでは、法定相続情報一覧図を手に入れるまでの手続きを順にお話しします。

1.まず必要書類を集める

法定相続情報証明制度の手続きにあたって、集めなければならない書類があります。通常の相続手続きでも必要となるものばかりです。3カ月以内のものである必要はありませんが、一般論として、相続開始後に取得したものが必要です。

必要書類は下に挙げる①から⑥までの6点セットですが、①から④は必ず添付しなければならないのに対して、⑤⑥は必要に応じて添付すべき書類となっています。

また、必要ない書類としては、「印鑑証明書」「遺産分割協議書」「権利証」「登記識別情報通知書」「相続放棄申述受理証明書」などがあります。

①被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡するまでの連続した戸籍謄本および除籍謄本

被相続人の出生からの戸籍が必要な点に十分注意してください。不動産登記規則第247条3項2号に「出生時からの戸籍」とありますので、生殖可能年齢(12~13歳)からの戸籍では足りません。

しかし除籍謄本が震災等により滅失しているため出生までの戸籍を取得できないというケースもあります。この場合は、当該除籍謄本に代えて、「除籍謄本が交付できない」旨の市区町村長作成の証明書を添付すれば大丈夫です。

また、相続登記の申請と法定相続情報一覧図の交付申請を同時にすることは手続き上可能とされているのですが、同時にした場合は生殖可能年齢からの戸籍謄本で足りるという取扱いになっています。

②被相続人の住民票の除票または戸籍の(除)附票

被相続人の最後の住所が記載されているものです。

ただし、これらの書面は役所での保存期間が5年とされているため、すでに死亡から5年以上経過している場合は、取得不能となっているかもしれません(5年以上経っていてもまれに発行されることもあるので請求してみないと判断できませんが…)。

下で別途説明しますが、相続人側で作成する「図」には、被相続人の最後の住所を記載しなければなりません。この最後の住所は、住民票の除票または戸籍の(除)附票に記載されている死亡時の住所を指します。

しかし、これらの書面の添付が不可能である場合、「図」には住所は書けません。その際は「図」には最後の住所の代わりに「最後の本籍」を記載すれば足りるとされています。したがって、これらの書面が入手できなくても法定相続情報一覧図の交付は受けられますので安心して下さい。

ただし、最後の住所が記載されていない法定相続情報一覧図のみで、その後の相続手続きができるかどうかは微妙なところです。少なくとも不動産の相続登記をすることは認めれられていません(登記申請の時には不在住証明書等別途の書面を追加で取得して添付しなければなりません)。

また、最後の住所が記載されていない法定相続情報一覧図で金融機関の手続が可能かについては、各金融機関で取り扱いが異なりますので、窓口等で事前の確認が必要です。

③各相続人の戸籍謄抄本

相続人全員の現在の戸籍謄本、または戸籍抄本です。

④申出人の本人確認資料

今回の申出人(相続人の代表となって手続きを進める方のこと。誰が申出人になれるかは以下でお話しします)の、住民票や、運転免許証のコピー(原本と相違ない旨をコピーに書いて申出人の押印が必要です)、マイナンバーカード表面のコピー(原本と相違ない旨をコピー書いて申出人の押印が必要です)などです。いずれか1つ添付すれば足ります。

コピーへの書き方は「これは原本と相違ない 司法太郎 印」とすれば大丈夫です。

⑤各相続人の住民票(任意的添付書面)

法定相続情報一覧図に各相続人の住所まで書くか否かは申出人の自由とされています。仮に相続人の住所まで書く場合は、住民票を添付しなければなりません。

法定相続情報一覧図に相続人全員の住所まで書くかどうかは申出人の自由ですが、その後の相続手続きのことまで考えると、書いておいた方が良いでしょう。

なお、あまり意味がないかもしれませんが、法定相続情報一覧図に相続人の一部だけ住所を書くことも認められますので、その場合、住所を記載した相続人だけ住民票を添付することになります。

⑥委任状(任意的添付書面)

