相続人に未成年者がいる場合の注意点|特別代理人とは

子供たちが頬杖をついて整列

今回は、相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議のやり方について考察します。特に夫に先に先立たれて、自分(妻)と子供が残されたというケースにおいて、常識的に考えれば当然自分が全部相続するだろうという認識だとは思いますが、法律上は一定の手続きが必要となりますから注意が必要です。

このページでは、相続人に未成年がいる場合の注意点と、特別代理人という制度についての解説をします。

まずは遺産分割協議が必要となる

相続が開始したが、遺言書は無い場合、原則として遺産分割協議をする必要があります。遺産分割協議とは、故人の相続人同士による話し合いで、誰がどの遺産を取得するのかを決めるものです。この遺産分割協議は必ず相続人全員で行う必要があります。もちろん話し合いが決裂することもありますが、その場合は遺産分割調停や遺産分割審判など、家庭裁判所の手続を利用することになります。

相続人の中に未成年者がいる場合、法律上未成年者が何歳であろうと、未成年者も含めて遺産分割協議を行わなければなりません(やや理不尽に思えるかもしれませんが…)。遺産分割協議のキホンは、別のページに詳しく解説しました。もしよろしければ、お読みください。

■遺産分割協議|遺産分割調停|相続人会議

遺産分割協議|遺産分割調停|相続人会議

遺産分割協議では親と子の利益対立が生じる

通常、親は未成年の子を代理して子の為に様々なことができます。親権者は法律上子供を代理する権限が当然にあるからです。ですから、遺産分割協議も親が子を代理して行えるのが当然だと考えるのも無理がありません。

しかし、相続人の中に未成年者がいる場合、原則的には、親権者(親)が未成年者に代わって遺産分割協議をすることはできません。それは親と子で利益が相反することになるためです。

利益が相反するケースとは?

「利益が相反する」とは法律上の表現ですが、いったいどのような場合を指すのでしょうか。「利益が相反する」とは、親と子の間でで利害関係の対立が生じてしまう状態を言います。相続の場面以外でも多種多様なケースが想定されるのですが、このページでは遺産分割の話に限定して解説します。一番問題となるケースは、親自身も子供(未成年に限る)と一緒に相続人となるパターンです。

【親と子の利益相反が問題となる例1】
父・母・子(未成年)の3人家族。幼い子を残して父が死去しました。父は遺言を残しておらず、原則として父の相続人(母・子)による遺産分割協議が必要です。

このとき、母が親権者だからと言って当然に子を代理して遺産分割協議ができたらどうでしょうか。母親が全ての遺産を勝手に相続するものとして協議を成立させ、その結果、子に不利益となってしまいます。仮に、母が相続した財産は子供のために使うことを意図してそのような協議を成立させたとしても、形式的(外形上)には子供に不利益に見えます。

このような場合、母と子の利益は相反するものと言えるのです。母が多く取れば子は少なく、反対に子が多く取れば母は少なくなるということで、利害関係の対立が生じていることが分かります。

利益が相反した場合の対処法

では、母が子を代理できないとすると、遺産分割協議はどうすれば良いのでしょうか?

【民法826条第1項】
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

この条文からは読み取れませんが、利益が相反する場合に、母が子を代理して遺産分割協議を行っても原則的には無効です。

では、どうするか?と言いますと「特別代理人」を選任する必要があります。「特別代理人」とは「子供の親に代わって特別に子供を代理する人」という意味です。すでに解説しましたように、親と子で利益が相反する場合は、親は子供を代理することはできないので、特別代理人が子供を代理して遺産分割協議を行うことになります。

具体的には、本来は母と子で遺産分割協議をすべきところ、利益が相反するためそれは認められず、母と子の特別代理人で遺産分割協議を行うことになります。

子供が成年であれば特別代理人は不要

上記の事例で、子供が成年であれば特別代理人は一切不要です。たとえ同居している子供であっても、成年に達していれば法律行為をするための完全な能力は有していますから、遺産分割協議も自らの意思に基づいて行うことになります。成年の子を親が代理するという事もなく、利益相反の問題を考慮する必要はありません。

未成年の子が2人いればそれぞれに別々の特別代理人を

未成年の子が2人以上いる場合は、2人以上いる子供のそれぞれに別々の特別代理人を付ける必要があります、具体的には次のようなケースです。

【親と子の利益相反が問題となる例2】
父・母・子A(未成年)・子B(未成年)の4人家族。幼い子を残して父が死去しました。父は遺言を残しておらず、原則として父の相続人(母・子A・子B)による遺産分割協議が必要です。

この場合も、母と子の間で利害関係の衝突が生じるため、母は子を代理して遺産分割協議を行うことができません。どちらか片方の子供についてだけ代理するという事もできません。母は子Aも子Bも代理することはできません。この時、子Aについては特別代理人Aを付け、子Bについては特別代理人Bを付けます(特別代理人の付け方は後述)。そして、母・特別代理人A・特別代理人Bの3人で遺産分割協議を行うことになります。

相続において未成年者の特別代理人の選び方

家庭裁判所へ申立て(一定の書類の提出)が必要です。特別代理人になるための資格は特にありません。一般的には未成年の子の祖父母や叔父叔母など、今回の相続人ではない親族になってもらうことが多いです。

