【司法書士監修】成年後見の報酬の算定方法を変更|最高裁が通知

後見人の報酬を変更最高裁が決定

最高裁が「成年後見人に与える報酬の算定方法を変更する」ように促す通知を全国の家庭裁判所に出したとの新聞報道がされました(2019年3月26日東京新聞、2019年4月3日朝日新聞など)。この通知は、2018年に作成された「新たな後見報酬算定に向けた考え方(案)」に基づいたものと考えられます。

現在は認知症等の制度利用者本人の財産額に応じて報酬額が決まっていますが、これを、業務量や難易度に応じた報酬体系に変更するというものです。このページでは、成年後見人の報酬について、裁判所の公式文書の記載なども引用しながら、この通知後どのように成年後見人の報酬が変わったのか(もしくは変わってないのか)、具体的に考察します。

成年後見の報酬は「誰が負担」するのか

成年後見人に支払う報酬は、認知症等の制度利用者本人が負担します。その根拠は、民法の次の条文です。

【民法862条(後見人の報酬)】
家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。

成年後見の報酬は、家族が負担するものではありません。報酬は成年後見制度を利用する本人(認知症等の方)が負担します。報酬は本人の財産の中から支払われるため、本人が無資力であれば報酬が生じる余地はありません。

しかし、それでは生活貧困者の成年後見人を務める者が誰もいないこととなってしまうため、各自治体で成年後見人の報酬助成制度があります。参考までに助成金についてのリンクを貼っておきます。

■成年後見制度利用支援事業【報酬助成】の市町村別実施状況(H26年4.1現在)

成年後見の報酬は「誰が決定」するのか

成年後見人に報酬を与えるべきかどうか、そして、与えるとしてその額をいくらにするかは、家庭裁判所が「報酬付与の審判」で裁量により定めます(家事事件手続法39条)。

つまり、「報酬付与の審判」は成年後見人の報酬付与の申立てに基づいて行われるため、そもそも申立てがされなければ報酬が支払われることもありません。さいたま家庭裁判所後見センターの公式文書では次のように説明されています。

 家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができるものとされています(民法862条)。成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人及び任意後見監督人についても、同様です。
成年後見人等に対する報酬は、申立てがあった場合に審判で決定されます。報酬額の基準は法律で決まっているわけではありませんので、裁判官が、対象期間中の後見等事務(財産管理及び身上監護)の内容、成年後見人等が管理する被後見人等の財産の内容等を総合考慮して、裁量により、各事案における適正妥当な金額を算定し、審判をしています。成年後見人等の報酬額の目安(平成26年11月1日付)|さいたま家庭裁判所後見センター

私たち司法書士のような専門職は、原則的に一年に一度義務付けられている「後見事務報告書」を家庭裁判所に提出するときに併せて「報酬付与の審判の申立て」を行っています。家族が成年後見人になっているケースでは、一般的には「報酬付与の審判の申立て」は行っていないと思われます(実際にあまり聞いたことが無いだけで申立は可能です)。

いずれにしても、成年後見人が自分の欲しい報酬金額を請求するのではありません。報酬付与の審判の申立書には、金額は全く記載しません。必ず家庭裁判所の審判に基づいて付与されますから、報酬付与の審判を得ずに勝手に本人の通帳から金銭を引き出すことはできません。

成年後見人が家庭裁判所に「報酬付与の審判の申立て」をした後、問題が無ければ、家庭裁判所から「報酬付与の審判書」が郵送されます。この「報酬付与の審判書」に具体的な報酬金額が記載されています。

成年後見人は「報酬付与の審判書」に書かれている報酬金額を本人の口座から引き出すことができる、という流れです。つまり、成年後見人の報酬は年1回だけ受けることができ、後払いとなります。

成年後見人の報酬は「いくら」か

成年後見人の報酬には「基本報酬」と「付加報酬」の2つがあり、その合計額が報酬として付与されます。通常は「基本報酬」だけが付与されることが多いです。それでは各内訳について解説します。

基本報酬とは

基本報酬とは、成年後見人が通常の後見事務を行った場合の報酬を言います。上に掲げました通り報酬金額は法律で決まっているわけではありませんが、目安となる額は月額2万円です。

ただし、管理する財産の額(預貯金および有価証券等の流動資産の合計額)が高額となる場合は、財産管理事務が複雑かつ困難になる場合が多い為、目安となる金額よりも若干高額となります。参考として東京家庭裁判所立川支部がHP上で公表しているデータによると以下の表の通りです。

