【司法書士監修】よくある相続欠格の具体例と対応方法

2023年11月9日

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相続人の中に、故人の遺言書を偽造したり、書き換えたり(変造)した人がいた場合、あなたはどのように対応すればよいのでしょうか。

「相続欠格にあたることは分かったがその後どうすればよいか分からない」というお問い合わせを受けることがあります。

あなたも同じお悩みをお持ちですか?そもそも「相続欠格」とは?

このページでは、創業20年の相続手続き専門司法書士が、よくある相続欠格の具体例と、相続欠格の相続人への対応方法をわかりやすくお伝えします。また、相続欠格者がいる場合の相続手続きについても解説します、

相続欠格とは相続人の資格を剝奪する制度

相続欠格とは、相続人の相続権を当然に剥奪(はくだつ)する制度です。民法という法律に規定が置かれています。

もし相続人となるべき者であっても、例えば被相続人を殺害するなどの不正行為があれば、その者に相続させることは適当ではありません。

そこで、民法は、刑事上の制裁とは別に(人を殺害すれば刑事上は殺人罪として罰せされます)、相続人となるべき者に一定の事由があった場合には、法律上当然に相続資格を剝奪し、相続人たる資格を失わせるものとしたのです。

相続欠格に該当する事由(欠格事由と言います)は、後で説明しますが全部で5種類あります。

その中でも、実務上は最もよくある事例ともいえる「遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿」を具体的に検証してみます。

相続欠格と遺言の裁判例|あてはまるものはありますか?

民法第891条5号は、「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、隠匿した者」には、相続権はないとしています。

偽造、変造、破棄、隠匿とは一般的にどのような行為をさすのでしょうか?

  • 偽造・・・被相続人名義の遺言書を無断で作成すること
  • 変造・・・被相続人が作成した遺言書の内容を加除訂正したり変更を加えること
  • 破棄・・・遺言の効力を消滅させること
  • 隠匿・・・遺言書の発見を妨げること

民法第891条5号には、単に「偽造・変造・破棄・隠匿」としか書かれていないので、実際にこれらに該当するか否かは、裁判等の中で争われることになります。

それでは次に代表的な「遺言と相続欠格」に関する裁判例を紹介します。

相続欠格の代表的な裁判例

  1. 遺言書を破棄しても、相続人の破棄行為が、相続に関する不当な利益を目的としていなければ、その者は相続欠格に該当しない(最判平成9年1月28日)。
  2. 遺言能力が欠如している被相続人に、あらかじめ用意した文章を書き写させる、または、口授する文言を書き写させる方法によって、遺言書を作成させた場合は、偽造にあたり、相続欠格事由に該当する(東京地判平成22年9月7日)。
  3. 押印の無い遺言書について、遺言者の死後に相続人が代わって押印した事例は、原則的には偽造・変造にあたる。しかし、それが遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨でなされたものであれば、相続欠格事由には該当しない(最判昭和56年4月3日)。

その他、遺言書の検認を怠ることが、遺言書の「隠匿」にあたるか否かが問題となる事例もありました。別のページで詳しく解説しております。

【司法書士監修】遺言書を隠して検認を怠ったらどうなるのか?

相続欠格の相続人が相続することはあるか

相続欠格事由にあたれば、その相続人は、理論上は当然に相続資格がなくなります。そして一度無くなった相続資格は、復活することはありません。

それでは、相続欠格に該当した相続人は、もはや相続する余地は全く無くなるのでしょうか。

相続欠格と相対効の問題|他の人の相続なら相続できる

相続欠格の効果は「相対的」と解されています。つまり相続欠格に該当したからと言って、もはや誰からも相続できなくなるというわけではないのです。

たとえば、下の図で見てみましょう。

相続欠格

子を殺した父は、子を相続することはできません。後述しますが、子を殺すと、相続欠格になり、親は子供の遺産を相続することができなくなるからです。

しかし、そのような父であっても祖父を相続することはできます。つまり、その後に祖父が死亡したとき、祖父の遺産については相続できるのです。なぜなら、父は祖父の相続については何の欠格事由もないためです。

相続欠格と宥恕の問題|被相続人が欠格者を許すことはできるのか

被相続人が自らの意思で、相続欠格に該当する人を許すことによって、その人の相続権を回復させることはできるのでしょうか?

