【司法書士監修】どうすれば相続登記の義務化の罰則を免れるのか?

2023年11月8日

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令和3年4月21日の国会で「相続登記を義務化する法案」が成立したことは知っていますか?

すでに知っている方は「令和6年度からスタートする」ことや「罰則付き」であることもご存じでしょう。当事務所のお客様からも「罰則の対象となるのでしょうか?」といった悩みを次々といただいています。

このページでは、創業20年の相続専門の司法書士事務所が「【司法書士監修】どうすれば相続登記の義務化の罰則を免れるのか?」と題して、この制度の概略や罰則を免れるための方法などを解説します。

このページを見れば『相続登記の義務化の罰則』や『罰則を受けないための方法』について、これまでの疑問点がスッキリ解消すると思います。相続登記の義務化が気になっているすべての相続人のご参考になれば幸いです。

令和6年4月1日から相続登記は義務化

国会で法案が成立したことにより、令和6年4月1日(施行日)から相続登記が義務付けられます。ちなみに現時点では、相続登記は法律の規定では「やってもやらならなくてもどちらでも良いもの」です。

「相続登記」とは、故人が所有する土地や建物について、その名義を相続人へ変更する手続きを言います。

ただし「どちらでも良いもの」とは言っても、常識的には「権利を取得したら登記するのは当たり前」」と考えられていますので、特別な事情がない限り相続登記の手続をするのが普通です。

しかし「放っておいても大丈夫だと聞いた」「費用も手間もかかり面倒なので」などの理由でこれまで相続登記を放置している方も少なくありませんでした。

相続登記の義務は、ある特定の相続人だけが負うものではなく、相続人の全員が平等に負うものと理解してください。

「相続登記の義務化」の制度の概略についてコンパクトに知りたい方は、別のページにまとめてありますので、そちらをご参照ください。

相続登記が放置されているかどうかをどうやって調べるのか

もし現時点で相続登記が放置されているのであれば、相続登記が義務化される2024年4月1日までに相続登記をして、その所有者(登記名義人)を被相続人から相続人へ変更しておくことが良いでしょう。

それではあなたのケースについて「相続登記が放置されているかどうか」をどのように調べればよいのでしょうか。それは法務局という役所で故人が所有していたと思われる土地や建物などの不動産の「登記簿(登記事項証明書)」を取得して調べることになります。

この「登記簿(登記事項証明書)」にその不動産の現在の所有者として被相続人(故人)の氏名・住所が記載されたままで、その相続人に書き換えられていなければ、その不動産(土地・建物)は「相続登記が放置されている」状態となります。

なお「登記簿(登記事項証明書)」はインターネットで誰でも簡単に取得することができますから、わざわざ法務局に出向く必要もありません。下のリンクから相続する不動産の所在を検索してご利用ください。

■登記提供情報サービス|一般財団法人民事法務協(別のサイトへ移動します)

相続登記の義務化は「所有権」の相続だけです。その他の権利、例えば賃借権は対象となりません。

さらに、相続登記の義務化は過去に遡って適用されるので注意

いつの相続に「相続登記の義務化」が適用されるのか、が問題です。

この法律がスタートする2024年6月1日より後に死亡した場合に適用されるのは当然です。

注意しなければいけないのは、これ以前、例えば令和2年、あるいはもっと遡って昭和50年に開始した相続についても、相続登記が義務付けられます。相続登記の義務化は遡って適用されるのです。

「昔の相続だから義務化は関係ないだろう」とはならない点に十分気を付けなければなりません。

つまり「改正法がスタートする時点で相続登記を放置している場合は、これについても新しい法律が適用になるので気を付けてください」ということです。

この点について、別のページでもっと詳しく解説していますので、もしよろしければご覧ください。

罰則は「最高10万円の過料」で交通違反より高い

期限内に相続登記の義務を履行しない場合、最高で「10万円以下の過料(不動産登記法案第164条の2第1項)」です。

「過料」というのは、軽微な交通違反と同じような意味で、刑事罰ではなく、行政罰となります。「軽微な交通違反」とは具体的には、スピード違反や一時停止違反などです。

今回の相続登記の義務違反も「過料」ですから、行政罰となり、刑法上の罪には問われず、いわゆる「前科者」とはなりません。そのような意味では「軽微な法律違反」といった位置付けと言えます。

ちなみに交通違反の中でも特に重い、酒酔い運転や無免許運転は行政罰では済まされず、刑事罰の対象となり、罰金や懲役となります。

「最高10万円」ということはもっと安い場合もあるのか?

