公証役場

遺産相続争いが心配、遺された者の生活が確保されるか不安。このような理由で、生前に遺言書を作成する人が年々増加しています。

遺言書の作り方は、大きく分けて2通りあります。1つは、自筆証書遺言(自分で手書きで作成するもの)と呼ばれるもの。2つは、公正証書遺言(公証人に作成してもらうもの)です。

手軽に費用もかけず作成できると思って、自筆証書遺言で済ませる人もいます。しかし、果たしてそれでいいのでしょうか。

このページでは、創業20年の相続手続き専門の司法書士事務所が、自筆証書遺言の問題点や、当事務所の「公正証書遺言の作成サポート業務」をご説明します。このような問題でお悩みの方のお役に立てば幸いです。

遺言書の作成件数は年々増加

裁判所に対する遺産相続争いの申立件数が年々増加していることに同調して、遺言書の作成件数も増加傾向にあります。

下のグラフは、日本公証人連合会が公表した、平成21年から平成30年までの公正証書遺言の作成件数の推移を示すものです。

公正証書遺言の作成件数

このデータによると平成30年の公正証書遺言作成件数は、平成21年の約1.4倍に増えていることがわかります。超高齢化社会にある現在の日本において、この作成件数は今後も増えていくと予想します。

なお、自筆証書遺言の作成件数が同じように増加しているか否かは正確には判断できません。

自筆証書遺言は保管場所が法定されておらず、公正証書遺言のように必ず公証役場で保管されるものではないので、実際の作成件数を把握することができないためです。念のため、上記グラフのリンクを掲げておきます。

■「平成30年の遺言公正証書作成件数について|2019年3月25日|日本公証人連合」

どんな人が遺言書を作っているのか|あなたはどれですか?

それではどのような人が実際に遺言を作成しているのでしょうか。当事務所での実例を8パターン具体例としてお伝えしますので、作成を検討されている方は参考にしてください。

Aさん「相続人同士の遺産争いを防ぎたい」

遺言書を残すことで、相続開始後に相続人同士で生じる争いを防止できます。遺言を残す1番のメリットです。現時点で相続人同士の仲がよくない場合は、遺産分割もスムーズにいかない可能性が高いでしょう。「争族」を防ぐために、生前に遺言の作成をする方は多いです。

Bさん「特にお世話になった方に感謝を込めて」

感謝の気持ちを遺言書に残し、生前にお世話になった人に、他の相続人より多くの遺産を与えることができます。同居の親族献身的に療養看護をしてくれた親族など。

生前贈与でも同じ結果は得られますが、多額の贈与税が課税されるおそれがあります。相続税対策として遺言を活用されている人もいます。Bさんは同居の親族へ感謝を込めて遺言を作成しました。

Cさん「2人の子供が不公平にならないように」

「子Xは大学院に行かせて留学費用も支出したが、子Yは高卒のため費用がかかってない」というケース。相続で、子Yが不公平感を感じないように、子Yに多くの遺産を与える遺言を作成したいとのこと。

遺言は相続人同士の不公平感を遺言者本人の意思で解消することもできます。Cさんによるとお子さん同士は大変仲がよろしいとのこと。しかし、「これも親の務めです」と言って遺言を作成していました。

Dさん「未婚なので誰にあげるか決めておきたい」

配偶者がいないというケース。遺言がないと想定外の人に財産を相続されてしまう可能性があります。また法律上の相続人がいない場合は、「相続人不存在」となり、遺産は国庫に帰属します。

遺言書で遺産を取得する者を定めて、これらの事態を防ぎます。Dさんは、甥に財産を譲るという内容の遺言を作成しました。

Eさん「子供がいないので夫婦で遺言を作りたい」

子供がいない夫婦の場合、ご自身の親兄弟と配偶者が共同で相続することもあり、厄介です。残された配偶者に確実に迷惑がかかります。

夫婦のどちらが先に亡くなっても同じ問題が生じます。夫婦がお互いに遺言書を作成しておけばトラブルを防ぐことができて大変便利です。俗に「夫婦遺言」などと呼ばれています。Eさんはご夫婦で遺言を作成されました。

なおこの場合、夫婦は別々に遺言を作成する必要があります。

Fさん「財産が持家しかなく相続が心配です」

同居の親族がいる場合、持家の相続権を巡り他の相続人と争いが生じることがあります。遺産の中に預貯金などの金融資産がなく、自宅だけとなると、自宅を他の相続人と分割協議することになってしまいます。

