【司法書士監修】相続財産に借金がある時の正しい3つの対処法

2023年11月10日

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被相続人が借金を残して死亡した場合、その借金はどうなるのでしょうか。故人の他の遺産(不動産や預貯金など)と同じように、例えば「相続人の一人が負債全てを相続する」という内容で遺産分割をすることができるのでしょうか。

このページでは、「【司法書士監修】相続財産に借金がある時の正しい3つの対処法」として、故人に借金があった場合、相続人はどのように対処すべきか3つの方法を提示し、どの方法が優れているかなどを、20年の実績を有する相続手続き専門司法書士の視点から解説します。

このページの情報を参考にすれば、きっと正しい選択をすることができるでしょう。

原則|債務は法定相続分の割合で全員相続が大前提

被相続人が生前に負った債務は、その相続人全員が当然に法定相続分の割合で相続するのが原則です。この点は以前は民法上の規定が無く、最高裁の判例によってそのように解釈されてきました。

【最判昭和34年6月19日】
債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継すべきものと解すべきである。

この判例を受けまして、最近の相続法改正で次のような新たな規定が民法に設けられました。

(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使) 第九百二条の二 被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。民法|e-Gov法令検索

分かりにくいですが、要するに債務は相続人全員が共同で相続するという事です。

なお、被相続人に債務がある場合、原則的に相続人がその債務を承継することは、相続人がその債務の存在を知っていたか否かは関係がありません。

それでは次に被相続人が生前負っていた債務の種類ごとに、その債務が相続人に承継されるのかを個別に検討します。相続されない債務もあるので注意が必要です。

通常の金銭債務のケース

上で揚げた通り、通常の金銭債務を承継する場合は、相続人は法定相続分に応じて債務を引き継いでいくことになります。「法定相続分に応じて」という意味ですが、例えば父親が1000万円の借金を負って死亡し、その相続人が子2名というケース(この場合の子2名の法定相続分は各2分の1となります)では、子2名が500万円ずつに分割された債務を各自が承継するということです。

しかし、債権者にとっては、相続により請求の手続きが面倒になることから(子2名に対してそれぞれ500万円ずつ請求をしていくことは煩雑です)、通常は相続人の中から特定の者を債務の承継者として、その承継者と債権者との間で債務の引き受け契約等を行い、以後はその相続人に対してのみ請求の手続きを行うようにします。

いずれにしても普通の借金は相続の対象になるという事です。

債務が住宅ローンのケース

不動産を担保にし金融機関で住宅ローンを組んで借入をした場合は、団体信用生命保険に加入しているケースがほとんどです。ローンを組んだ債務者が死亡したときは、保険会社から金融機関に対して保険金が支払われて、これにより住宅ローンは完済となります。保険会社がローンの残債務を払ってくれるイメージです。

ですから、相続人が住宅ローンを引き続くことはありません。なお、住宅ローンを完済した場合は金融機関より「ローン完済の書類(抵当権の解除・抹消書類)」が交付されますから、相続手続きと合わせて担保の抹消手続きも必要となる点に注意しましょう。

通常の保証債務のケース

被相続人が生前に誰かの保証人・連帯保証人になっていた場合には、それらの保証債務も相続人に承継されます。通常の金銭債務と同じように、法定相続分の割合に応じて相続の対象になるという意味です。

根保証債務や信用保証のケース

根保証とは、債権者と債務者に継続的な取引関係があるような場合に、保証限度額(極度額)や保証期間を定めてする保証契約のことを言います。このような根保証であれば、保証限度額の範囲内で、保証人が死亡した後に発生した債務についても相続人に承継されます(大判昭和10年3月22日)。

しかし、保証限度額も保証期間も定められていない根保証は、死亡時点ですでに発生している債務についてのみ相続人に承継され、死亡した後に発生した債務については承継されません(最判昭和37年11月9日)。

なお平成17年4月1日施行の民法改正により、限度額や期間を定めない根保証契約は無効となっていますから、施行日以後に契約されたこのような根保証契約は無効となり、そもそも相続の対象とはなりません。

身元保証のケース

身元保証も原則的には相続の対象とはなりません(大判昭和18年9月10日)。しかし、上記の根保証債務と同様で、相続開始時に現実に発生している債務については、各相続人が相続分に応じて保証債務を承継することになります。

相続人が借金を免れるための正しい3つの対処法

次に、被相続人に借金・債務があることが分かった場合、相続人がその借金・債務を負わないようにするための方法を検討します。3つの選択肢があります。

対処法①相続放棄をする

相続開始を知った日から3か月以内であれば、家庭裁判所で手続きを行うことによって、相続を放棄することができます。相続放棄をするとはじめから相続人でなかったものとみなされ、債務を承継することはなくなります。

しかし預金や不動産などの他の相続財産も一切相続できなくなりますので注意が必要です。詳しいことは別のページで解説しています。

この方法は一般に、故人の借金が高額の場合に利用する手段です。借金とその他の財産を比べて、圧倒的に借金の方が多ければ、ほとんどの場合、相続放棄を利用します。

対処法②限定承認をする

相続開始を知った日から3か月以内であれば、家庭裁判所で手続きを行うことによって、相続を限定承認することができます。上記に揚げた相続放棄をすると債務が免責されると同時に、預金などの財産も相続できなくなりますが、限定承認をすると、事例によっては債務は免責されるものの、財産は相続できる可能性もあります。

この方法は、故人の借金が多いのか、それとも他の相続財産が多いのかはっきりしない場合に用いられる方法です。一般の方からするとかなりメリットの多い方法に思えるかもしれません。

