【解決事例】相続と認知症|後見制度支援信託を使って家族が後見人に

2023年11月8日

無料相談をしようか迷われる方がいらっしゃいましたら、無料相談のページでより詳細な内容をご案内しております。是非ご覧ください。

相続をきっかけに成年後見制度の利用を検討する(というより「検討せざるをえない」)相続人はとても多いです。

当事務所へ成年後見の相談をされる方の10人中9人は相続を理由とするものです。今回紹介する解決事例も、まさに相続人中に認知症の人がいるというケースでした。

なお、守秘義務違反となることを避けるために事案を特定されないようアレンジしています。文中の氏名・住所・日付等は架空です。

最初の相談内容は「遺産分割したい」

当事務所が毎週土曜日に行っている無料相談での話でした。相談内容は、父が亡くなったので遺産分割をしたいという至ってシンプルなものです。

家族構成は高齢の母と、長女のみです。いわゆる一人っ子なので、経験上、遺産分割で揉めることもないため安心して相続手続きを進められる事例だと思っていました。

ところが、もう少しよく話を伺っていくと、高齢の母は認知症で現在特別養護老人ホームに入居中とのこと。認知症であるという医師からの正確な診断を受けたわけではないと言いますが、日常の様子を聞き取ったところから察するに、認知症の疑いは高いです。

そうなりますと、認知症の母に成年後見人を付けるという話になり、成年後見人と長女で遺産分割協議を行うという流れになります。

長女は自らが成年後見人となることを希望していました。
確かに、母のもともとの財産は多くないのですが、遺産分割の結果相続することになる財産が高額のため、おそらく親族が成年後見人と認められる可能性は少ないと伝え、再度詳細な資料を持参してもらうことを約束してその日の相談を終えました。

母の後見人はどうしても自分がやりたい

別の日、遺産に関する資料、母の財産の資料を持参して長女が再び来所しました。
最初の相談では、大まかのアドバイスに止まりましたが、持参した資料を精査するとやはり親族が後見人となるのは難しそうな気がします。

これは思ったよりも財産が多いですね…。家族が後見人になるのはちょっと難しい事例ですね。
はぁ。ですが、どうしても自分が後見人になりたいんです。専門家が後見人になった場合、報酬の支払いが必要と聞きます。母の家系は長生きで、これまでも大病は有りませんし、今も意思能力の問題はあるもののそれ以外は元気です。仮に100歳まで長生きすると、このお金だけでは報酬を支払い続けることは出来ません。
確かにそうですね。人は何歳まで生きるかはわかりませんからね。けれども、家族だけを後見人にするというやり方は裁判所は認めないと予想します。

では、どういうやり方であれば認められるのでしょうか。

家族が後見人となるための選択肢とは

今回のケースでは、認知症になって特養に入所した母の財産管理・身上監護はすべて長女が行っていました。通帳を確認したところ、細かに鉛筆書きで使途が記されていました。長女によるものです。

かなり几帳面で丁寧な性格がうかがわれます。さらに私とほぼ同年代で、若く、明朗な様子です。
それならばということで、次の選択肢を提示しました。

1、家族を後見人として申立て、後見監督人が付く

どうしても長女自身が後見人になりたいという意思は固いので、申立て後の面接期日(家庭裁判所へ後見人の選任申立ての書類を提出した後に裁判所から呼び出される日)の場で、「どうしても自分がなりたいので専門職の後見監督人を付けてください」と申述する方法。

これで上手くいくという保証は全くありませんが、裁判所側も申立人の申述を無視はできないと思われますので、方法の一つとして提案しました。

長女のみを後見人に付すと言う申立ては、経験上まず認められないと踏みましたので、「専門職後見監督人付きで」を条件に申し立てるという手法です。

専門職後見監督人に支払う報酬額は、専門職後見人に支払う報酬額よりも低額であることが一般的なので、長女にはこの点は妥協してもらうしかありません。

2、家族を後見人として申立て、それを裁判所が認めない時は司法書士今を後見人に

上記の後見監督人は裁判所が選びます。長女からすると知らない人に財産管理されたくないということで、上記の方法は報酬費用は安いかもしれないが、心情的には不安があるとのことでした。