その結果、自宅を売却して金銭に換価せざるを得なくなり、同居の親族は家を追われることになります。

そのような事態を避けるため、同居の親族が死後も安心して住めるように遺言書を作成しておくとトラブルを防止できます(ただし遺留分侵害額請求の問題は残ります)。

Fさんは、世話になった同居の親族に持家を相続させるという遺言を作成されました。とても安心された表情をされていたのを覚えています。

Gさん「相続人の数が多いので今から心配です」

相続人の数が多くなるほど、遺産分割の話し合いは難航します。相続人同士で面識がなければ、協議が遅滞することは予想できます。予め遺言書を作成しておくと、残された相続人同士で無用な争いを起こさずにすむでしょう。

Gさんはお子さんが多く、自分の死後に争ってほしくないということで、遺言を作成しました。

Hさん「遺産が多いので相続が心配です」

遺産の額や種類が多い人は、少ない人に比べて相続人同志の遺産分割が難航する傾向にあります。財産が多い人は生前に十分な準備(公正証書遺言書)をされています。

特に財産が多い方は、遺言でトラブルを防止できる可能性が高まります。Hさんは相続税対策も兼ねてのご依頼でした。

相続税対策のために遺言書作成をお考えの方は、当事務所のパートナー税理士をご紹介させていただきます。これにより、1次相続、2次相続の相続税対策も可能です。

Hさんのケースは、相続手続きを円滑に進めることができるようにするため、土地について分筆手続きも併せてご相談されました。分筆については、当事務所のパートナー土地家屋調査士、パートナー税理士と連携する形で対応しました。

自筆証書遺言の手軽さに隠れる問題点を紹介

自筆証書遺言は、本人が思い立った時にすぐ作れる手軽さが最大のメリットです。公証役場へ出向く必要もなく、費用も掛からず、書き換えも自由です。誰にも知られることなく作れるのも長所と考える人もいます。

しかし、長所は見方を変えれば短所にもなります。自筆証書遺言の手軽さに隠された問題点とは一体何でしょうか。

1.形式的に無効となることも

法律上、遺言は「要式行為」とされています。「要式行為」とは、法律(民法)が定める要件を満たしたものでないと、無効という意味です。つまり、遺言を残す以上は、民法が定める要件を満たさなければならないし、満たしていなければ無効となります。

自筆証書遺言の形式的な要件は、①全文を自筆で書くこと(ただし財産目録はパソコン等で作成したものでも可)、②氏名、③日付が書かれていること、④押印があることです。

要件に難しいものは有りませんが、どれか1つでも欠けていると遺言としての効力は生じません。

また、書き損じがあった場合の訂正方法も民法で定められております。間違えた部分を上からペンで二重線を引いただけのものや、上から黒く塗りつぶしたようなものをよく見かけますが、訂正方法として無効です。

つまり訂正はなかったものとして遺言を扱うということです。遺言全体は有効なものですが、訂正は無かったものと扱われるので、関係当事者にとっては、全く違った意味合いを持つ遺言書となってしまうこともあります。

2.内容に法律的な問題があることも(法律の不知や勘違い)

形式的に有効であっても、内容が法律上の問題を抱えているケースはよくあります。例えば、一部の相続人の遺留分を侵害している場合です。

遺留分とは兄弟姉妹以外の相続人に法律上与えられている遺産からの最低限の取り分のことです。この最低限の取り分、つまり、遺留分は遺言であっても奪うことはできないとされています。

しかし、遺言の内容が一部の相続人の遺留分を奪うような内容になっていても、それだけで遺言が無効となることはありません。

この場合は、遺留分を奪われてしまった相続人は、遺留分侵害額の請求(民法1046条)をすることによって権利を回復する手順となります。つまり、相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言を作ると、死後に重大な問題を残す結果になります。

また、遺言書に記載されている不動産の表示が不明瞭なケースもよくあります。登記簿や権利証の通りに書いてあれば何も問題もありませんが、むしろそのようなことは少なく、最悪の場合、不動産を特定できないことがあります。

さらに、遺産の分け方がそもそも不完全な場合もあります。例えば、不動産の分け方については書かれているのに、預貯金については全く書かれていないというケースはよく見かけます。この場合、もちろん遺言書自体は有効ですから、不動産の登記手続きは遺言書の内容通りに行えます。しかし、預貯金については相続人同士で遺産分割協議を行う必要があり、二度手間となります。