法律では「10万円以下の過料」となっているため、実際にいくらの過料になるかは不明です。具体的にいくらの過料が処せられるかは、個人によってそれぞれ違ってくるでしょう。

たとえば、「相続の事実を知りながら10年放置していた」というケースは過料は高額になる一方で、「相続を知りながら4年放置していた」というケースでは過料は低額になると予想できます。

その理由は、実際に法人登記(会社の役員の変更登記など)がそのような運用のされ方をしているためです。法人登記はそもそも義務化されていて、義務を履行しないと過料の制裁があります。そして登記を放置している期間が長ければ長いほど過料は増える可能性があります。

相続登記の過料がこれと同じ扱いになるとは必ずしも言えませんが、今後の実務の動向を注視していく必要があります。

過料はいつどこから請求されるのか?

期限を過ぎてもいきなり連絡や通知が来たり、請求書が来るということは考えられません。

その理由は、法律で相続登記の期限を「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」としているからです(大雑把に言えば「亡くなってから3年以内」ではありますが…)。

つまり期限の起算点は「知った」ときであり、相続人がこれらの事情を「いつ知ったか」ということを国側で調べようがないためです。では、どのタイミングで過料の請求があるのでしょうか。

たとえばあなたが期限に遅れて相続登記の申請したとします。するとこれをきっかけにして、その後数か月内に過料の請求がされると予想できます(法人登記はそのような運用です)。

あるいは、期限に遅れて相続登記を申請した場合、法務局から「いつ知ったか」を書面等により答えるよう催促が来るようになるかもしれません。この辺りの具体的な手続はまだ決まっていません。

いずれにしても「それならずっと相続登記をしなければ誰にも分からないのでは?」と考えるのは危険で、いずれ何かの事情で相続登記をしなければならない状況となったとき、放置期間が長すぎることを理由に過料が高額となるおそれがあります。

ちなみに過料が請求される場合は、裁判所から「不動産登記法違反事件」と書かれた通知が郵送されてくると思われます。

相続登記の義務化の罰則を免れる方法は「ある」

この過料の制裁は常に適用されるわけではありません。法律によると「正当な理由があるのにその申請を怠ったときは10万円以下の過料に処する」とあるためです。

つまり「正当な理由」さえあれば、期限に遅れても過料とはならない、という意味です。

「正当な理由」があれば期限に遅れても罰則はない?

「相続が開始したことを知らない」とか「その不動産が遺産だとは知らなかった」という場合は、その相続人には相続登記の申請義務違反の問題は生じないはずです。

これは「正当な理由」と言うよりも、そもそも期限が到来していないと考えられるためです。

相続登記の期限の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」です。両方の事実を知っている必要があります。

ですから、これらの事実を知らないのであれば、3年の起算点はまだスタートしていないことになります。

「正当な理由」はほとんど認められない

それでは相続登記が遅れても義務違反とならない正当な理由とは、具体的にどのような理由でしょうか。

実は今回の法改正ではまだ定められていません。いずれ詳しい運用が決定すると思われます。

しかし、法改正に至るまでの法制審議会ではこの点が議論されました。

参考までに「民法・不動産登記法部会資料19」の該当部分を下に引用します。

「正当な理由」がある場合の例としては,①数次相続が発生して相続人が極めて多数であることにより,戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するときや,②遺言の有効性が争われる訴訟が係属しているとき,③登記申請義務者に重病等の事情があったとき,④登記簿は存在しているものの,公図が現況と異なるため現地をおよそ確認することができないときなどが考えられる。

これらの正当な理由については,明確化の観点から,あらかじめ類型化して(通達等において)明示しておくことが考えられる。法務省|法制審議会-民法・不動産登記法部会|資料19

分かりやすく次のようにまとめてみました。

1.相続人が多く、戸籍調査に時間がかかる場合
2.遺言書についての裁判をしている場合
3.相続人に重病などの理由がある場合
4.登記簿は確認できても、現況と異なるため現地調査ができない場合

正当な理由は、このように限定的に認められることになると思います。そうでなければ相続登記を義務化した意味がなくなるからです。たとえば次のような理由は正当な理由とは呼べないでしょう。

  • 「価値が低いので相続登記をやる必然性が感じられない」
  • 「相続税が用意できない」
  • 「遺産分割協議がまとまらない」
  • 「相続人に行方不明(音信不通)の人がいる」
  • 「相続人に認知症の人がいる」

これまではこのような理由で相続登記を放置していた人も多いかもしれません。今後は正当な理由が存在しなければ、期限に遅れた相続登記は過料の対象となります。

「正当な理由」がない時はこうすればよい

上記に示したような正当な理由がない場合はどうすればよいのでしょうか?

