相続登記を放っておくと競売される危険性あり【司法書士監修】

相続登記には、いつまでにやらなければならないという期間制限はありません。しかし、相続登記をすることを怠っていると、競売されてしまう可能性もあるという、少し怖い話です。

相続登記することを放置しただけで、本当に競売されることがあるのでしょうか。今回は、そのカラクリや、万が一そのようなことになってしまった場合の対処法などを考察します。

相続登記を放っておくと競売されるカラクリとは

相続登記を放っておいた人の全員が競売されるという話ではありません。では、どのようなケースであれば、競売という大げさな話になるのでしょうか。
考えられるのは次のようなケースです。

①被相続人に借金があり、支払いが滞っている
②被相続人に未払いの税金があり、支払いが滞っている
③相続人の誰かに借金があり、支払いが滞っている
④相続人の誰かに未払いの税金があり、支払いが滞っている

つまり、被相続人や相続人に債務があり、その弁済が遅れているケースです。このような場合、債権者(②④では国や税務署)はそのお金を取り立てる目的で、不動産に競売をしかけてきます。

不動産の名義が被相続人のままであっても、法律上は、死亡と同時に相続人に権利は承継されます。ですから、③④のように、相続人に借金や未払いの公租公課があり、相続人自身の名義の不動産がなくても、事実上相続と同時に承継された遺産があれば、債権者はそれを念入りに調べたうえで、狙い撃ちしてきます。

相続人自身に固有の財産があれば、債権者はそれを狙って競売をしかけます。しかし、何もなければ、相続人が取得するはずの遺産を差し押さえてきます。

「代位による相続登記」という仕組みが使われる

この競売の手続きにおいては、「代位による相続登記」という仕組みが使われます。相続登記が終わっていないと、裁判手続き上、競売を実行してもらうことはできないことになっています。

ですから、相続登記をしない相続人に代わって、上記①②③④の債権者が相続登記を申請します。これは、脱法行為でも違法行為でもなく、手続き上認められている登記手続きです。

たとえば、大阪地方裁判所のこちらのページでは、そのやり方まで説明がされています。参考までにリンクを貼っておきます→http://www.courts.go.jp/osaka/saiban/tetuzuki_minji14/kyoubai_touki/index.html

代位による相続登記は、法定相続分通りに登記がされます。とくに上記③④のように、特定の相続人のみが借金を負っている場合でも、その相続人だけの相続登記がされるのではありません。相続人全員の名前で、法定相続分通りに相続登記がされます。

「代位による相続登記」は競売の前提でなされるもの

このように、「代位による相続登記」は競売するために、債権者がやったものと言えます。ですから、「代位による相続登記」と「差押の登記(競売実行の申立てがされた旨の登記)」は連続したものと考えてください。

「代位による相続登記」がされてしまった時の対処法

通常、「代位による相続登記」がされてしまったことに気付く時期は、裁判所から競売の通知が来たときでしょう。この場合は、債権者に対して支払いが滞っている債務を弁済することになります。その後債権者は、差押の取り下げを裁判所に申し立て、最終的には差押の登記も抹消されることになります。

差押の取り下げは債権者が行うものですし、差押の抹消は裁判所側で行いますので、相続人が行うことではありません。

反対に弁済ができなければ、競売手続きはそのまま進み、その不動産を失うことになります。

なお、債務を弁済し、差押の登記が抹消された場合でも、「代位による相続登記」は抹消されずそのまま有効な登記として残ります。第三者へ売却することもできますし、相続人同士で遺産分割協議をして、名義を変えることもできます。

しかし、「代位による相続登記」は権利証(登記識別情報)の発行がされません。したがって、第三者へ売却したり、遺産分割したりする際は、権利証に代わる書類(本人確認情報)を司法書士に作成してもらう必要がある等、その後の手続きが非常に面倒なことになります。

「代位による相続登記」を避けるためには

被相続人に債務がないかを確認するだけでなく、相続人の中に借入のある者がいないかどうかを確認する必要があります。

そして、何よりも相続登記はすみやかに行うことが肝心です。

左|司法書士 齋藤遊 右|司法書士 今健一

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