管理する財産の額月額の基本報酬額
1000万~5000万円3~4万円
5000万円超5~6万円

東京家庭裁判所立川支部の公表しているデータのリンクを貼っておきます。なお、さいたま家庭裁判所後見センターが公表している金額も同じものです。

■成年後見人等の報酬額のめやす|東京家庭裁判所立川支部
■成年後見人等の報酬額のめやす|さいたま家庭裁判所後見センター

また、成年後見人の報酬については次の裁判例があります。

【大阪家決昭46.9.25】
家庭裁判所が成年後見人の報酬を定めるにあたって考慮されるのは、成年後見人および成年被後見人(制度利用者本人のことを「成年被後見人」と言います)の資力、両者の近親関係の有無、職業、社会的地位、後見事務の難易繁閑(なんいはんかん)などの事情である。

報酬額は、この判例で示されているような諸事情を考慮した上で、「相当」な金額であることが条件です。しかし、現状は上の表にあるように財産額に応じた基本報酬額となっている為、問題視されています。なぜなら、特に後見人として業務を行っていなくても、財産が多ければ多いほど報酬額が高額になることがあるからです。

また、財産管理業務以外の業務が報酬に反映されにくいという点も問題です。後見の業務で手間がかかるのは、転院先の施設や病院を探したりすることなのですが(身上監護事務と言います)、報酬の算定に際してはあまり高く評価されません。なぜならこれにより本人の財産が増えるわけではないからです。

付加報酬とは

成年後見人が後見業務を行うにあたって、本人の財産管理・身上監護等に特別困難な事情があった場合には,上記基本報酬額の50パーセントの範囲内で相当額の報酬が付与されることがあります。これを付加報酬と言います。

付加報酬を受けるためには、成年後見人の積極的な証明が必要です。具体的には、「報酬付与の審判の申立書(報酬付与申立事情説明書)」にどのような困難があり、どのように対処したかを詳細に記載します。

付加報酬の金額の目安はわかりません。本人の為に後見人が特別に何をしたかによって金額は全く違ってくると想像できます。しかし私の経験上、どのようなケースで付加報酬を請求しても、実際に付与される金額は、その事務の困難さに比例することはないと感じています。

最高裁の成年後見の報酬改定によってどう変わる?

最高裁の通知によると、従前の財産額に応じた報酬体系から、業務量や難易度に応じた報酬体系へ変更する、とのことです。新聞報道の裏付けをとるために最高裁判所が各家庭裁判所へ通知したとされる文書が公表されているか否かを調べたのですが、現時点で見当たりませんでした。

しかし、2018年に作成された「新たな後見報酬算定に向けた考え方(案)」はHP上で閲覧することができます。林弘法律事務所の山中理司弁護士が裁判所に対して司法行政文書開示請求をして、実際に開示されたものです。参考までにリンクを貼っておきます。

■「新たな後見報酬算定に向けた考え方(案)」

この文書および新聞報道によると後見人の報酬は次のように変更されるとのことです。

従来の問題点変更後は…
後見事務の内容にかかわらず一定の報酬が一律に付与されている後見事務の内容を問わずに一定の報酬を付与する「基本報酬」という考え方は止める
財産額が多額であるだけで報酬額が高額になっている実情財産額を基準に報酬額を算出することは止める
財産管理事務以外の事務は報酬算定で評価されにくい現状身上監護事務などについても高く評価していく

今回の変更により、富裕層の成年後見人の報酬金額は従来よりも減額される可能性が高いです。しかし懸念されるのは、貧困層の成年後見人の報酬金額は反対に増額される恐れがあるという点です。

たしかに貧困層の後見事務は複雑になることが多い為、手間もかかります。しかし、現実に報酬金額を以前よりも増額できるかというと、そもそも資金はないわけですから難しいのではないでしょうか。

左|司法書士 齋藤遊 右|司法書士 今健一

実際に後見人の報酬は変わったのか?

今回の最高裁の変更通知によって、具体的な報酬金額にどのように反映されるのか、気になるところではあります。しかし当事務所で行っている成年後見人の報酬を前年度と比較しても、ほとんど変化はありませんでした。

付加報酬が認められた案件などもあり、単純に比較できないケースもありますが、前年度と全く同じ金額の報酬額が認められている案件もあります。

また、「基本報酬という考え方は止める」とは言いながら、裁判所のホームページでは現時点でも「基本報酬」という用語を使っていて、実際に取り扱いが変更されたとは到底考えることができません。

したがって、今後もしばらくは、現実の後見事務の困難さなどはあまり考慮されることはなく、管理する財産の金額を基準とする報酬の算定方法は維持されるのであろうと考えています。

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは「成年後見の報酬の算定方法を変更|最高裁が通知」として、成年後見人の報酬の決め方や金額等について解説しました。

成年後見人が行うべき事務は本人の財産管理事務だけではなく、身上監護に関する事務も含まれます。法律上の知識がないと行えない事務も含まれていますから、ぜひそのような問題を解決する場面で私たち専門家をご活用いただければと思います。

成年後見人の選任の申立て手続きの流れや、費用はいくら位かかるのか、どの位の期間で完了するのか、申立手続の詳細について等、他にも様々な疑問があることと思います。専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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