しかし、手続きが煩雑で費用や時間もかかるため、現在ではほとんど利用されていない手続きです。限定承認についても別のページで詳しく解説しました。

対処法③遺産分割をする

相続人の話し合い(遺産分割協議)により、特定の相続人が債務を負担する旨を決めることはできます。しかしその内容を債権者に主張することはできません。借金の負担者を決める遺産分割は、相続人間では有効ですが、その結果を債権者に対抗することはできないのです。少しわかりにくいですね。

例えば3000万円の借金を、ABC3名の相続人がその遺産分割協議でAのみが承継すると勝手に決めても、債権者はその協議の結果を無視して、それぞれに対して1000万円ずつ支払いを請求できます。この時、遺産分割協議では債務を免責されたBであっても債権者の請求を法律上拒むことはできません。

そして、もし債権者から請求されたBが1000万円を支払った場合、Bはその後Aに対して求償することができます。「求償する」というのは、分かりやすく言えば「立て替えて支払っておいたから自分に1000万円を返して下さい」と請求することです。

もちろん求償した時点でAに資力があれば問題はないのですが、そもそもAが返済できないからこそ債権者はBに請求しているわけですから、Bが債権者の請求に応じて立て替え払いしても、その金額をAから支払ってもらうのは難しいことでしょう。

いずれにしても、他に相続財産もあり、借金も相続人が許容できる程度の金額であれば、通常は遺産分割の方法で解決をします

ただし、この点については注意すべき点がありますので、項目を改めて以下で詳しく説明します。

借金を遺産分割で解決する場合は注意が必要

ところで、遺産分割には3つのやり方があります。

  1. 遺産分割協議(相続人の話し合いによるもの)
  2. 遺産分割調停(遺産分割協議がまとまらない場合に、裁判所を通した相続人の話し合いによるもの)
  3. 遺産分割審判(協議も調停も不調に終わった場合に、裁判所が内容を決定するもの)

3つのケースでは債務を遺産分割できるか否かの結論が異なるため、個別に検討します。なお、遺産分割に関する詳しいことは別のページで解説しています。

遺産分割協議・遺産分割調停は一応できる

上記で説明しましたように、遺産分割協議で、特定の相続人が被相続人の債務を承継すると定めることができます。また、特定の相続人だけが引き受けるという内容だけでなく、相続分とは異なった負担割合で相続人全員が承継するということもできます。

しかし、たとえ相続人でそのように定めたとしても、債権者の承諾がない限り、その結果を債権者に主張することはできません。ですから、まず債権者の承諾を得た後に遺産分割協議を行うという順番が理想的ではあります。

ところが、実際は、相続人全員による遺産分割協議が確定(遺産分割協議書に相続人全員が署名と押印をした)しない限り、債権者が承諾の書類を出すことはほとんどありません。

このように考えると、債権者の承諾は遺産分割協議が終了して事後的にもらうしか方法が無いと言えます。したがって、現実的には遺産分割協議書の中で「もし債権者の承諾が得られなかった場合は…」という項目を設けて、遺産分割協議後に新たな紛争が生じることのないように工夫するのが良いかもしれません。

この点は裁判所で行う遺産分割調停でも同じ結論となります。

遺産分割審判では債務はそもそも対象外

上記で説明しましたように、遺産分割協議や遺産分割調停では相続債務を考慮した上で遺産を取得することが可能です。具体例としてよくある事例が「相続人Aは被相続人の借金を引き継ぐので他の相続人よりも遺産をたくさん相続する」という内容です。

確かに、遺産分割協議や遺産分割調停では債務も考慮した遺産分割が可能なので、合意が成立するのであれば何も問題がありません。

しかし、遺産分割協議や遺産分調停で合意が成立せずにそのまま遺産分割審判に移行したという場合、遺産分割審判では債務の存在は考慮されないため、相続人Aは借金を承継しないのに他の相続人よりも遺産をたくさん相続してしまうということにもなりかねません。

遺産分割調停で代理人(弁護士)を選任しないで、そのまま遺産分割審判に移行されてしまうと、債務の点について相続人の予期しない結果となってしまうので十分に注意が必要です。

借金を相続しないための、おすすめの方法は?

これまでの説明をまとめると、相続財産に借金があった場合、相続人は次の中からどうするかを選択しなければなりません。

  1. 相続放棄する
  2. 限定承認する
  3. 遺産分割する

被相続人に明らかな債務がある場合、遺産分割協議や遺産分割調停によって債務を引き継がないとすることも理論上は可能です。またこれらは実務上もよく利用されている方法です。

しかし完全に債務を免責されたいと思うのであれば、相続放棄や限定承認を検討することになります(限定承認はあまり現実的ではないので相続放棄となるでしょう)。相続放棄は、債権者の同意は不要ですし、事前に通知等をする必要もありません。

ただし、被相続人の遺産が借金だけでなく、不動産や預貯金もあるという場合は、相続放棄を選択したために何も財産を相続できなくなってしまうため、遺産と債務のバランスをよく考えたうえで検討をしなければなりません。

いずれにしても、遺産の中に借金・債務があって、その相続で迷ったら当事務所にご相談ください。自分自身の判断で話を進めるよりも、まずはこのような問題に詳しい相続手続きの専門家に相談し、最適な方法のアドバイスを受けるようにしましょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「【司法書士監修】相続財産に借金がある時の正しい3つの対処法」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、債務の相続に関して知っておくべきことを解説しました。

特に遺産の中に借金がある場合、それを相続すべきか否か、自分では判断が難しいかもしれません。ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。

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