【司法書士監修】自筆の遺言書の作成方法|簡単なアドバイス

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遺言書を法務局が保管する新しい制度がすでにスタートしています。遺言書には大きく分けて公正証書によるものと、自筆によるものの2つがありますが、法務局が保管するのは自筆による遺言書です。

昔から自分の財産分配を円滑にするための方法や相続税対策に熱心な方(いわゆる富裕層の方)は、公正証書による遺言を作成されてきました。法務局による遺言書の保管制度が始まったことにより、それほど資産がない方でも手軽に遺言を預けることができるようになりましたので、自筆の遺言書は今後より注目を集めていくことでしょう。

しかし、いったい何人の方がこれまで自筆の遺言書を作ったことがあるのでしょうか。おそらく初めて遺言書を書くという方がほとんどでしょう。

そこでこのページでは、過去に当事務所で公開してきた遺言書に関する様々な記事の紹介も含めて、これまであまり取り上げなかった「細かいこと」「一般の方が気になること」を中心にまとめてみました。

遺言書の読み方

「遺言書」の読み方についてです。日常用語としては「ゆいごんしょ」が一般的でしょう。法律用語としては「いごんしょ」と読みます。弁護士や司法書士など法律に携わる職業人は「いごんしょ」と言います。銀行や不動産業者の方は「ゆいごんしょ」と言う方が多いように感じます。意味は同じですからあまり気にしないでください。

なお「遺言書」よりも「遺書」の方が一般的にはよく使われる言葉かも知れません。しかし法律上(六法全書の中で)は「遺書」という用語はありません。ただしタイトルに「遺言書」と書かれていようが「遺書」と書かれていようが、そのこと自体は何ら問題ではありません。裁判所も含めて私たち専門家は内容がどのように書かれているかにのみ注目します。

遺言書は自分で作れる

自筆の遺言書は自分で紙に書くだけの話ですから、思い立った時にすぐ作ることができます。文例はインターネットで検索すれば山のように出てきます。その中で自分に合ったものをアレンジして使えば、法的に正しい内容になっているか否かは別として、思い通りのものは作れるわけです。

ただし、法律上形式的に有効な遺言書として認められるためには、いくつかの要件をクリアしなければならないのでその点は注意してください。と言ってもそれほど難しい要件ではなく、次のようなものです。

  1. 自分が手書きで作る
  2. 作成の日付を入れる
  3. 自分の名前を入れる
  4. 自分の押印をする

この程度のものです。この程度のものですが1つでも欠けると無効となります。自筆の遺言書に立会人や証人は必要ありません。

なお自筆の遺言書というものは、自分自身の意思で作成するのがポイントなので、他人が代わって作成することはできません。「親が認知症なので息子の自分が代筆した」は許されません。認知症のような判断能力が劣る方は原則として遺言書は作れません(事理弁識能力を回復したときに医師2人以上の立会いがあれば可能ですが実際問題不可能に近いでしょう)。成年後見人が代わりに作成することもできません。これは公正証書遺言でも同じです。自筆の遺言書作り方についてはこちらのページで解説しています。

■遺言を残すときに最初に読むページ【司法書士監修】

遺言

遺言書を病室で書く場合の注意|筆跡鑑定

余命宣告などを受けて、病室で遺言書を作る方もいます。もちろん自筆で遺言書を作ることもできますが、病状や薬の副作用等で意識がもうろうとした中で作成しようとする場合は注意が必要です。

なぜならそのような状況で文字を書こうとすると、どうしても筆跡が乱れたものとなり、死後に相続人の一部から「本人の筆跡とは違うので本人が書いたものではないのではないか」という異議申し立てが出たりします。法律上、遺言書を無効にしたいというのであれば、そのような相続人が原告となって「遺言無効確認の訴え」を提起し、裁判上争うことになります。遺言書があることによってトラブルになってしまう典型的なパターンです。