なお、遺言書で「Aは遺言者の債務を支払わなければならない」として、相続人の一人または相続人以外の方に対して債務の負担を承継させるケースもよくあります。

遺言でこのような内容を決めておくこと自体は問題はありません。しかし、債務の承継については債権者との関係では、債権者の承諾がなければ当然には指定された人が承継できることにはならないので、注意が必要です。

つまり、債権者の承諾が得られなければ、遺言はあまり意味のないものとなりかねません。

このように自筆証書遺言は自分の思い込みで作ると、法律の不知や勘違いにより、法律上の問題を残してしまいがちです。遺された人に迷惑をかけないように遺言書を作ったはずが、本末転倒の結果になってしまいます。

3.紛失・偽造・発見されない可能性

自筆遺言証書をどこで誰が保管するかについては、法律上の決まりはありません。仮に本人が大事に保管していたとして、すみやかに確実に発見されるでしょうか。

自筆証書遺言は、証人や立会人も不要で、秘密で作れます。しかし、それは反対に誰にも発見されず終わる可能性も秘めていることになります。

また、遺言書を家族・親族に保管させたとします。しかし、保管者が遺言書を紛失したり、偽造したりする可能性も否定できません。確かに、法律上は、遺言書を破棄・偽造した相続人は相続権を失うことにはなりますが、その証明は難しいでしょう。

ただし、令和2年7月10日から「自筆証書遺言の保管制度」がスタートしました。これは自筆の遺言書を法務局が保管してくれるというサービスです。詳しくは、別の記事を用意しましたのでもしよろしければお読みください。

■自筆証書遺言の保管制度と公正証書遺言はどちらがいいのか比較してみた
https://www.office-kon-saitou.com/biz39

4.病気療養中や高齢者が作成した場合の意思能力の問題

病気療養中や高齢者が作成した自筆証書遺言は、死後に、作成者の作成当時の意思能力をめぐって、裁判が起こされることが多いです。

例えば、この遺言により不利益となる相続人から「本人はその当時は病気だったはずだから遺言書なんて書けるわけがない(遺言無効確認の訴え)」と主張されて、裁判になるのです。

自筆証書遺言は、証人や立会人は不要です。ということは、確かに本人が遺言書を書いたという事実を誰も見ていない訳ですから、本人の意思能力の有無が後になって取り沙汰される可能性が十分にあります。

5.死後に検認手続が必要になる

遺言の効力は、本人が死亡した時に生じます。ですから、自筆証書遺言の原本そのものをもとに、登記手続きや預貯金の手続きを行います。

しかし、自筆証書遺言の原本それだけでは相続手続きはできません(法務局の保管制度を利用した場合は検認は不要です)。

公正証書遺言書以外の遺言書の保管者は、相続の開始を知った後は、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して、その検認を請求しなければなりません(民法1004条)。

検認手続は、遺言の有効無効を判断するのではなく、遺言書の存在を裁判所で明らかにすることにより、偽造や変造を防止するための手続きです。

自筆遺言証書の検認手続については、別のページに紹介していますので、もしよろしければご一読ください。

■遺言書の検認

いずれにしても、この検認手続は司法書士などの専門家に代行の依頼することは可能ですが、手数料が生じますから、その意味で「自筆証書遺言はまったくお金がかからない」というのはウソと言えます。

6.相続手続きが終わってから発見される可能性が高い

上記「3.紛失・偽造・発見されない可能性」でも指摘したように、自筆証書遺言は保管者が決まっていないため、発見されないことがあります。

さらに始末が悪いのは、相続手続きが終わった後に自筆証書遺言が発見された場合です。建前上は、遺言書がいつ発見されるかを問わず、遺言書と異なる遺産分割はできないとされているからです。

したがって、原則論を言えば、すでに遺産分割協議による相続手続きが終わっていても、遺言書の内容通りに相続しなおさなければならず、その手続きは税務上の問題も含めて非常に難解と言わざるを得ません。

公正証書遺言が安心な理由を紹介

このように、自筆証書遺言は手軽に作成できるメリットはあるものの、問題点も多く、かえって遺産相続問題を勃発させる引き金になったり、想定外の費用や手続きを発生させることもあることはお分かりいただけたと思います。

