遺言書の内容と異なる遺産分割は有効か?

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、新年最初のテーマは、「遺言書の内容と異なる遺産分割は有効か?」です。当事務所にも自筆の遺言証書・公正証書遺言の種類を問わずに、このようなお問い合わせを頂くことがあります。

今回も、過去の裁判例や実務の動向なども踏まえて、一般の方に気軽に読んで頂けるような記事にしました。最後までお付き合いください。

遺言書と異なる遺産分割の有効性

結論から申し上げますと、遺言書の内容と異なる遺産分割は、有効となることも無効となることもあります。それにはいくつかのケースに分けて検討する必要がありますが、概ね遺言執行者がいるかいないかに分類できます。

遺言執行者とは、遺言を残した故人に代わって遺言の内容を実現する義務を負う者のことです。詳しくはこちらに詳しい記事があります。もしよろしければお読みください。

遺言執行

遺言執行者の指定がない、選任されていないケース

遺言書の文面中に遺言執行者の指定をしていない場合、遺言執行者が選任されていない場合は、相続人全員(相続人以外に受遺者がいるときは受遺者も含みます)の同意があれば、協議は有効であるというのが実務上の扱いです。

なお、遺言執行者は遺言書の内容の執行に際して就任を承諾する必要があるのですが、いまだ就任承諾をしていないくても、遺言書の中に遺言執行者に関する記載がある以上は遺言執行者がいる場合に該当します(最判昭和62年4月23日判決です)ので次のケースを参考にして下さい。

また、信託銀行が遺言執行者となっているケースでは、相続人から遺言の内容とは異なる遺産分割協議をしたい旨の申出があった場合(多くは相続人間で遺産を巡って争いが生じている場合と思われますが)、遺言執行者の就任を辞退するようです。

遺言執行者がいるケース

遺言執行者は遺産に関する管理権を持ちます(民法1012条)。ですから、遺言執行者がいるにも関わらず相続人が勝手に遺言の内容とは異なる遺産分割協議をしても無効となります(上記判決が根拠です)。

しかし、遺言の内容を執行するにあたって、相続人間の紛争を解決する一手段として遺言の内容を修正して解釈せざるを得ない場面はよくあります。

そしてその修正が遺言の趣旨にかなうものであれば、遺言執行者が予め同意したり、事後的に追認したりすることによって遺産分割協議が有効とされます(東京地裁昭和63年5月31日判決)。

つまり、遺言執行者の承諾があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割協議も有効となると考えて差し支えないでしょう。

遺言執行者の同意を得なかったらどうなるか

遺言執行者がいるにもかかわらず、その同意・追認が得られなかった場合は、「相続人間における遺産分割が、贈与契約ないし交換契約等として、遺言内容の事後的な変更処分の意味でその効力を保持すべき(大阪地裁平成6年11月7日判決)」としています。

要するに、遺言執行者の同意のない遺産分割協議それ自体は無効であるが、事後的に遺言内容を贈与や交換といった別のものに変更したものと解釈して有効、と考えるようです。

贈与や交換とされてしまうと、相続税とは別に贈与税や不動産取得税が別に課税されてしまう可能性もあるわけですが、その点は次の項目をお読みください。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の課税について

例えば、「自分の財産を全て妻にする」という遺言の内容を、妻と子供の遺産分割協議で子供が全部相続すると変更したら、課税上どのように扱われるのでしょうか。

いったん妻に相続された財産が、その後の協議で子供に移転しているので、妻から子供に移転した部分については贈与とみて贈与税が課税されるとも思えますよね。

この点について、国税庁のホームページに以下のような記載があります。

特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言書がある場合に、相続人全員で遺言書の内容と異なった遺産分割をしたときには、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当です。

したがって、各人の相続税の課税価格は、相続人全員で行われた分割協議の内容によることとなります。

なお、受遺者である相続人から他の相続人に対して贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。(相法11の2、民法907、986)国税庁 タックスアンサー No4176

つまり、課税上は遺言執行者の有無は区別していませんし、もちろん同意の有無も問題としていません。ということは、贈与税の課税の可能性は低いと考えていいのではないでしょうか。

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