プロが教える遺言作成の必要度チェック

相続争いを避けたいなら生前に遺言書を作っておくべきだ、とよく言われます。しかし、実際に相続争いになるかどうかは自分が亡くならないと分かりません。

そして、具体的にどのような場合に相続争いが生じるのかも分かりません。私たちは相続手続きを専門にしている司法書士事務所です。

数多くの相続案件に携わっている中で、「生前に遺言書を作っておけばこんなことにならなかったのになあ…」と思うことがあります。

そこで今回は、相続手続き専門家の視点から、遺言を作る必要があるかないかを簡易的に自分で判断できるようにチェックリストを作ってみました。ご自分が当てはまる項目にチェックを入れてください。ではスタート。

遺言作成必要度チェックリスト

チェック項目は全部で17個あります。項目の意味が分からない場合は、表の下の見出し部分を確認してからチェックをして下さい。チェックが何個あるかで遺言作成必要度を診断します。

番号項目チェック欄
1未婚である
2子供がいない
3再婚している
4内縁関係にある者がいる
5婚姻外で生まれた子供がいる
6特に世話になった者がいる
7生前に特別に財産を与えた相続人がいる
8非行のある相続人がいる
9相続人が多い
10相続人間の中が悪い
11死後一定期間は遺産の分割を禁止したい
12自宅以外に財産が無い
13事業を営んでいる
14寄付がしたい
15予め相続人の相続分を決めたい
16予め相続人が取得する財産を決めたい
17自分の財産リストを共有している人がいない

1.未婚である

ご自身が未婚である場合、財産は親が存命であれば親が相続します。親が存命でなければ、ご自身の兄弟が相続します。

ご自身が死亡した時点で、親も兄弟もいなければ、最悪の場合、国庫に帰属することもあります。つまり、自分が想像してもいなかった者が相続する可能性があるという話です。

そうであるなら、ご自身の意志で予め誰に相続させるか決めておくべきかもしれません。

2.子供がいない

既婚者でも子供がいない場合は、「1」の場合と同様の問題が生じます。まず、配偶者は必ず相続人になります。そして、同時にご自身の親が存命の場合は親が配偶者と共同で相続します。

親がすでに死亡しているときは、ご自身の兄弟が配偶者と共同で相続します。いずれにしても残された配偶者としては非常に気まずい思いをすることは間違いありません。

そうであるなら、予め遺言書の中で全財産を配偶者に相続させると決めておくべきかもしれません(この場合他の相続人の遺留分を害する可能性は生じます)。

3.再婚している

もちろんご自身が死亡しても前妻前夫は相続人にはなりません。しかし、前妻前夫との間に子がいる場合は、その子は相続人になります。

また、再婚相手との間に生まれた子供がいる場合は、その子供も相続人になります(当然ですが再婚相手も相続人です)。

しかし、再婚相手が連れ子で再婚した場合は、その連れ子は当然にはご自身の相続人とはなりません。この場合、連れ子を相続人とするためには、ご自身との養子縁組が必要です。

つまり、再婚している場合は、相続関係が複雑となってくる可能性があります。具体的に誰が相続人となるのか専門家の診断を受けた上で遺言を作ることをお勧めします。

4.内縁関係にある者がいる

法律上の婚姻関係にない内縁関係にある者は、法律上の相続人とはなりません。ですから、その方に財産を残すには遺言が必要となります。

5.婚姻外で生まれた子供がいる

ご自身の生前に認知を済ませていればその子は当然に相続人になります。しかし、生前に認知をしていないと相続人にはなりません。

認知は遺言の方法でもすることができます(民法781条2項)。生前に認知をすることが憚れるような事情がある場合は、遺言で認知をすることも検討してみましょう。なお、この場合は遺言書の中で遺言執行者を指定して、遺言執行者に認知届出を提出してもらうこととなります。

6.特に世話になった者がいる

療養看護・介護などで特に世話になった相続人がいる場合、その方に多く相続させるとよいでしょう。

確かに遺言書に書かなくとも、そのような相続人は法律上「寄与分」が認められ、遺産分割のときに他の相続人よりも多くの相続分を主張することが可能です。

しかし、実務上「寄与分」の主張は非常に難しく、相続人同士でする遺産分割協議はもとより、裁判所で行う遺産分割調停や遺産分割審判でもなかなか思ったように認められにくいのが現状です。

ですから、予め遺言書で多めに相続させておくのが好ましいでしょう。なお、特に世話になった者が相続人ではなく、それ以外の者(例えばご近所の方、嫁など)であれば、そもそもご自身お相続人ではありませんから、なおのこと遺言を作る必要性が増します。

7.生前に特別に財産を与えた相続人がいる

生前にいわば相続分の前渡しとして財産を譲り受けた相続人を「特別受益者」と呼びます。他の相続人と不公平が生じますので、特別受益者の相続割合は少なめに遺言を書いておいた方が良いでしょう。