そこで、次に公正証書遺言が一般的に安心とされる理由について検討してみます。

理由1:保管が厳重であること

公正役場で遺言書を作ると、「原本」「正本」「謄本」が作成されます。原本は公証人役場で保管されます。これにより紛失・盗難や第三者による隠匿・改ざんを完全にブロックできます

なお、「正本」「謄本」は本人などに渡されますが仮に紛失したとしても「原本」は公証役場に保管されているわけですから、再発行の請求(謄本のみ)が可能です。紛失したら終わりの自筆遺言証書と決定的に異なる点です。

ただし、上でもお伝えしましたが、自筆の遺言書を法務局が保管するという新制度が令和2年7月10日より施行されています。

この制度を利用すれば、自筆証書遺言でも隠匿・改ざんを防止する効果が期待できます。詳しい記事はこちらにあります。よろしければお読みください。

■司法書士監修|自筆遺言書の保管制度のすべて|最新版

理由2:強い証拠力があること

公正証書遺言は、公証人役場で、公証人と証人2名の立会のもと、厳格な方式で作成されます。確かな証拠力があります。

なお、公正証書遺言は公証役場だけでなく、病院や施設、自宅療養の場合は自宅へ公証人に出張してもらうことで作成することもできます。その場合も、公証人は必ず本人に対して「意思確認」を行います。

また、その様子を証人も確認します。ですから、あとから公正証書遺言の有効無効が争われることは一般的にはありません。自筆証書遺言のように本人の意思能力が争われる可能性は低くなります。

理由3:検索システムがある

公正証書遺言が残されているかどうか、全国の公証人役場で検索できるシステムがあります。自筆の遺言書にはこのようなシステムはありません。

したがって、自筆の遺言書を書いても、死後に発見されずに終わってしまう可能性もあります。発見されずに終わる遺言書ほど無意味なものはないでしょう(ただし、令和2年7月10日よりスタートした「自筆遺言書の保管制度」では保管された遺言書の検索が可能です)。

理由4:検認手続が不要

自筆証書遺言は、死後に家庭裁判所で検認手続が必要です。検認手続きとは、遺言書が存在する旨を裁判所で確認してもらう手続きです。相続手続きを行う際には、検認済みの遺言書を用いることになります。

公正証書遺言では検認手続きは一切不要です。死後にすぐに相続手続きに着手することができて、相続人の手を煩わせません。

公正証書遺言の作成のお悩みは私たちにご相談ください

公正証書遺言の作成のための準備|さっそくスタートしましょう

あらかじめ公正証書遺言の作成に備えて置きたいという方のために、事前に必要な書類や手続の流れなどを解説します。

事前に用意する書類は結構ある

遺言を公正証書で作成するためには、事前に次の書類を用意して下さい。ただし、公証役場や事例によってはこれ以外の書類が必要な場合がありますので、詳しくはお問い合わせください。

  1. 遺言者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
  2. 遺言者の戸籍謄本
  3. 遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本または除籍謄本など
  4. 相続人以外の人に財産を遺贈する場合にはその人の住民票など
  5. 相続(または遺贈)する財産が不動産の場合は、登記事項証明書(法務局で取り寄せ)および固定資産評価証明書(役所の固定資産税課で取り寄せ)
  6. 相続(または遺贈)する財産が不動産以外の場合は、預金通帳や株式の明細のコピー

証人を探すのが面倒

遺言を公正証書で作成するためには、証人2人の立会が必要です。証人の住所・氏名・生年月日・職業などがわかる住民票または運転免許証等が必要になります。

また、証人は誰でもなれるというものではありません。次の方は証人になることができません(民法第974条)。かなり広い範囲の近親者は証人になれないことに注意して下さい。

  1. 未成年者
  2. 遺言者の推定相続人(遺言者が亡くなった時に相続人になる予定の方)
  3. 受遺者
  4. 推定相続人の配偶者(夫または妻)
  5. 受遺者の配偶者(夫または妻)
  6. 推定相続人の直系血族(子供および親)
  7. 受遺者の直系血族(子供および親)

作成場所は基本的に公証役場だが主張してもらうことも可能

どちらの公証役場でも作成することができます。たとえば東京に住所がある方が、埼玉の公証役場で作成しても問題ありません。通常は、自宅近くの公証役場で作成することが多いです。

また、遺言者が病気でどうしても公証役場に来られない場合には、公証人に出張してもらうこともできます。この場合は、病院に近い公証役場の公証人に出張してもらいます。例えば、東京の病院に入院しているとき、埼玉の公証人に出張してもらうことはできません。東京の公証人に限定されます。