いずれにしても、訴訟になってしまった場合、仮に筆跡鑑定を行っても白黒はっきりしないことも多く、結局和解に持ち込まれ遺言書通りには相続できない可能性もあります。もし病床や施設に入所中に遺言を作成したいというのであれば公正証書で作ることをおすすめします。多少の出張料を支払えば病床でも施設でも自宅でも出張してもらえます。

遺言書の書き方について細かいこと

自筆の遺言書が形式的に有効となるための要件は上に揚げた通り4つですが、その他これまで当事務所の無料相談で質問があった「細かいこと」について列挙します。

遺言書に生年月日は書くのか?

遺言書に生年月日を書く必要はありません。しかし書いてはいけないという決まりもありません。つまり書いても書かなくてもどちらでも良いのです。ただし、遺産を受け取る方が相続人ではない第三者の場合は、その方を厳密に特定する趣旨で、本籍・住所・生年月日を書いたりすることはあります。なぜなら、本籍や住所が変わることはあっても生年月日が変わることはないからです。

遺言書にページ番号は書くのか?

遺言書にページ番号を書く必要はありません。ただし、法務局に遺言書を保管する方は各ページに通し番号を入れてください。法務省の案内に「遺言書本文・財産目録には各ページに通し番号でページ数を自書してください」と書いてあります。

ちなみに「財産目録」とは不動産の具体的場所や預貯金口座等を詳細にまとめた書類のことです。必ず作成すべきものではありませんが、財産が多い方には遺産をまとめて相続人に知らせるために便利な書面です。遺言書の本文と一体となるべき書類ですが、財産目録については手書きで作る必要はなく、パソコン等で作成してプリントアウトしたものでも大丈夫です。通帳のコピーや登記事項証明書を財産目録の代わりにすることもできます。詳しくは法務省の自筆保管制度の公式案内のページをリンクに揚げておきます。

■遺言書の様式の注意事項|法務省

遺言書を電子化|動画で|ビデオで

自筆の遺言書をPDFなど電子化すること自体は物理的に可能です。しかし、遺言書のPDFをプリントアウトしても遺言書の現物そのものではないため、遺言書の原本とは呼べないでしょう。つまりPDFで相続手続きは行えないという意味です。

ちなみに、自筆の遺言書を法務局に保管すると、法務局は原本そのものを書庫等で保管すると同時にデジタル化して電子情報としても保存します。そして相続が開始した場合には、相続人は保管されている遺言書の原本の返却を受けるのではなく、「遺言書情報証明書(デジタル化されたもの)」を請求してこれに基づいて相続手続きを行うことになります。

なお、自筆の遺言書は手書きによりますから、病気や高齢が理由で筆記が難しい場合、動画やビデオなど録音物として遺言を残すことはできないかが問題になります。残念ながら動画やビデオによる録音の遺言は認められません。

手書きが難しい場合は公正証書による遺言をおすすめします。公正証書による遺言は、遺言の内容を公証人に話して伝えればよいので筆記する必要はありません。もちろん公正証書遺言も自分の名前を自書しなければなりませんが、それが困難な場合は法律の規定に基づき公証人が代書することになっているので手続き的に安心です。

遺言書は縦書きか横書きか

遺言書が縦書きか横書きか、については決まりがありません。つまりどちらでも良いという意味です。遺言書の保管について説明する法務省の公式ページの記載例は横書きですが、別に縦書きであっても何ら問題はありません。遺言書には日付などをはじめとして数字を記載する箇所が多いので、横書きの方がどちらかと言うと書きやすいかもしれません。

ちなみに近年の公正証書の遺言書は横書きのものがほとんどです。しかし昭和に作成されたものはほとんどが縦書きでした。

遺言書は連名でつくると無効か?