法定相続情報証明制度の手続き(法定相続情報一覧図の作成・交付等の手続き)を司法書士(弁護士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・行政書士・海事代理士なども可)に依頼することもできます。

司法書士等に手続きを依頼した場合は、委任状が必要になります。ただし、一般的に委任状は司法書士等が用意します。したがって資格者に手続きを依頼する場合は、申出人側で委任状を用意する必要はありません。

また、申出人の親族が代理人となって本手続きを行うことも認められています(不動産登記規則247条2項2号)。例えば申出人はAであるが、多忙のためその手続きをAが自己の親族Bに依頼するというケースです。このように親族が代理する場合は、AとBが親族関係にあることがわかる戸籍謄本(上記①の書類で親族関係がわかる場合は別途不要)と、AからBに対する委任状を添付する必要があります。

なお、法務省の案内ページをリンクとして記載します。
【法定相続証明情報の具体的な手続きについて】|法務省ホームページ
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html

2、法定相続情報一覧図を作ってみる

つぎに法定相続情報一覧図を作成します。今回の相続だけに関係がある家系図みたいなものです。

図ではなく、相続人等を箇条書きで記す「列挙形式」という作成方法も認められているのですが、あまり一般的でないので「家系図方式」で書いた方が良いでしょう。

家系図ですから、相続人それぞれで内容は異なってくるはずです。一般的な記載例が法務省のホームページにありますので、リンクとして以下に記載します(ちなみに「列挙形式」の記載例もあります)。

この記載例の中からご自分のケースに該当するもの、またはより近いものを選択して作成することが可能です。

【主な法定相続情報の一覧図の様式及び記載例】|法務省ホームページ
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html

仮にご自分のケースに該当するもの、またはより近いものが見つからない場合は、その相続はかなり特殊な相続関係であると認識した方が良いかもしれません。

以下でも説明しますが、かなり特殊な相続関係の場合(例えば代襲相続や数次相続が入り乱れて発生しているケース等)は、せっかく法定相続情報一覧図を作成しても、金融機関等から別途戸籍謄本の提出を求められる可能性もあります。

繰り返しになりますが、法定相続情報一覧図の作成は義務ではありませんから、事前に相続手続きの専門家に、その必要性を相談するのが良いでしょう。

それでは、法定相続情報一覧図の作成で注意すべき点や改正点(平成30年4月1日より実施)を挙げます。

【法定相続情報一覧図作成の注意点】

①A4の白用紙を使用。下5センチは認証文が入るので空けておく

②手書きでもパソコンで作成したものでもよい

③各相続人の住所は任意記載だが、記載すると相続登記手続きの際、住民票を省略できる(平成30年4月1日実施)

④相続放棄した者も記載する

⑤廃除された者は記載しない

⑥遺産分割協議によって実際には相続しない相続人も記載する

⑦「2分の1」などの相続分は記載しない

⑧被相続人の住所は必ず書くが、最後の本籍を記載してもよい(平成30年4月1日実施)

⑨続柄の記載(「子」「配偶者」など)は必ず書くが、戸籍記載通りの続柄(「長男」「長女」など被相続人からみた続柄)を書けば、相続税の申告書の添付書類として使える(平成30年4月1日実施)

⑩被相続人が日本国籍を有しない場合や、相続人中に1人でも日本国籍を有しない者がいる場合は、この制度は利用できない。ただし帰化していれば利用できる。

⑪被相続人の死亡以前に死亡した者(生きていれば相続人であるがすでに死亡している者)は記載しない。ただし、その者の代わりに相続する代襲相続人がいる場合は、「被代襲者(年月日死亡)」と記載し、氏名・住所・生年月日は記載しない。

⑫被相続人が死亡後、その相続人が相続手続きをしないでいるうちに死亡し、次の相続が発生している場合は、すべての相続を1枚の法定相続情報一覧図にまとめることはできず、被相続人ごとに法定相続情報一覧図を作成し、それらを組み合わせて対応する。