そこで、2番目の方法として、予備的な選任申立ての方法を提案しました。
もちろん専門職後見人に対する報酬費用がかかってしまいますが、裁判所に勝手に選ばれた人よりは良いということで、とりあえずの手段として納得したようでした(当職を信頼していただけたのでしょうか?)。

3、家族と司法書士今の2名を成年後見人として申立て、後見制度支援信託の方法をとる

後見制度支援信託とは、母の口座に100~200万程度だけ残しておいて、それを超える預金はすべて信託銀行に預けてしまう方法です。

信託と聞くと「投資商品か何かのことか」と思ってしまいます。しかし、そうではなく、単に現預金を信託銀行等に預けるというだけのことです。しかし、いったん預けると裁判所のOKが出ない限り勝手に引き出すことはできなくなりますが…。

後見制度支援信託は、信託銀行に預けるまでの手続きが複雑で手間なので、専門職後見人(司法書士今)が行います。信託した後は、専門職後見人は辞任の許可を裁判所に申請し、認められたら、結果として後見人は家族だけになるというスキーム。

現在、家族が後見人に選任されるための手法としてスタンダードなやり方です。

家庭裁判所の面接期日に同行

結局、申立ては「2」と「3」を合わせた方法としました。

長女は自分だけが後見人になりたいという意思がいまだに強かったので、第1次的には「長女を後見人にしてください」として、第2次的には「それがダメなら、長女と司法書士今を後見人してください」というやり方です。

面接前の待合室でこのように話しました。

「今までも適切に管理してきたし費用のこともあるのでどうしても自分が後見人になりたい」と調査官にアピールしてくださいね。
裁判所なんて初めてですし、うまく話せるか心配です…。
大丈夫、大丈夫。法廷でやるわけではありません。狭い会議室みたいな場所です。横に私もいますからフォローします。

調査官の反応|依頼の結果

調査官の反応は「長女のみを後見人に選任することは出来ない、もちろん裁判官が最終的に判断しますが」ということを遠回しに本人に説明していました。長女は、「どうしても自分がやる」の一点張りです。

すると調査官は当職へ体の向きを変えて、「今先生が長女と後見人になって信託利用ということでどうですか」と打診します。

長女には事前に、「おそらく成年後見制度支援信託制度の利用を前提に、当職と長女が2名選ばれますよ」と説明していたので、「あぁやっぱりな」という表情でした。

その場での回答は保留ということにして、後日あらためて長女に成年後見制度支援信託について説明し了解を取りました。裁判所に対しても、成年後見制度支援信託の利用を約束する旨、当職から電話をしました。

しばらくすると、家庭裁判所との事前打ち合わせの通り、当職と長女2名を成年後見人とする選任審判書が郵送されました。さらに、「指示書」として成年後見制度支援信託の利用を検討し、その結果を報告してくださいとする旨の文書も同封されています。

この報告は、当然のことながら当職に求められているものなので、実際に信託銀行に財産を預け入れるまでの一連の手続きは、長女ではなく私の仕事となります。

その後信託手続きも完了し、遺産分割などの相続手続きも終わったので、家庭裁判所へ後見人辞任の許可申請をし、認められ、無事終了となりました。

左|司法書士 齋藤遊 右|司法書士 今健一

依頼者からの声

長女の年齢は若く、財産管理も丁寧でしたので、財産が少なければ長女のみが成年後見人に選任されていたと思われます。

しかし、当職が辞任することによって、結果的には今後長女のみが成年後見人となるわけですから、目的達成のお手伝いはできたと自負します。

今回はお世話になりました。正直、こんなに面倒なことになるとは想像してませんでした。簡単に自分が後見人になれると思い込んでいたのがまずかったですかね。ただ、結局後見人はいま私だけなので、思い通りになったことを喜んでいます。後見人は財産の報告をしなければならないみたいですが、よくわかりません…。その時はまた今さんにお世話になりたいと思います。

無料相談を受け付けています

私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。

このページでは、「相続と認知症|後見制度支援信託を使って家族が後見人に」についてお話ししました。同じようなお悩みをお持ちですか?

相続手続きをこれから始めるにはどうすればよいのか、費用はいくら位かかるのか、様々な疑問があることと思います。

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