この問題について、民法には規定が置かれていません。ですから通説はこれを認めません。

しかし、被相続人自身があえて遺産を欠格者に相続させようとするのに、その意思を抑えることは疑問であるとして、欠格者の宥恕(ゆうじょ)または免除を認めるべきだとする意見もあります。

相続欠格の相続人がいる場合どうすればいいのか

それでは、相続人の中に、相続欠格に該当すると思われる人がいる場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

最終的には、相続欠格者を除いて、そのほかの相続人全員で遺産分割協議を行うことで相続手続きができるわけですが、当然に相続欠格者を除いて良いということにはなりません。

ここでは2つに分類して検討します。

  1. 欠格者が相続欠格事由に該当することについて争わない場合
  2. 欠格者が相続欠格事由に該当することについて争う場合

相続欠格について争いがない場合

まず、1のケースです。実務上「争いがない場合」はほとんどありませんが、一応お伝えします。

相続欠格者自身が、相続欠格に該当することについて特に争いがない場合は、任意に「相続欠格証明書」を作成してもらい、署名・捺印(実印)してもらいます。あわせて印鑑証明書も提出してもらいます。

「相続欠格証明書」には法律上の様式はありませんが、何を書いても良いという訳でもないので専門家に作成してもらった方が良いでしょう。もちろん当事務所でもお取り扱いがあります。

後でお伝えしますが、この「相続欠格証明書」は、不動産の相続登記手続きで使用することができます。しかし、金融機関などその他の相続手続きでは使えないこともあります。

その場合は、争いがなくても、下記の「相続欠格について争いがある場合」の方法によらざるを得ない可能性もあります。

相続欠格を前提に遺産分割をする方法もある

相続欠格について、特に争いがない場合、一番簡単な方法は、相続欠格を前提に相続欠格者も含めて遺産分割協議をしてしまうことです。

具体的には「相続欠格者は相続する財産は何もない」という内容を含んだ遺産分割をすることになります。この方法であれば、特に「相続欠格証明書」を作成する必要もありませんし、下記に説明するような裁判の手続きも不要です。

ただし、あまり現実的ではありませんし、方法として法律上の疑義がないわけではありません。

相続欠格について争いがある場合

次に、2のケースです。相続欠格について争いがある場合には、訴訟手続きで欠格事由の有無を確定します。つまり裁判が必要という意味です。

相続権存否確認請求、遺言無効確認請求などの訴訟を提起し、その中で欠格事由の有無が争われることになります。

なお、遺産分割の前提として、遺産分割審判の中で相続欠格事由の有無を判断することも可能です。

しかし、常に遺産分割審判の中で判断が可能なわけではなく、ケースによっては相続権存否確認請求などの別の裁判の確定を待ってから、順番に遺産分割審判を行うこともあります。

いずれにしても、欠格事由にあたるか否かで争いがある場合は、裁判の中で争うしかないということになります。

相続欠格の裁判では誰が原告や被告になるのか

相続人が欠格者も含めて2名しかいなければ簡単です。

例えば、相続人A、相続人B(Bは相続欠格)というケース。この場合は、Aが原告、Bが被告となります。

問題は、相続人が他にもいる場合です。

例えば、相続人Z、相続人A、相続人B(Bは相続欠格)というケース。この場合は、ZとAが原告、Bが被告となります。

つまり、相続欠格を争う裁判では、相続人の全員が原告または被告として関与しなければならないのです。

「ある相続人に相続資格があるかないか」という裁判では、相続人全員の間で同一の結論とならなければ矛盾が生じるため、必ず相続人全員が裁判の当事者にならなければいけないという意味です(最判平成16年7月6日)。