若干説明が必要な項目もありますので、以下に簡単に説明します。

まず、④⑤⑥についてです。法定相続情報一覧図は、一言で言うと戸籍謄本に代わる書面です。ですから、戸籍謄本に記載されている情報だけを載せることになります。

④の相続放棄の旨は戸籍謄本には記載されません。相続放棄の手続は裁判所に申述して行うものですが、裁判所から正式に相続放棄が認められても、その旨は戸籍謄本には一切記載されません。その結果、相続放棄した方は、法律上は相続人でないにもかかわらず法定相続情報一覧図に相続人として記載しなければなりません。

⑥についても同様です。遺産分割協議によりある相続人の相続分がゼロと合意しても、その事は戸籍謄本には一切記載されません。ですから法定相続情報一覧図には相続分がゼロの相続人も記載しなければなりません。

しかし、⑤の廃除については戸籍謄本に記載されます。廃除は家庭裁判所の審判により認められる手続きです。廃除が家庭裁判所で認められると、その方は相続人資格を喪失します。相続人資格を失っていることが戸籍謄本に載りますので、法定相続情報一覧図には記載しません。

次に特殊な相続のケースです。⑪⑫です。⑪が代襲相続、⑫が数次相続と呼ばれる形態です。

⑪の代襲相続とは次のような場合です。

被相続人甲の遺産を誰が相続するかという問題です。甲の子であるAが存命であれば、甲の遺産はAが相続します。しかし、甲が死亡するよりも前にAは亡くなっていますので、本来Aが相続すべきであった遺産はAの子Bが相続します。

つまり、甲の遺産はBが相続します。この時、法定相続情報一覧図には被代襲者Aの氏名・住所は記載しない扱いです。その代わり、「被代襲者(平成29年●月○日死亡)」と記載します。ですから、法定相続情報一覧図を見ただけではAの氏名・住所は一切分からないことになります。

いまのところ当事務所ではそのような事例はありませんが、金融機関等によっては、被代襲者の氏名を確認したいという趣旨で、別途戸籍謄本の提出を要求してくることも予想されます。

代襲相続については、本ウェブサイトの別の記事「【保存版】代襲相続とは|代襲相続をわかりやすく|司法書士監修」で詳しく解説していますので、もし宜しければお読みください。

【保存版】代襲相続のすべて|代襲相続をわかりやすく|司法書士監修

⑫の数次相続とは次のような場合です。

被相続人甲の遺産を誰が相続するかという問題です。被相続人甲が死亡後、その相続人Aが相続手続きをしないでいる間に死亡して、最終的にBが相続したというケースを数次相続と呼びます。相続が順番に発生しているというイメージです。

⑪の代襲相続とは異なり、⑫の数次相続では、法定相続情報一覧図を1枚でまとめることはできません。図にあるように、「被相続人甲(相続人A)」の法定相続情報一覧図①と、「被相続人A(相続人B)」の法定相続情報一覧図②を別々に分けて作成する必要があります。

なお、法定相続情報一覧図①にはAの死亡年月日は記載しません。法定相続情報一覧図は、被相続人甲の死亡時点(平成29年)の相続関係を表すものです。平成29年時点ではAはまだ存命ですから、法定相続情報一覧図①ではAはあたかもまだ生きているかのように記載をします。そして法定相続情報一覧図②にAの死亡年月日を記載します。

しかし、この2つの法定相続情報一覧図①②を添付するだけで、甲からBへの相続手続きができるかどうかは微妙な問題です。法定相続情報一覧図①に記載されているAと、法定相続情報一覧図②に記載されているAは必ずしも同一人物とは限らないだろうという理屈で、例えば相続登記を行う場合は別途戸籍謄本等が必要になると解されています。

したがって、数次相続も⑪の代襲相続と同様に、法定相続情報一覧図だけでは相続手続きができないこともあるので、本当に作成する必要があるのかどうかを相続手続きの専門家に相談した方が良いでしょう。

そして、③⑧⑨が平成30年4月1日より実施されていますのでご注意下さい(利用範囲の拡大)。
念の為、法務省のページをリンクとして記載します。

【法定相続情報証明制度の利用範囲の拡大について】|法務省ホームページ
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000018.html

3、「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に記入、法務局へ提出

いよいよ最終段階です。法務局所定の「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要を事項を記載します。

上記で説明した必要書類、相続人側で作成した法定相続情報一覧図、そして申出書をセットで法務局へ提出します。この申出についての注意事項は以下の通りです。

①そもそも誰が申出人になれるのか?

