【司法書士監修】相続で「学費の差」を解決する法|特別受益と贈与

2023年11月10日

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相続が開始すると、相続人の間で、これまでの不公平感が一気に明るみとなり、それが争いに発展することもしばしばあります。その代表例が「学費問題」です。

兄弟の間で親から出してもらった学費に差がありすぎる場合、「不公平だな…」と思ったことはありませんか?もし、この不公平を親からの相続で解決できるとしたらどうでしょう。

このページでは、創業20年の相続手続き専門司法書士が「相続で「学費の差」を解決する法|特別受益と贈与」についてお伝えいたします。

「学費の差」を相続で解決するには…具体例で検証

まず結論をお伝えすると、「学費の差を相続で解決できるか否かは事例により結論は異なる」となります。

そこで、まずはよくある典型的な具体例で検証してみましょう。

モデルケース
兄は大学の学費を親に支払ってもらった。しかし、自分(弟)は高卒である。そこで自分は「兄の大学の学費分は相続で多くもらえるはず」と主張したい。

確かに、弟の主張は理解できます。兄は大学の学費分は親の生前に受け取っているわけですから、少なくともその同額分は、遺産から優先的に相続できるべきだという主張です。では結論はどうなるのでしょうか。

結論
相続開始後に親の遺産分けに際して、兄弟が話し合い、お互い納得した上であればそのように遺産分割をすることもできます。 ただし、話し合いが決裂すれば、遺産分割審判など裁判となります。裁判上、そのような主張が認められるかは事例により異なります。

つまり、解決方法としては、まずは相続人同士で話し合うこと。話し合いで決着が出来なければ、遺産分割調停(遺産分割審判)で争うことにより解決を図ることになります。

「学費の差」は法律的に言うと「特別受益」の問題となる

さて、この「学費の差」の問題は、法律的に言うと「特別受益」の問題となります。法律(民法)には、「学費の差」を直接解決するような規定はありません。

しかし、「学費の差」を「特別受益」と解釈することで一応の決着が出せるような仕組みにはなっています。では、法律には実際にどのように規定されているのでしょうか。

民法「特別受益に関する規定」を理解する

(特別受益者の相続分)
第九百三条
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。民法|e-Gov法令検索
この条文は特別受益がある場合の具体的な相続分の計算方法を規定しているのでピンとこないかもしれませんね…。超訳すると、生前に受取ったものがある人は、その分、相続できるものは少なくなる、といった感じでしょうか。

「学費」は「生計の資本としての贈与」と解釈する

かなり分かりにくい規程ですね。ただし、この条文のどこにも「学費」という言葉は出てきていないことには気づきましたか?

上でお伝えしたように、「学費問題」を直接解決する規定はないのですが、この規定を使って「学費問題」をとりあえず解決します。

条文中に「生計の資本として贈与」という文言がありますが、この「生計の資本として贈与」の中に「学費」を含めて考えていくのです。

「生計の資本」は法律上はかなり広い意味に解釈されています。小難しい理論はここでは割愛しますが、生活に役立つような贈与は一切これに含まれることになります。

ですから、「学費」も一応「生計の資本」に含まれると理解でき、「生計の資本としての贈与」となり、つまり「特別受益」になりうると考えられるのです。

「学費」は「特別受益」にはならない…ことが多いのが実情

学費が特別受益になるか否かは、

  1. 被相続人の生前の資力
  2. 被相続人の社会的地位
  3. 家庭事情等具体的状況
  4. 他の相続人との比較

などを考慮して判断することになります(裁判上は)。裁判(審判)では、特別受益に「なる」とする肯定例もあれば、「ならない」とする否定例もあります。

みなさんから受ける当事務所での無料相談の事例では、「ならない」と判断でできる事例の方が比較的多いです。

裁判(審判)でも、「学費は親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので遺産の先渡しではない(大阪高裁決定平成10年12月6日)」というのが考え方の基本にあります。