確かに遺言書に書かなくとも、法律上「特別受益者」は他の相続人よりも遺産から取得するものは少なくなります。しかし、その話し合いが相続人間でうまくいかないこともあります。

8.非行のある相続人がいる

あなた自身に対して、虐待などの非行を行った相続人がある場合は、その相続人の相続権をはく奪することができます。これを「廃除」と言います(民法893条)。

廃除は生前に家庭裁判所に対して申立てを行うことによってもできます(民法892条)。しかし、それが難しい場合は、遺言の中で廃除をすることもできます。なお、この時は、「5」と同様に遺言執行者が裁判所に廃除の手続を行うことになります。

9.相続人が多い

相続人の数が多いだけで、簡単にいく相続もそうではなくなります。これは私の経験上真実だと思います。また、相続人の数が多いと必然的に面識がない者同士が相続人になります。話し合いは非常に困難です。

10.相続人間の仲が悪い

ご自身の生前から相続人間の仲が悪いことが明らかであれば、遺言を作る以外に選択肢はないと考えます。

11.死後一定期間の遺産の分割を禁止したい

ご自身の死後、遺産分けで争いがおこることが明らかであれば、それだけであなたは不愉快でしょう。この場合、「自分の死後5年間は遺産分割を禁ずる」のように、5年以内の期間を定めて遺産分けの話し合いを禁じておくことが遺言でできます(民法908条)。

12.自宅以外に財産がない

相続人が複数いる場合に、遺産が自宅しかないと、残された相続人は困ってしまいます。特に同居していた相続人は、他の相続人にお金を支払ってこのまま自宅に居させてもらうか、自宅を売却して売却代金を相続人で分けるか、どちらかを選択しなければなりません。

一般的には同居の相続人に世話になっているケースが多いと思いますので、これらの事情を考慮した遺言を検討してみることをお勧めします。

私たちが最後まで担当させて頂きます。
左|司法書士 齋藤遊  右|司法書士 今健一

13.事業を営んでいる

事業を守るために、後継者に事業を承継させる遺言を検討すべきでしょう。また、事業に貢献した相続人は法律上「寄与分」が認められる可能性があります。ですから、「6」で指摘した「寄与分」を考慮した遺言を検討すべきでしょう。

14.寄付がしたい

宗教や慈善団体、出身学校などに寄付がしたい場合、もちろん生前にも寄付はできます。しかし、生前は自身の生活費もかかります。ですから、残った財産の一部または全部を寄付するという方法が遺言で可能です。

15.予め相続人の相続分を決めたい

遺言で予め相続人が取得する相続分を決めておくことができます。これを「相続分の指定」と言います(民法902条)。

法律上の相続分(法定相続分民法900条)を自由に遺言で修正できます。そして遺言で定めた相続分を、ご自身の死後、相続人が修正・変更することは原則としてできません。

16.予め相続人が取得する財産を指定したい

例えば、「不動産は相続人Aに、預金は相続人Bに相続させる」と遺言で指定することができます。これを「遺産分割の方法の指定」と言います(民法903条)。この指定を相続人が勝手に変更することは原則としてできません。

17.自分の財産リストを共有している人がいない

ご自身がどれだけ財産を所有しているかをご相続人らは知っていますか?もし何も知らないのであれば、ご自身が死亡した後、相続人は一から相続財産を調査しなければなりません。

専門家に依頼すればある程度は遺産の調査は可能です。しかし専門家でも調査には限界があります。調査から漏れれば、その遺産は誰にも相続されることもなく宙に浮いてしまいます。

特に公正証書遺言を作成する場合は、当事務所においては聞き取り調査を軸とする「遺産目録・財産目録」を作成します。

もちろん遺言書を作成しなくても、財産目録だけ作っておくことも出来ます。作り方はこちらに記事を書きましたのでご参考にして下さい。

遺産相続する財産のリストを作ってみる

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10~16至急すぐに専門家に相談してください。ほぼ間違いなく相続問題が発生します。
5~9要相談時間のあるときに専門家に相談してください。相続問題が発生する可能性が高いです。
1~4要検討すぐに問題になるとは限りませんが、チェックした項目によっては相続問題が生じるかもしれません。前向きに遺言作成を検討してください。

遺言作成が必要か専門家に相談してみませんか

私たちは相続手続き専門司法書士事務所です。上記の「遺言作成必要度チェックリスト」は簡易的なものです。より、個別の事案に応じた判定が、対面のご相談であれば可能です。

毎週土曜日に当事務所で無料相談会を開催しています。ぜひ「遺言作成必要度チェックリスト」内容をご相談ください。その場で具体的な診断が可能です。無料相続相談会予約フォームはこちら