相続人であれば申出人になれます。相続人中の1名から申出ができます。

相続人が複数いる場合、連名でも申出はできますが、その必要性は少ないように思います。しかしすでに説明したように、申出人以外から再交付の申出をする予定があれば、1名からではなく連名で申出を行った方が良いでしょう。

申出人については次の規定があります。

(法定相続情報一覧図)
第247条第1項
表題部所有者、登記名義人又はその他の者について相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、その相続人(第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る。以下本条において同じ。)又は当該相続人の地位を相続により承継した者は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対し、法定相続情報(次の各号に掲げる情報をいう。以下同じ。)を記載した書面(以下「法定相続情報一覧図」という。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をすることができる。
一 被相続人の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日
二 相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄電子政府の総合窓口e-Gov

申出人は、「その相続人(略)又は当該相続人の地位を相続により承継した者」とありますが、「当該相続人の地位を相続により承継した者」とは誰の事を言うのでしょうか。

これは上記で説明した数次相続のケースにおける最終の相続人であるBを指します。BはAの相続人ですから、Aについての申出ができるのは当然です。しかし、Aだけでなく甲についての申出も可能であることを明記したのが本条文です。

なお、すでに解説しましたが、申出人は、自分の親族を代理人として申出の手続をすることもできます。あくまで書類上の申出人は自分として、実際の窓口の手続は親族にしてもらうというイメージです。

申出人の親族とは、申出人の6親等内の血族、申出人の配偶者、申出人の3親等内の姻族を言います(民法725条)。

また、申出人は自ら手続を行うのではなく、司法書士などの資格者代理人に依頼して手続きを行うこともできます。資格者代理人に依頼する場合は費用がかかりますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

必要書類の収集から代行してもらえる事務所もありますし、法定相続情報一覧図の作成だけを行ってくれるところもあります。自分にとって必要な対応をしてくれる事務所を選びましょう。

②管轄|どこに書類を提出するのか

法務局(登記所)に提出します。次の場所の中で、自分の都合の良い法務局で大丈夫です。申出人が自由に選択できます。

【法定相続情報一覧図の交付の申出管轄法務局】

①被相続人の死亡時の本籍地を管轄する法務局

②被相続人の死亡時の住所地を管轄する法務局

③被相続人を所有権の登記名義人とする不動産所在地を管轄する法務局 

この3つの中から、申出人に都合の良い場所を選択します。以下でも掲げますが、申出内容に不備があった場合はすみやかに訂正する必要がありますから、その点を考慮すると、申出人にとって便利の良い場所の法務局が良いかもしれません。

③申出書の様式、記入例

必要事項を書き入れるだけのものです。法務省のホームページをリンクとして記載します。書き方の見本もあります。

【申出書の記入、様式例】|法務省ホームページ
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html

④書類の提出方法

法務局の窓口に直接持参するか、郵送により行います。現時点でオンラインによる手続きはありません。

郵送でする場合は、切手を貼り返信先を書いた返信用の封筒も同封します。つまり、郵送料は申出人負担ですから注意しましょう。

手続には1~2週間程度の時間がかかります(1週間以内で発行されることもあります)。窓口に書類を提出しても即日発行されることはありません。受付時に窓口係より「○月△日に書類を受け取りに来てください(完了予定日)」と案内されます。

⑤不備があった場合

相続人側で作成し提出された法定相続情報一覧図に誤りや遺漏がある場合は、法務局の担当者より申出書に記載した電話番号に後日連絡があります。

法務局で勝手に訂正してくれることはないので、速やかに訂正したり、正しい一覧図を提出し直したりすることになります。

また添付書類に不足がある場合(例えば戸籍謄本が足りない等)も一定の期間内に補完するように電話連絡があります。法務局から何も連絡がなければ不備はなかったと理解して完了予定日を待ちます。