裁判には関わりたくない方がほとんどだと思いますが、この点は仕方がありません。

相続欠格の裁判は自分でできるか

難しいと思われます。相続欠格に該当するか否かは「通常の裁判(または遺産分割審判)」で行いますので、弁護士でないと解決が困難です。

当事務所では、相続問題に強い弁護士と提携しておりますので、その後の相続手続きまで安心してお任せいただくことができます。

どっちにしても相続欠格は戸籍には載らない

相続欠格について争いがあっても、なくても、相続欠格の旨はその相続人の戸籍に記載されることはありません。

特に、裁判で相続欠格に該当することが確定したとしても、戸籍に記載されることはありません。

相続欠格の相続人に子供がいれば代襲相続する

相続欠格に該当すれば、その人に相続権がなくなるのは当然です。しかし、もしその欠格者に直系卑属(子供や孫)がいれば、欠格者が相続するべきであった遺産は、欠格者の直系卑属が代わって相続します。

これを代襲相続と言います。

ですから、たとえば相続欠格者に子がいる場合、裁判までして相続欠格者の相続資格を喪失させても、相続欠格者に代わってその子が相続人となるためあまり意味がなかった、といった結末になりかねないことは理解しておく必要があるでしょう。

代襲相続については別のページで詳しく解説しています。

【保存版】代襲相続とは|代襲相続をわかりやすく|司法書士監修

相続欠格がある場合の相続登記・相続手続きのやり方

次に、相続欠格の相続人がいる場合の相続登記・その他の相続手続きのルールについてお伝えします。

相続欠格の相続人は、もはや相続人とはなりませんから、遺産分割協議書などの書類に署名捺印をする必要はありません。代わりに次の書類のいずれかを添付することになります。

  • 相続欠格証明書(欠格者の印鑑証明書付き)
  • 判決および確定証明書(欠格事由が確定した判決書など)

不動産の相続登記は、2つのうちどちらを添付しても良いことになっています。

それに対して、金融機関の相続手続きに関しては、金融機関ごとに異なる扱いです。相続される金融機関へお尋ねください。

その他の「相続欠格事由」の紹介

それでは「遺言の偽造・変造・破棄・隠匿」以外の「相続欠格事由」を紹介します。民法第891条に規定があります。

【相続の欠格事由】
①故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者
②被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者。ただし、是非の弁別のできない者、加害者の配偶者および直系血族は除かれる。
③詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者
④詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、またはこれを変更させた者
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者

実務で実際に問題となるのは、⑤が多いです。

相続欠格が疑われる場合、他の相続人ができることは何か?

遺言書の偽造や変造が疑われる場合、その他の相続人にできることは何でしょうか?

本人が偽造や変造を認めることはまずありません。ですから、遺言無効確認訴訟などの裁判を起こして、民事訴訟の中で相続欠格事由の有無を確定していく流れとなります。

裁判の中では、遺言書の筆跡が故人のものと一致するか否かや、偽造・変造をする動機があるか等、様々な方法で証拠を提出し、証明していくことになります。

ですから、原告となる相続人としては、いかに自分に有利な証拠を多く集められるかという点が重要です。故人が自分の財産をどうしたいかについて、日記やメモに残してる場合も少なくありません。

最近ではスマートホンのメモやパソコンのメールに残されていることもあります。いち早く証拠の保全に努めるようにしてください。そしてすぐに弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。

反対に、本人が偽造・変造を認めている場合は、必ずしも裁判は必要ありません。不動産の登記手続きと、それ以外の相続手続き(預貯金の解約手続きなど)では、必要となる書類が異なるケースもあります。

適法に、かつ穏便に相続手続きを進めるには、このような問題に詳しい専門家のサポートを受けるべきと言えるでしょう。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「【司法書士監修】よくある相続欠格の具体例と対応方法」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。

このページでお伝えしたかったことは次の2点です。

  • 相続欠格について争いがあれば、裁判で明らかにする必要があること
  • 相続欠格がある場合の相続登記、相続手続きもルールがあること

相続欠格は放置していると証拠も分散し、裁判上不利となります。相続欠格の処理や、その後の相続手続きを速やかに行うためには専門的な知識が必須となります。

ぜひそのような問題を解決する場面で私たち相続手続きの専門家をご活用いただければと思います。

専門知識を有する私たちであれば、疑問にお答えできます。また相続問題に強い提携の税理士や弁護士もおりますので、全方向の対応が可能です。

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