遺言書は連名で作成すると無効です。具体的には夫婦が連名で1つの遺言書を作成した場合です。法律上このような遺言は何ら効力が生じないとされています。夫婦共同遺言については、別のページで詳しく解説しています。

■【司法書士監修】夫婦の共同遺言は有効か|無効な遺言の活用法

【司法書士監修】夫婦の共同の遺言は有効か|無効な遺言の活用法

エンディングノートが遺言書になるか?

ウィキペディアによると「エンディングノートとは、高齢者が人生の終末期に迎える死に備えて自身の希望を書き留めておくノート」を言います。高齢化社会の現代において終活はブームですから、コクヨをはじめいろいろな会社から発売されています。

遺言書は書き込み式のものであるため、自筆の遺言書が法律上形式的に有効となるための「自書」という要件を充たしません。ですから「エンディングノート=遺言書」とはなりません。一般論としてはエンディングノートは遺言書としては使えないと解釈されるでしょう。

しかし、エンディングノートの中に(たとえば余白ページなど)、特定の方に財産を相続させるなどの遺言の全文・氏名・日付を自書しさらに押印しているページがあれば、そのページを自筆の遺言書と解釈する余地は十分にあると考えます。

メモ書きが遺言書になるか?

上で説明した「エンディングノートが遺言書になるか?」と同じ結論です。たとえ広告に裏に書いたメモ書きであっても、特定の方に財産を相続させるなどの遺言の全文・氏名・日付を自書しさらに押印しているものであれば、遺言書として有効です。

法務局に保管する遺言書は形式が決められていますが(例えばA4の用紙で作成し裏面には何も書いてはいけない等)、そうでない限り、ルーズリーフであろうとメモや備忘録であろうと関係ありません。

遺言書を鉛筆で書いてもいいのか

遺言書を鉛筆で書いても法律上は有効です。しかし遺言書を法務局に保管する場合には、ボールペンなどの消えにくいもので作成してくださいと言う案内がされています。鉛筆で書いた場合、偽造や変造がされやすくなりトラブルの元ですから、ボールペンなどで作成すべきでしょう。

遺言書を封筒に入れる必要があるか?

遺言書を封筒に入れる必要はありません。法務局へ保管する場合は、遺言書は封筒に入れてはいけないことになっているので注意しましょう。しかし法務局へ保管しない場合は、偽造や変造を避けるためにむしろ封筒に入れて封をしておいた方がその後のトラブルの防止になります。

封のされた遺言書は相続人が勝手に開封することはできず、裁判所で開封しなければいけないことになっているため(これを遺言書の検認と言います。検印ではありません)、なおいっそうトラブルの防止につながるからです。

遺言書に割印や契印は必要か

自筆の遺言書が数ページになってしまったとしても、割印や契印は必要ありません。これは法務局に遺言書を預ける場合も同じ扱いです。また、遺言書が数ページになっても全てのページに押印をする必要もありません。しかし、上で説明したような「財産目録」を手書きではなくパソコン等で作成した場合は、作成した財産目録の全部のページに氏名を自署、かつ押印する必要があります。

遺言書への銀行口座や金額の書き方

相続・遺贈する財産が銀行預金の場合、遺言書に銀行口座や金額をどのように書けばよいのでしょうか。特定の銀行の特定の口座の預金を相続・遺贈するのであれば、できるだけ細かく特定しておいた方が良いでしょう。銀行名、支店名、種別、口座番号は記載するべきです。

その一方で、「◯◯銀行△支店の預金は全部Aに相続させる」というのであれば、わざわざ口座番号まで特定する必要はないと言えます。結局、その遺言書に基づいて遺産分けが正確に行えるかどうかという視点が不可欠になりますので、どこまで特定して記載すべきかについて素人判断は非常に危険です。もし不安であれば、銀行名、支店名、種別、口座番号など必要な情報は全部盛り込めばよいでしょう。

なお、口座の預金のうちいくら相続させるかを決める場合は、「金500万円を相続させる」のように具体的な金額を記載する必要がありますが、「全部相続させる」場合はわざわざ金額を記載する必要はないでしょう。