なるべく合法的に過料の制裁は免れたいものです。方法は3つあります。

相続を放棄する

家庭裁判所で相続放棄の手続きをすれば、遡って相続人ではなかったことになるため、相続登記の義務は課されません。

相続人でない以上、相続登記の義務化の罰則である過料も課されません。

ただし、相続放棄ができるのは、自分が相続人であることを知った時から3か月以内なので、すでにこれを過ぎている場合はこの方法を選択することはできません。家庭裁判所に相続放棄の手続ができるのは、非常に短い期間なのです。

とりあえず法定相続分通りで相続登記をする

とりあえず「法定相続分通りで相続する旨の相続登記」を3か月以内に申請してしまうというのも方法の1つです。

あまり知られていないのですが、この「法定相続分通りで相続する旨の相続登記」するというやり方は、相続人の1人からでも可能です。他の相続人の同意もいりませんし、他の相続人の署名や印も不要です。相続分の割合が多いか少ないかも関係ありません。

単独でできる手続きという意味です。

相続人の調査を全部やらなければならないという面倒はありますが(調査の範囲が広くなる)、とりあえず過料を払いたくないという場合は、選択肢の一つになります。

この手続をしますと、相続人の全員で共有する状態の登記簿となります。

そしてとりあえず法定相続分通りで相続登記をした後に、相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果を反映させる登記を行うこともできます(法定相続分通りの登記のまま放っておくこともできます)。

おそらく相続登記の義務化の罰則を免れる方法としては、この方法が一般的な方法になるような気がしています。

「法定相続分通りで相続する旨の相続登記」するというやり方について、別のページで詳しく解説していますので、もしよろしければお読みください。実は少し問題のあるやり方とも言えます(トラブルのもとになる可能性も?)。

新しい制度「相続人申告登記」をする

今回の改正法で新しく「相続人申告登記(相続人である旨の申出)」という制度が創設されます。

これは単に相続人が個別に「相続人申告登記(相続人である旨の申出)」を法務局に行うというものです。具体的な手続きは明らかになっていませんが、おそらく法務局に備えつけの用紙に記入する程度の簡単なものになると想定されます。

とりあえずは通常の登記にかかる「登録免許税」はかからず、非課税措置が適用されることになりました。

上でお伝えした「法定相続分通りで相続する旨の相続登記」のように複雑な書類を作る必要はないと勝手に予想しています。相続人の調査も一部のみで足りますし、添付すべき書類もあまりないと考えます。少なくともあまり労力は要しないと思います。

この申告を3か月以内にすれば、過料の処分となることはありません。相続人申告登記をやっておけば、相続登記申請義務を履行したものとみなされますので、その後何カ月以内に正式な登記をしなければならないということもありません。

ただし「相続人申告登記」は「相続登記」そのものとは全く性質の異なるもので、自分の権利であることを他人に主張したり(法律上「対抗力」と言います)する効力はありません。

相続人申告登記には通常の登記にあるような法的な効力は無く、単に罰則を免れる方法程度の意味しかないのです。

この制度の詳しい内容は別のページで解説しました。

解決案のご提示|いま相続登記を行うべきか

このページでお伝えした内容の重要なポイントをまとめると次のようになります。

  • 相続登記は令和6年4月1日から最高10万円の罰則付きで義務化されること
  • 罰則を回避するには「相続放棄」すること
  • 罰則を回避するには「法定相続分通りで相続登記」すること
  • 罰則を回避するには「相続人申告登記」すること

現時点において、特別な理由もなく相続登記を放置している状態であれば、直ちに相続登記を完了してしまうことをお勧めします。なぜなら現時点で放置されている相続登記も罰則の対象となるからです。現状を見直したいなら最後の機会でしょう。

なお「売却する取引の予定なので相続登記を省略できないか」であるとか「そもそも相続登記とはどのような手続きであるか」とか「自分で行うことはできるのか」等、よくあるご質問については別のページで解説していますので、もしよろしければお読みください。

ご相談お待ちしております! 左|司法書士 今健一  右|司法書士 齋藤遊

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私たちは、相続手続き専門の司法書士事務所です。東京国分寺で約20年に渡って相続問題に取り組んできました。オンラインにより全国対応をしています。

このページでは、「【司法書士監修】どうすれば相続登記の義務化の罰則を免れるのか?」と題して、相続手続き専門の司法書士の立場から、まさに今あなたが困っていることについて、知っておくべきことを解説しました。

合法的に罰則の適用を受けないための3つの方法を提案しましたが、いずれも根本的な問題の解決方法とはなりません。

相続問題の解決方法として「相続人同士の話し合い(遺産分割協議)」が成立することが一番であるからです。遺産の分割の話し合いが止まってしまっている場合も、段階を踏んで説明を行えばうまくいくこともあります。

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