家庭裁判所へ提出する申立書に「特別代理人候補者」として記載しておけば、不手際がない限りその人が特別代理人として認められます。なお、特別代理人は、今回の遺産分割協議のみについて子を代理する権限を持つので、遺産分割協議が終われば役目は終了です。

申立手続の概略は以下の通りですが、専門的な内容を含みますので専門家に依頼された方が宜しいかと思います。本手続は原則的には書面審査のみで、特別代理人候補者等が裁判所に呼び出されるようなことはありません。

【申し立てることができる人】 親権者、後見人、利害関係人
【申立てをする裁判所】 子の住所地を管轄する家庭裁判所
【裁判所に収める費用】 収入印紙800円および切手代
【申立書に添付する書類】
1、親権者・子の戸籍謄本各1通(同一の戸籍中に両者の記載があれば1通でよい)
2、特別代理人候補者の戸籍謄本、住民票各1通
3、利益相反行為関係書面(遺産分割協議書案など)

遺産分割協議の内容が子にとって利益か不利益かは関係ない

遺産分割協議の内容が、子供にとって有利なものであれば、特別代理人を選任することなく、原則通り親が代わって協議をしていいような気もします。たとえば、子が全遺産を相続して、母は何も相続しない。これなら、母が代わって遺産分割協議をしてもいいような気はします。確かに、学問上そのような考え方もあります。

しかし、実際の家庭裁判所の運用のされ方は、遺産分割協議の内容のいかんに関わらず、親と子で利益が相反する場合は、常に特別代理人を選任しなければならないとしています。

遺産分割協議の内容が未成年の子に不利益でも良いのか

家庭裁判所で特別代理人の選任について審理するにあたり、未成年者にとって一方的に不利な遺産分割となっていないかどうかを判断することになります。しかし、例えば遺産の中に不動産がある場合に、未成年の子もその不動産の名義人に入れてしまうというのは、結果としてそれが平等な遺産分割だとしても方法として少し問題があるとも言えます(理由は後述)。

そこで、遺産の全部を親が相続するというような遺産分割の内容であっても、それが子の養育費や生活費に充てることを目的としているものであれば、形式的には子供に不利益となっていても問題が無いというような運用が家庭裁判所ではされているように見受けられます。しかし、このようなやり方も、未成年者の年齢や環境、相続財産の金額など個別の事情によって一律ではありませんので注意が必要です。

【早見チャート】未成年者の特別代理人が必要か否か

これまでの話、少し分かりにくかったかもしれません。ですから、特別代理人が必要か否かをすぐに判定できるチャートを作ってみました。未成年者が相続人となるケースで役立てて頂ければと思います。

法定相続分通りなら遺産分割協議は不要|特別代理人も不要

これまで解説したように相続人が2人以上いる場合は、通常は遺産分割協議を行って、誰が何をどれだけ相続するかを決める話し合いを行います。しかし、法定相続分(民法が定める法律で定められた相続分割合)の通りに相続するというのであれば、遺産分割協議を行う必要はありません。ですから、法定相続分通りに相続するケースにおいては、仮に相続人に未成年の子がいても前述した特別代理人の手続きは不要となります。

「相続人の中に未成年者がいれば必ず特別代理人の手続」という訳ではありません。法律で定められた相続分通りに遺産を相続するのであれば遺産分割協議は不要であり、特別代理人の手続をする必要もありません。

法定相続分通りに相続していいのかは専門家に聞くべき

法定相続分通りに相続していいのかどうかは個別の事情によって結論が異なります。例えば遺産が預金だけであれば、法定相続分通りに相続するとしておいて、子の取り分については実際には親が管理するという形で特に問題は無いでしょう。

また、遺産の中に不動産がある場合も、法定相続分通りに相続するとして名義変更をすることはできます。この場合例えば「持分2分の1 住所 親・持分2分の1 住所 子」のように、子供の氏名住所も登記簿に記録されることになり、固定資産税の納税義務も生じます。ただし、実際には親が替わって支払うことになるはずですから、この点あまり問題とはなりません。

しかし、万が一、将来固定資産税の支払が滞ったり、この不動産を担保としている抵当権などが実行され競売となった際は、不動産の所有者である子供も巻き込まれることになりますから、子供の福祉という面においては適切とは言い難いという考え方もあります。ですから、未成年者が相続人の中にいる場合、特別代理人の手続を省略して、法定相続分通りに相続して良いかどうかは個別の事情を勘案してよく考える必要があるでしょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「相続人に未成年者がいる場合の注意点|特別代理人とは」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、未成年者の特別代理人の制度について解説しました。

この問題は専門家の立場からしても非常に難しい問題を含んでいます。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

当事務所では未成年者の特別代理人の裁判所への申立手続を広くお受けしております。また、提携のパートナー税理士との共同作業で、相続税のなるべくかからない方法での遺産分割など、未成年者の福祉をも考えた相続手続きを行うこともできます。

未成年の子の特別代理人の裁判所への申立手続の具体的な内容や、遺産分割で気を付ける点、不動産の名義変更や預金の分配など他にも様々な疑問があることと思います。

専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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