公証人の手数料は財産の額などによって変わる

公証人の手数料は、相続財産がどのくらいあるか、また、遺言によって財産を受け取る人が何人いるかなどの条件・内容によって異なります。病院・自宅等に出張を依頼する場合には、出張費もかかります。5~10万円程度が一つの目安になります。

公証人の手数料は、手数料令という政令で決められています。どの公証役場で作成しても手数料は同じです。参考までに、日本公証人連合会のサイトをリンクしておきます。

■日本公証人連合会|公証事務

作成にかかる日数について

たとえば、遺言者本人が公証役場に出向いて、その日に公正証書遺言を作成してもらえるかというと、かなり難しいと思われます。

遺言を公正証書で作成するための手続の流れは後述しますが、少なくとも数日~1週間程度はかかるのが一般的です。

また、病院・自宅などに出張の依頼をする場合は、公証人の予定もありますから、2~3週間かかることも決して珍しくありません。もし、あなたが遺言の作成を急いでいるのであれば、手続きを迅速に代行してくれる専門家に任せることをお勧めします。

作成当日の様子について

遺言公正証書の作成当日には、遺言者の実印、証人の2人の認印(シャチハタは不可)が必要です。作成場所には、本人、公証人と証人2名のみが立会います。本人を介添えするような方は原則的には立会うことはできません。

作成当日には、公証人はまず遺言者本人に「遺言の趣旨」を述べるように伝えます(このあたりは公証人によっても違いがあります)。

遺言の趣旨とは、「どの財産を誰に相続(遺贈)するのか」という要点です。遺産が預貯金の場合、口座番号まで述べるように言われることはありません。

手元のメモを見ながら述べて良いかどうかは、担当する公証人の判断によります。手元のメモを取り上げた公証人もいましたし、特に何も言わない公証人もいます。いずれにしても、公証人に対して口で遺言の趣旨を伝えることが重要です。

病院に入院中で、人工呼吸器などの影響で会話ができない場合は、視線で文字ボードを示す方法を使って意思確認をするようです。まったく意思の疎通ができない方(認知症またはその疑いのある方)は、遺言は作成できませんのでご注意下さい。

その後、公証人は予め作成しておいた遺言書を遺言者本人に読み上げます。ただ朗読するだけの公証人もいますし、「間違いないですね」などと確認しながら読み進める公証人もいます。

最後に、遺言書に遺言者が署名と捺印をします。署名は自署が原則ですから、自分の名前が書ける程度でなければなりません。病気などの理由で手が震えたりして上手に書くことができなくても問題ありません。

続けて、証人が署名と捺印をして遺言書は完成です。署名と押印をした「原本」は公証役場で保管されます。その代わりに「正本」「謄本」が本人に手渡されます。

時間は、スムーズに進めば30分程度で完成します。公証人の手数料はその場で現金で支払います。

公正証書遺言の完成までの流れ

当事務所が公正証書遺言の作成サポートを行った場合、手続きの流れは以下のようになります。自分で公証役場に頼むよりも早く、確実な内容で作成することができます。

1 遺言の内容を決める
  • 上記「事前に用意する書類」を準備
  • 当事務所の文例などを参考に本人の希望が第一
  • 当事務所から遺留分や相続税などのアドバイス
2 当事務所で案を作成
  • 案を本人に提示して修正箇所があるか確認
3 公証人との打ち合わせ
  • 当事務所で公証人を手配、内容について事前の打合
  • 公証人から修正依頼が出た場合は本人と連絡の上、最終案にまとめる
  • 公証人と本人に最終確認
4 作成当日
  • 上記「作成当日の様子について」のとおり

当事務所の「公正証書遺言の作成サポート業務

このように自筆の遺言書に比べて公正証書遺言には様々な優れた点があります。しかし、公正証書遺言を作るには次のような難点もあります。

  1. 自分で公証役場へ出向いて公正証書遺言の作成依頼をする場合は、直接公証人と何度も内容の打ち合わせをしなければなりません(1度出向いてその場で作れるようなものではありません)。
  2. 公正証書遺言は、公証人が一般的な誤りがないかチェックしますが、内容面で法律的な問題はないか、相続税で不利なことはないか等については具体的なアドバイスはしません