なお、不正な申出に対しては罰則は設けられていません。しかし、戸籍謄本を不正に取得すれば戸籍法の規定により処罰されます。

⑥書類を受領しに行く

完了予定日以降(申出書を提出した日から3か月以内)に、書類を提出した法務局に再度行きます。そこで、「法定相続情報一覧図の写し」と返却書類(提出した戸籍謄本等)を受けとります。

受け取りには申出書に押印した印が必要になります。

なお、相続人側で作成し、法務局に提出した「法定相続情報一覧図」は5年間法務局で保管されます(その間再交付が可能であることは上記で解説しました)。

ですから、法務局で発行される書類は、正式には「法定相続情報一覧図の写し」という呼び名になります。法務局で保管されているデータが「原本」で、申出人に交付されるものは「写し」というイメージです。

郵送で申出をした場合は、手続き完了と同時に書類が送付されるだけですから特に何もする必要はありません。

ちなみに、申出をした相続人以外の者から、法定相続情報一覧図の写しの交付がされているか否かについて法務局に問い合わせ(照会請求)することはできません。交付の有無を照会する制度は定められていないためです。

法定相続情報一覧図を使ってみる

  • 法務局における不動産の相続登記手続き
  • 金融機関における預貯金の相続手続き
  • 証券会社における有価証券の相続手続き
  • 保険会社に対する保険金請求手続き
  • 税務署における相続税申告手続き

など広く利用することができます。平成29年に法定相続情報証明制度がスタートした時は、法務局を除いてはほとんど利用はできませんでした(周知徹底されていなかったのです)。しかし、現在においては、経験上、ほとんどの相続手続きで利用が可能となっています。

しかし、実際に使ってみて分かることは、「これ1枚では手続できないんだなあ」という事だと思います。

例えば金融機関で預貯金の相続手続きを行うという場合、仮に法定相続分通り受領するにしても金融機関所定の用紙に相続人全員が署名、実印により押印して、さらに相続人全員の印鑑証明書の添付を要求されます。

金融機関が数機関に渡る場合、その度に署名・押印、印鑑証明書の提出が求められます。

さらに、遺産分割協議により遺産分けを行った場合は、遺産分割協議書と印鑑証明書の提出をその度に要求されるため、遺産分割協議書と印鑑証明書を金融機関の数だけ予め準備しておかないと、すべての金融機関の相続手続きを同時進行で行うことは不可能です。

つまり、「法定相続情報一覧図を作っておけば便利だ」というのは、戸籍謄本のかわりに法定相続情報一覧図の写しを提出すれば足りるというだけで、戸籍以外の相続を証する書面(たとえば遺産分割協議書や相続放棄申述受理証明書、印鑑証明書など)は、これまで通りその都度提出しなければなりません。

そうであれば、戸籍以外の相続を証する書面にあわせて、戸籍謄本もその都度提出すれば事は足りるわけで、法定相続情報一覧図をわざわざ用意する必要はないとも言えます。

なお、相続手続きで使用する戸籍謄本は原則的には1通用意して置けば足り、たとえば金融機関の数だけ取得しておく必要はありません。その度に原本は返却してもらえます(生命保険金・年金の請求などでは原本は返還されない場合もあります)。

法定相続情報一覧図を作成することが、自分の相続手続きを速やかに終わらせるために必要なものかどうかは、相続手続きの専門家に相談するのが良いでしょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「【最新版】法定相続情報証明制度を使ってみる」についてお話ししました。

法定相続情報一覧図が必要な場合と不要な場合があることはお分かりいただけたでしょうか。

当事務所では、戸籍謄本等の必要書類の代理取得から、一覧図の作成、交付の申出まで、その全部をまとめて、あるいは一部の手続だけ等、フレキシブルに個別の事情に応じて受け付けています。

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相続手続きの費用はいくら位かかるのか、どの位の期間で完了するのか、遺産分割の話し合いをどのように進めていけばよいのか、様々な疑問があることと思います。

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