もちろん以下にお伝えするように細かくは事例によって異なります。

いずれにしましても、あまり過度な期待はされないほうが賢明と言えます。

「学費」が「特別受益」と認められても、「持戻し免除」とされて終わりか

「学費」が「特別受益」と認められるか否かは、ケースバイケースともいえるため、裁判で争ってみなければ分からないところではあります。

しかし、仮に「特別受益として認められる」としても「被相続人の持ち戻し免除の意思が推定される」と判断されて、結局裁判までして争ったあなた自身に、何の得にもならない結果が出てくる可能性があります。

「持ち戻し免除の意思が推定される」と結局どうなるか

「特別受益として認められる」のであれば、通常はその学費分を考慮してあなたの相続分が多くなるはずです。

しかし、「被相続人の持ち戻し免除の意思が推定される」となると、学費分は遺産とは切り離して計算することとなります。

つまり、死亡時に遺されている遺産を兄弟で分けるのみとなり、兄の学費分をあなたが遺産から多く受け取れることにはならないという意味です。上にあげた特別受益に関する民法の規定には次のようにあります。

(特別受益者の相続分)
第九百三条
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。民法|e-Gov法令検索
これも分かりにくい規定ですね。超訳すれば、故人が「特別受益なんか無視して相続分を計算していいよ」と言えばその通りになる、といった感じです。

実際に被相続人が遺言書などで持ち戻し免除の意思表示をしていなかったとしても、兄にだけあえて高い学費を支出しているということは、その行為からしてその意思(特別受益なんか無視していいよ)が読み取れるという解釈です。

「学費」が「特別受益」となったら贈与税はどうなるか?

教育資金の贈与はもともと非課税です。仮に「学費」が「特別受益(生前贈与)」にあたると判断されたからと言って、遡って贈与税が問題になることは一般論としては考えにくいでしょう。

国税庁ホームページにもその旨が示されています。しかし、必ず税理士の判断を仰ぐようにしてください。

【No.4405 贈与税がかからない場合】
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの。
ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費その他子育てに関する費用などを含みます。また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。国税庁|No.4405贈与税がかからない場合

「学費が特別受益となるか」まとめの一覧表

繰り返しになりますが、「学費が特別受益となるか」は裁判で争ってみないと分からない問題ではあります。しかし一応の判断基準として、これまでの通説や裁判例など踏まえて一覧表にしてみました。

兄の学歴 弟の学歴 兄の学費が特別受益にあたるか
事例1 高卒 中卒 あたらない
事例2 大卒 高卒 あたる
事例3 私立大卒 国公立大卒 あたらない(大阪高決平成10年12月6日)
事例4 長期留学 短期留学 あたらない(名古屋高決令和1年5月17日)

高校の学費程度は特別受益にならない

上の表の「事例1」にもある通り、学費といえども、高校への進学率が9割を超えている現状においては、高校までの学費は特別受益には当たらないとするのが多数説と言えます。

大学の学費となると結論も分かれる

上の表の「事例2」にもある通り、兄だけが大卒の場合、それは特別受益にあたると解されています。しかし、例えばその学費が私立の医大の入学金のように特別に高額なものでなければ、特別受益にはあたらないとする説もあり、結論はグレーと言えます。

私大と国公立大の学費の差は特別受益ではない

上の表の「事例3」では、裁判において「公立・私立等が分かれその費用に差が生じることがあるとしても通常親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので遺産の先渡しとしての趣旨は含まない」として、特別受益には当たらないとしています。

留学費用は特別受益ではない

上の表の「事例4」では、兄弟で留学しているわけですが、裁判において、兄の長期留学の費用は特別受益にはあたらないと判断されました。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「【司法書士監修】相続で「学費の差」を解決する法|特別受益と贈与」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。

このページでお伝えしたかったことは次の3点です。

  • 学費が特別受益となるか否かは裁判で争ってみなければ分からない
  • しかし争ってもほとんど特別受益としてみとめられない
  • そうであればなるべく話し合いで解決するのが賢明な選択

学費問題を特別受益の問題として裁判で解決することは可能です。しかし、解決するまでに裁判費用・弁護士費用として、学費以上のお金がかかるかもしれません。

ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。また相続問題に強い提携の税理士や弁護士もおりますので、全方向の対応が可能です。

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