つまり、法律に明るくない人が無策に手軽に作るのは難しいのです。そこで、司法書士による個別の法的アドバイスを受けながら、手軽に公正証書遺言をお作り頂くためのサービスが「公正証書遺言の作成サポート業務」です。その特徴をご説明します。

遺言の内容を確実なものとする調査・アドバイス

当然のことと思われるかもしれませんが、遺言書を正確な内容とします。そのためには、正確に法定相続人を確定させ、遺産の内容を確定させます。

どちらの作業も自分で行うと、思い込みや煩わしさで、いい加減なものとなりがちです。しかし、この点が不正確だと、遺言書として完全ではありません。

必要であれば戸籍謄本の収集による相続人を調査を行うこともあります。また、遺産に漏れがないように、権利証や預金通帳、株式、投資信託明細を確認します。遺産が多岐にわたるような場合は「財産目録」を作成します(別途料金は頂いておりません)。

なお、肝心の内容ですが、どんなことを書けばいいか分からなくても大丈夫です。遺言で遺したい内容は多種多様ですから、ご依頼人に適した内容になるよう、個別にご案内・提案いたします。

また、相続対策として遺言を作成する場合は、パートナー税理士の診断を受けることができます(別途料金は頂いておりません)。

これら遺言作成に収取した資料やデータは、最後に1冊にファイリングしてお渡ししています。

公証人との打ち合わせはすべて当事務所が代行

自分で公証役場へ出向いて公正証書遺言の作成依頼をする場合は、直接公証人と何度も内容の打ち合わせが必要です。事前に書類の提出などを求められることもあります。公証役場は、平日しか営業していませんから、日中忙しい方にはそのようなやり取りは難しいでしょう。

しかし、当事務所を利用していただければ、公証人との事前の文案打合せや、書類の提出作業など、すべて当事務所が代わって行います。ご本人は、作成当日に1度だけ公証人と会っていただければ大丈夫です。

作成当日の証人立ち合いは当事務所の司法書士2名が対応

公正証書遺言を作るには、2名以上の証人の立ち合いが必要です。

相続人候補者(推定相続人)や受遺者(財産をもらい受ける人)は証人にはなれません。当事務所の「公正証書遺言の作成サポート業務」を利用すれば、当事務所の司法書士2名が責任を持って証人となります

遺言書の保管・遺言の執行手続きも

公正証書遺言を作ると、「原本」「正本」「謄本」の3通が作成されます。「原本」は公証役場で保管されるものです。「正本」「謄本」は、特に遺言書の中で保管者が決められていなければ、本人に手渡されます。

一般的には、遺言書の中で「遺言執行者(死後の相続手続を行う人)」を定めておいて、その人を同時に保管者とするケースが多いです。

遺言執行者を当事務所に指定して頂いた場合は、当事務所で大切に遺言書を保管し、死亡の連絡と同時に遺言執行の手続に着手します(別途料金となります)。

なお、遺言執行者を当事務所に指定して頂いた場合には、1年に一度ご自宅等に伺って、財産の変動はないか、遺言書の内容の変更の希望はないか、などの確認を行っております

公正証書遺言は高いのか?

公正証書遺言を作成すると実際いくらかかるかについては、別の記事「公正証書で遺言を作るといくらかかるか計算してみた」で事例ごとに検証してみましたので、もしよろしければお読みください。

 

少なくとも数万円はかかるため、決して安くはありません。しかし、自筆証書遺言で生じる問題点をクリアにできると考えれば、高い買い物ではないと考えることもできるでしょう。

遺言を作成しようと決心された目的は何ですか?相続人が揉めることが無いように、確実に財産を引き継がせたいとお考えになったのではないでしょうか。

もしそうであれば、遺言の内容も安心確実なものでなければ意味がありません。自筆証書遺言の保管制度もまもなくスタートしますが、公正証書遺言が依然として優位であることは間違いのないところです。

 

私たちが最後までしっかりサポートします

無料相談を受け付けています

私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「当事務所の公正証書遺言の作成サポート業務」についてお話ししました。自筆遺言書の手軽さに潜む問題点についてお分かりいただけましたでしょうか。

公正証書遺言の作成手続きをこれから始めるにはどうすればよいのか、費用はいくら位かかるのか、他にも様々な疑問があることと思います。

毎週土曜日に無料相談を受け付けていますので、この機会にお気軽にお問い合わせください。

お電話(代表042-324-0868)か、予約フォームより受け付けています。

 

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