遺言書の作成後に住所変更があったときは

法務局に遺言書を保管している場合は、遺言者本人の住所や氏名に変更があったときは、すみやかに変更した旨を届け出る必要があります。詳しくは別のページで解説しています。

■自筆証書遺言の保管制度のすべて|最新版【司法書士監修】

自筆証書遺言の保管制度のすべて|最新版【司法書士監修】

法務局に保管していない場合は、別にそのままでも構いません。しかし、自筆の遺言書の場合、変更後の住所や氏名で再度遺言書を書き直したほうが安全のように思います。ちなみに公正証書で遺言を作成した場合には、わざわざ作り直すようなことは一般的にはしません。

遺言書の作成後に財産が変化したら?

遺言書の作成後に財産が変化したら、新しい遺言書を作成し直すべきなのでしょうか。この問題については、作成し直す必要があるケースと、必要がないケースとがあり、事例によって結論は正反対になります。

一般論として言えば、多少の財産の変化があっても再度作り直す必要はないといえるでしょう。預金が遺産のほとんどを占める場合、生活資金として預金の残高は日々変化(主に減少ですが)するので、その度作り直していたのではキリがありません。

しかし、当初考えていた相続人への配分が、財産の変化によって大きく変わってしまうような場合には、遺言書の内容を再度検討し直さなければならないでしょう。

なお、遺言書で「Aに自宅を相続させる」となっていたにもかかわらず、生前に自宅は売却してしまったのであれば、遺言の内容と抵触する処分行為をしたとして、その項目に関しては何らの変更手続きなくして無効となります。遺言書全部が無効となるのであはなく、抵触する部分だけが無効になります。

このように、遺言書の作成後の財産の変化については、法律上も税務上も難しい問題がありますから、専門家に相談したうえで、その後の対応を検討する必要があります。

遺言書で祭祀承継を決められるか

お墓や仏壇を承継すべき者を遺言書であらかじめ指定することができます。このような指定があらかじめない場合には、慣習に従って従うことになり(たとえば長男など)、慣習も明らかでない場合には家庭裁判所が定めます。

法律上は遺産分割協議にはなじまない事項ではありますが、実務的には相続人の合意で決定する場合が多いです。いずれにしても遺言書で指定してあれば、相続人が気を揉む必要もないので安心です。

遺言書の作成で気を付けるべきこと

今回このページで取り上げたのは、自筆の遺言書の書き方に関する細かいことが中心でした。法務局の遺言書の保管制度の発足に伴って、遺言書を自分で書こうという方が増えてくるのは大変結構なことです。しかし、これまで何の知識もない方がいきなりまともな遺言を書けるかというと、かなり危険な気がします。

確かに書籍やインターネット上の情報をもとにある程度のものは作れますし、満足感は得られるはずです。しかし、このページで説明した「書き方」の問題の一例を紹介するだけでもこれだけのボリュームとなりました。遺留分や相続税をはじめとする「法律的な内容」の問題となったら、一般の方には太刀打ちできないはずです。

そこで、自分で遺言書を作成した場合(あるいはこれから作成しようとする場合)、その内容を専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。もちろん費用はかかりますが、遺言書は正しく財産が相続されて初めて相続人にとって意味のあるものとなります。そうでない遺言書は迷惑なだけです。

あなたが作った、または作ろうとしている遺言書の内容を実りあるものとするために、できれば自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「自筆の遺言書の作成方法|簡単なアドバイス」と題して、自筆証書遺言の書き方に関する細かい点を解説しました。

遺言書を書くだけなら誰でもできます。重要なのは法律的に正しい内容となっているかどうかです。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

遺言作成の手続きの流れや、法務局への保管制度の利用手続きや、公正証書による遺言書の手続、他にも様々な疑問があることと思います。

専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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